第1528回「アバド&ウィーンフィルによるベートーヴェン序曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、クラウディオ・アバドとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンの序曲全集です。「ドイツ・グラモフォン」にて録音された当盤は、ピリオド楽器や室内楽編成によるベートーヴェン録音が登場する今日において今でもなお人気度の高い代物となっています。


「クラウディオ・アバド指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
バレエ音楽「プロメテウスの創造物」作品43より序曲

祝祭劇「シュテファン王」付随音楽 作品117より序曲

祝祭劇「アテネの廃墟」付随音楽 作品113より序曲

祝祭劇「劇場の献堂式」序曲 作品124

命名祝日のための序曲 作品115

「コリオラン」序曲 作品62

「エグモント」付随音楽 作品84より序曲

歌劇「フィデリオ」序曲 作品72b

「レオノーレ」序曲第1番 作品138

「レオノーレ」序曲第2番 作品72

「レオノーレ」序曲第3番 作品72a



 アバドがウィーン・フィルと完成させたベートーヴェン交響曲全集とほぼ同時期に録音された序曲全集。現在では主要な序曲のみを収録する形で発売されていることも少なくはないが、今回はアバドとウィーン・フィルが録音した序曲作品を全集という形で聴くことができる。この全集を聴いた後に思わず交響曲全集を聴きたくなるような魅力的な演奏となっているのは聴いていただくとよくわかるだろう。


・ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」より序曲

録音:1988年12月

・・・「緩→急」へと音楽の流れが変化した瞬間に音圧やダイナミクス変化が明確かつ明瞭でわかりやすい仕様となっているのは聴いていてよくわかる。統一感のある弦楽器によって演奏される俊敏さや抜群の機動力や推進力は非常に素晴らしいもので、洗礼された音色を聴くことができる。テンポもやや速めの快速調による演奏となっており、弦楽器の音がより近いことによる臨場感は功を奏している。


・祝祭劇「シュテファン王」付随音楽より序曲
録音:1988年12月
・・・ベートーヴェンは何曲か付随音楽を作曲しているが、この序曲はその中の一つである。ウィーン・フィル全体の一貫性あるサウンドとやや固めの音がぴたりとこの曲の印象に当てはまっていることによって、短い序曲ながらにエネルギッシュであり俊敏かつ疾走感の溢れる快活さを味わえるようになっている。金管楽器のやや咆哮気味の音色すら今回の演奏ではベストなものとなっているようにも聴こえてこれは非常に素晴らしいと言える。

・祝祭劇「アテネの廃墟」付随音楽より序曲
録音:1988年12月
・・・第4曲「トルコ行進曲」が特に有名となっている。劇的に始まり、弦楽器と木管楽器による旋律が非常に美しい。短いながらに3部形式からなる構成が取られているため、安定感と統一感のあるサウンドで聴きやすくなっている。テンポの緩急の明確さやウィーン・フィル全体のサウンドにおける透き通るような音作りなど、後味もスッキリとしているため聴きやすい序曲となっている。

・祝祭劇「劇場の献堂式」序曲
録音:1989年10月
・・・ベートーヴェンが作曲した最後の純器楽管弦楽曲で、演奏からはより厳格なサウンドかつテンポの緩急も含めてやや固めの音色を聴くことができるようになっている。ウィーン・フィル全体としては奥深い豊かな音色で統一されており、骨太なベートーヴェンの序曲を味わえるようになっているのでこれは中々聴きごたえのある演奏であると感じた。この曲に関してもこれまでそれなりの回数を聴いているのだが、アバド&ウィーン・フィルによる演奏に関しては比較的に親しみやすくアプローチされているので、個人的にはベストな演奏となった。

・命名祝日のための序曲
録音:1990年10月
・・・曲名はアッシジの聖フランチェスコの記念日を指している。今日において全くと言って良いくらいにこの曲はほとんど聴かれない曲となってしまったが、交響曲第9番「合唱付き」に関連する点があったりすることもあって一度は聴いておくと良い序曲でることは間違いない。テンポの緩急が明確かつ軽快で重々しさがない中でもオーケストラ全体が奏でるサウンドは分厚く奥深い音色となっている。統一感からなる機動力と鋭いキレ味を聴くことができるようになっているので非常に素晴らしい演奏であることは間違いない。

