ヴァントとミュンヘン・フィルによるライヴをここまで複数聴いてきた中で、今回ブラームス、ベートーヴェン、シューベルトの交響曲を聴くことができる。それぞれの曲でアプローチが違うというのも特徴の一つであり、聴いているだけで驚かされるのは間違いないだろう。
・シューベルト:交響曲第8(9)番「ザ・グレイト」
録音:1993年5月28日(ライヴ)
・・・「緩→急」へと変化するテンポの緩急が非常に明確であり、変化した後のテンポも比較的に推進力のある速いテンポで演奏されている。それによってエネルギッシュであり、引き締められたオーケストラサウンドが仕上がっている。この点は多少の豊かな音色もあるためピリオド楽器や室内楽編成での演奏とはまた違う仕上がりとなっている。しかしこれこそライヴだからこそ味わえる演奏であり引き締められたサウンドとなったことによって、細部まで細かく聴き込むことができるようになっている。ダイナミック・レンジの幅広さも増しているため、細かいダイナミクス変化にも明確に演奏し分けているのは大分聴きやすい「ザ・グレイト」となっているのは間違いないだろう。
・ベートーヴェン:交響曲第1番
録音:1994年2月4日(ライヴ)
・・・非常に穏やかであり、美しい音楽の流れを演奏から聴くことができるようになっているベートーヴェン。ヴァントが残したベートーヴェン交響曲全集での交響曲第1番とはまた違う印象を受ける演奏となっているのは間違いなく、「緩→急」や「急→緩」といったテンポの緩急による変化もそれぞれの楽章で演奏し分けられているので、これが中々に聴きやすい。弦楽器と木管楽器を中心として明瞭な音色、豊かで美しい響きとなっていることが非常に大きなポイントと言える演奏となっている。
・ブラームス:交響曲第1番
録音:1997年2月19,21,23日(ライヴ)
・・・第1楽章冒頭から比較的に速いテンポで演奏されるブラームス。それ以降としてはテンポの緩急が明確さのあるものとなっていることもあって、爆発的なエネルギーと推進力を生み出す非常に素晴らしいフレッシュな演奏が仕上がっている。これは誰が聴いても楽しめる演奏なのではないか?と個人的には思ったりする。もちろん、豊かな音色かつ奥深いサウンドで演奏される楽章もあり、特に第2楽章では伸び伸びとしていて幅広さもたっぷりとしたスケールを味わえるようになっている。ダイナミック・レンジの幅広さも非常に良く、細部まで細かく聴き込むことができるようになっているので、ヴァントが奏でるブラームスの壮大な世界観をライヴで楽しめるのは大分大きい。特に驚かされたのは第4楽章の5:48あたり。急な加速が入るのでこれには大分驚かされた。
「ギュンター・ヴァント不滅の名盤」シリーズからミュンヘン・フィル編最後となるシューベルト、ベートーヴェン、ブラームスの交響曲をそれぞれ聴くことができる当盤。ライヴだからこそ味わえる臨場感に加えて、SACDハイブリッド盤のために作られた新規マスタリングの効果が絶大であるということは間違いない。次回このシリーズを取り上げる際は北ドイツ放送交響楽団編になる。それとしてもここまで聴いたミュンヘン・フィル編の名演も素晴らしい演奏ばかりだったので、今後も繰り返し聴き続けたいと思う。
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