第1594回「ヴォーン・ウィリアムズ没後65年、ボールトによる決定盤たる交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日8月26日は作曲家レイフ・ヴォーン・ウィリアムズの命日です。今年で没後65年となります。そんな本日ご紹介していくのは、2022年5月29日にタワーレコード企画である「TOWER RECORDS DEFINITION SERIES」から復刻されたSACDハイブリッド盤の高音質盤、エイドリアン・ボールト&ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団によるヴォーン・ウィリアムズ交響曲全集です。世界初SACD化となったこの全集、元々はヴォーン・ウィリアムズの生誕生誕150年記念企画として800セット限定で発売された代物となっています。


「エイドリアン・ボールト指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団」

ヴォーン・ウィリアムズ作曲:
海の交響曲(交響曲第1番)〜ウォルト・ホイットマンの詩によるソプラノ、バリトン、合唱とオーケストラのための〜

ロンドン交響曲(交響曲第2番)

交響曲第5番 ニ長調

南極交響曲(交響曲第7番)

交響曲第8番 ニ短調

交響曲第9番 ホ短調


「エイドリアン・ボールト指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団」

田園交響曲(交響曲第3番)

交響曲第4番 ヘ短調

交響曲第6番 ホ短調



 記憶が正しければ、ヴォーン・ウィリアムズの交響曲全集を聴くのは今回が初めてかもしれない。近現代における作曲家でいえばまだまだ聴けていない作曲家の作品は多くあるわけだが、中々CD自体を購入するタイミングというのもなかったためかもしれない。そういう意味では、2022年5月29日にタワーレコードからSACDハイブリッド盤で発売されたのは非常にありがたかった。加えて数ある中でも決定盤たる人気を誇るボールト指揮による2回目の交響曲全集となっているので、聴きごたえは十二分にあると言えるだろう。


・ヴォーン・ウィリアムズ:海の交響曲(交響曲第1番)

録音:1968年9月23〜26日

・・・ヴォーン・ウィリアムズが最初に作曲した交響曲であり、全9曲ある交響曲の中でも特に大規模な交響曲となっている。アメリカの詩人ウォルト・ホイットマンの詩集「草の葉」をテクストとして採用しており、全4楽章からなる交響曲ではあるもののオラトリオとしての作品に近い形がとられている。「旧EMI」にて録音された演奏ということもあって非常によく録音されているのは間違いなく、2022年最新マスタリングの施された奥深い濃厚な音色や荘厳的な空気感を作り出す合唱や歌手の歌声が合わさることによって壮大なスケールと分厚いサウンドを楽しむことができるようになっている。全楽章途切れることなく演奏されることもあって、最初から最後まで一貫性のある演奏を楽しむことができるというのも大きなポイントであり、壮大な世界観をたっぷりと堪能することができる素晴らしい演奏とも言えるのは間違いない。


・ロンドン交響曲(交響曲第2番)

録音:1971年3月1〜2日

・・・非常にポップなメロディやリズムに満ち満ちた曲であり、重々しい感覚を聴いていて思い浮かべるということはまずない。どこか子供向けにすら感じるかもしれないが、この親しみやすい構成こそこの曲の強みと言えるのだろう。そのため、演奏しているロンドン・フィルの音色やサウンドからは非常に生き生きとした明るく快活的なエネルギーを味わえるようになっている。この感覚としてはハリウッドの映画音楽を聴いているかのような躍動感や推進力そのもので、金管楽器のサウンドが非常に功を奏しているので聴きごたえがあるのは間違いない。


・田園交響曲(交響曲第3番)

録音:1968年2月14〜15日

・・・第2楽章におけるナチュラルトランペットやナチュラルホルンが非常に印象的な演奏となっている「田園交響曲」。印象派のような美しさもありつつ、金管楽器による旋律が活気ある形で演奏が行われているため聴いていて非常に面白くてカッコ良い。2022年最新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しており、この時代の録音としても細部まで細かく聴き込むことができるようになっているのは非常に大きなポイントと言えるかもしれない。また、弦楽器や木管楽器による統一感のある演奏や俊敏さも非常に素晴らしい。第4楽章に入るとソプラノ歌手が加わり、世界観もさらに幻想的で美しい印象へと音楽の流れが変化していく。


・交響曲第4番

録音:1968年1月22〜23日、2月12日

・・・標題のない交響曲としてはこの第4番が最初となる。初演は今回指揮しているボールトとBBC交響楽団によって行われた。第1楽章冒頭から強烈な不協和音やテンポの緩急が細かくつけられている。それ以降の楽章も「緩→急」や「急→緩」を見事に演奏し分けているため、ダイナミクス変化も明確になっている。ここまで聴いてきた3曲の交響曲とは違う構成となった躍動感と攻撃性の高さを演奏から感じ取ることができるようになっている。第4楽章に入るとこれまでの交響曲と同じとまではいかないが、ユーモア性のあるメロディを聴くことができる。また、金管楽器による破壊的なサウンドからなる強烈な音圧もダイナミック・レンジの幅広さが増したことによって功を奏する形となっているので、最後の最後まで聴きごたえがある演奏となっている。