・「コリオラン」序曲
録音:1985年6月
・・・個人的に一番好きなベートーヴェンの序曲作品で、今回のアバドとウィーン・フィルによる演奏も特に好みであるという風に聴いていて感じたのは間違いない。演奏からは全体的に一貫性の強いサウンドで貫かれており、圧倒的で分厚いスケールは非常に功を奏している。トゥッティによる演奏は素晴らしい音圧と分厚い感覚を味わえるようになっているので聴きごたえとしても十二分にある。テンポもそれほど遅い演奏ではないため、前向きで勢いもある「コリオラン」となっていた。

・「エグモント」付随音楽より序曲
録音:1987年2月
・・・ベートーヴェンの序曲作品の中でも特に有名であり、人気を博している「エグモント」序曲。「暗→明」という流れもあるため比較的に聴きやすい構成ながら、各楽器群による抜群の統一感も含めて非常に素晴らしい音圧を聴くことができる。同時に終盤に関しては活発であり、オーケストラ全体としてもエネルギッシュなアプローチがされている。特に金管楽器の存在は非常に大きいものとなっており、幅広い音域と勝ち誇る瞬間を垣間見ることができるようになっているので、これは大分聴きごたえがあると言えるだろう。

・歌劇「フィデリオ」序曲
録音:1989年10月
・・・今回の序曲全集の中でもDisc 2は「フィデリオ」関係の曲が収録されている。まず1曲目は「フィデリオ」序曲。引き締められた弦楽器のサウンドも素晴らしく、テンポの緩急が明確であるため「急→緩」や「緩→急」それぞれの場面で良さが大分わかりやすく作り込まれている。同時にテンポの加速も素晴らしいもので、それによるダイナミクス変化もオーケストラ全体でいちがんとなっている感覚があるため聴きやすい「フィデリオ」序曲を聴くことができる。

・「レオノーレ」序曲第1番
録音:1989年10月
・・・テンポの緩急もあるが、ウィーン・フィル全体のサウンドに固さを感じるかと問われればそうではなく、全体的に優雅さや良質な感覚を感じ取ることができるサウンドとなっている。弦楽器による土台がしっかりしているため、抜群の安定感も楽しめる。より細部まで細かく聴き込むことができるという点でも非常に素晴らしい第1番だ。

・「レオノーレ」序曲第2番
録音:1986年10月
・・・後の第3番と比べるとほとんど同じように聴こえるが、オーケストレーションの違いもあって複雑化されているのは間違いない。普段違う「レオノーレ」序曲を聴きたい時にこの第2番を聴くのも面白いかもしれない。細かいダイナミクス変化が非常に素晴らしい演奏で、テンポの緩急もあるが引き締めすぎることなく緩やかであり、音楽の流れとしても抜群の良い状態で演奏が行われていることもあって後味はスッキリとしていて非常に聴きやすい演奏となっている。

・「レオノーレ」序曲第3番
録音:1989年10月
・・・今日おいて特に演奏されることの多い「レオノーレ」序曲である。演奏として、テンポの緩急による音楽の流れが非常にスムーズとなっており、細かいダイナミクス変化や弦楽器のキレ味も抜群の良さをみせているため聴きやすい演奏となっている。まさにこの序曲全集の最後を締めくくるにふさわしい曲であるというふうにも感じることができる演奏となっている。分厚くまとまりあった弦楽器による圧倒的なスケールは何回聴いても素晴らしいものとなっているのは間違いない。

 アバドのウィーン・フィルとの「ドイツ・グラモフォン録音全集」にも当盤は収録されているが、今回の序曲全集は以前から所有しており、ずっと聴きたいと思っていた名盤。今回満を辞して取り上げたが、もっと早くに取り上げていても良かったのではないかと思うくらいに素晴らしい演奏が多数収録されている全集だったのは間違いない。多少手に入れづらいかもしれないが、何回でも聴きたくなる名盤となっているのでぜひ一度聴いてみていただければとと思う。