朝比奈隆生誕115年企画として発売された当盤。朝比奈隆による「アルプス交響曲」のCDは4種類発売されており、そのうち2種類が今回収録されている。計12回演奏をしているのだが、そのうちベルリン放送響や北ドイツ放送響をはじめとしていくつか海外のオーケストラとも演奏をしている。ライナーノーツにはその記録データが記載されているので、マニアにとっては見逃せない情報であることは間違いないだろう。これに関しては購入して聴きながら読んでいただきたい。
・リヒャルト・シュトラウス：アルプス交響曲（オール・ジャパン・シンフォニー・オーケストラ）
録音：1991年10月30,31日（ライヴ）
・・・まさにブルックナーやマーラーを聴いているかのような圧倒的な安定感と、2023年最新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さがこの曲を最良の演奏へと導いてくれるように思える。同じレーベルでいえば、小泉和裕&名古屋フィルによる「アルプス交響曲」もSACDハイブリッド盤となっているが、それよりもたっぷりとした濃厚で幅広く取られた素晴らしい演奏を聴くことができるようになっているのは間違いない。金管楽器、特に低音にあたるトロンボーンやチューバによるゴリゴリとした分厚い圧倒的な音圧には多くの人々がしびれることだろう。構成的に繰り返しくるダイナミクスの頂点が来るたびに鳥肌が立つと言おうか、感動することのできるポイントは幾度となく存在しているので、繰り返し聴きたくなる仕上がりである。
・リヒャルト・シュトラウス：アルプス交響曲（大阪フィルハーモニー交響楽団）
録音：1997年4月26日（ライヴ）
・・・先ほどのオール・ジャパン・シンフォニー・オーケストラとの1991年録音は、全国のプロオーケストラから選抜された選りすぐりの奏者たちが集結した演奏だった。大阪フィルとの演奏は朝比奈にとってもホームのような存在であるため、今回の1997年録音は要所要所違う部分があると言える。また、今回の演奏では当時のシカゴ響首席ホルン奏者であるデイル・クレヴェンジャーが1番を吹いているというのもポイントである。クレヴェンジャーが参加しているのはシカゴ響でのブルックナーなどが好評だったことが大きい。演奏では、確かに部分によって技術的な差も出ているようにも思えなくはないが、長大なる交響曲と壮大なるスケールを明確に奏でている。特にウインドマシーンやバスドラムなどがここまではっきりと聴くことができる音源は他に類を見ないだろう。これも2023年最新マスタリングによるダイナミック・レンジの幅広さが増していることが大きな影響と言える。クレヴェンジャーによる美しく、たくましさのあるホルンの音色は聴いていて惚れ惚れする。オーケストラ全体としてもこれまでに聴いたことがないほどの分厚さとまとまりある演奏となっているので、1991年録音とはまた違う世界観である。
朝比奈隆によるリヒャルト・シュトラウス作品のCDは今回初めて聴いた。発売予告がされた時点で興味はあったが、ここまでの素晴らしい名演であり名盤だったことは驚きである。「英雄の生涯」や「ツァラトゥストラはかく語りき」などの録音であったり、ベルリン放送響による「アルプス交響曲」などまだまだCDがあるので今後それらを探してみたいと思う。
https://tower.jp/item/6225449/R-シュトラウス：-アルプス交響曲(2種)(2023年マスタリング)＜タワーレコード限定＞