・交響曲第5番

録音:1969年4月1〜3日

・・・交響曲第4番での不協和音や破壊性の高い演奏とは違い、奥深い美しさやたっぷりとした濃厚なスケールやまとまりあるサウンドからなる分厚いスケールを味わえるのが醍醐味と言っても良いほどの世界観となっている。また、第1楽章や第4楽章でラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」の冒頭で演奏される付点リズムが引用されている。シベリウスに献呈されたということもあってどこかシベリウス作品に近い幻想的な印象を受けなくもない。2022年最新マスタリングが施された状態でのダイナミック・レンジの幅広さが、音楽の広がりによって壮大な世界観によって演奏を楽しむことができるようになっている。弦楽器による伸びやかな音色というのも充実しており、第4番以前の交響曲に近いスケール感を味わえるようになっているのは間違いない。


・交響曲第6番

録音:1967年2月27日、3月1日

・・・再び交響曲第4番と同じように激しさを増し、不協和音も聴くことができるようになった交響曲第6番。第1楽章〜第3楽章にかけて非常に激しく不協和音なども大変多く使われていたこともあって「戦争交響曲」と呼ばれることもあったが、ヴォーン・ウィリアムズはこれを否定している。「急→緩→急→緩」というシンプルな構成ながら先ほども述べた通り第1楽章〜第3楽章までは不協和音や激しく変化するテンポチェンジなどがあるため、ダイナミクス変化やテンポの緩急に関しては非常に細かく、かつ豪快に明確なものをもちながら演奏を聴くことができるようになっている。その分第4楽章では静寂に近いくらい哀しみを込められており、なおかつ悲観的ながらも美しさが奥にはある印象を受けた。ダイナミック・レンジの幅広さが増していることもあって、第4楽章に関しては細部まで細かく聴き込めるようになっているので音楽にたっぷりと浸かることができるようになっている。


・南極交響曲(交響曲第7番)

録音:1969年11月18,19&21日

・・・ヴォーン・ウィリアムズはロバート・スコットの南極探検隊を描いたイギリスの映画「南極のスコット」のために音楽を作曲しており、この作品は1949年にプラハ映画祭にて音楽賞を受賞している。その映画音楽を再構成して作曲された曲こそ今回の「南極交響曲」である。初演はバルビローリ演奏&ハレ管弦楽団によって行われた。全5楽章からなる交響曲で、オーケストラに加えてチェレスタやパイプオルガンやウインドマシーン、女声合唱やソプラノ独唱なども一緒に演奏されるようになっている。演奏として、2022年最新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さが増していることによって、壮大なる世界観をそのまま体感することができるようになっている。この衝撃はある意味「海の交響曲」以上に凄まじいエネルギーであり、終始鳥肌が立ってしまうほどのスケールを演奏から聴くことができる。それがオーケストラだけでなく、合唱やオルガンが加わった際にさらに大きな衝撃を持って味わえるようになっている。今回の全集の中で個人的に一番好きな曲であると聴いていて感じた曲こそこの「南極交響曲」だったのはいうまでもない。


・交響曲第8番

録音:1969年9月25日、12月23日、3月26日

・・・非常にユーモア性の高い曲となっており、編成も小さくはなったがオーケストラ全体から奏でられる演奏には内に秘めたるエネルギーの流れを確かに感じ取ることができるようになっている。今回の演奏ではそれが木管楽器や金管楽器を筆頭として生き生きと演奏されているのが注目できる点と言えるだろう。また、ダイナミック・レンジの幅広さが増したことによって弦楽器の演奏が細部まで細かく聴き込むことができるようになっており、第3楽章に関しては複雑でありながらも十二分に楽しめる複雑さがあると言える。また、各楽章ごとに個性的な旋律やリズム、響きを味わえるようになっているのもこの曲を楽しめるポイントと言えるかもしれない。


・交響曲第9番

録音:1969年12月18,22&23日

・・・ヴォーン・ウィリアムズが作曲した最後の交響曲であり、初演はヴォーン・ウィリアムズが亡くなる直前に行われている。テンポの緩急及び楽章ごとに演奏が明確に分けられている構成となった第9番。傾向で言えば第4番や第6番に近いものがある印象を受けなくもない。しかし、伸びやかでどこか悲観的な響きをしている演奏を第2楽章や第4楽章などで聴くことができるようになっているため、その奥深さが個人的には強く印象深いものとなったのは聴いているとよくわかる。金管楽器の音色も激しさや音圧よりも荘厳的な雰囲気を感じ取れるようになっている。また、細かいダイナミクス変化も随所にあるので、聴き飽きることはないだろう。


 ボールト&ニュー・フィルハーモニア管、ロンドン・フィルとのヴォーン・ウィリアムズ交響曲全集をみてきた。これほどまでの名盤がこれまでにSACD化されることがなかったというのが意外過ぎることもそうだが、このシリーズでSACD化されたのは正解だったのではないか?と私自身大きく感じている。また、初めて聴くヴォーン・ウィリアムズの交響曲全集がこの全集でよかったという大きな満足感がある。今後もこの全集に関しては繰り返し聴きたいところだ。


https://tower.jp/item/5421418/ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲全集<タワーレコード限定>