第1503回「ヨッフム&ハンブルク国立フィル、ベルリンフィルとのベートーヴェン交響曲全集」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、オイゲン・ヨッフムとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団と録音したベートーヴェン交響曲全集です。ここ最近ベートーヴェンの交響曲全集を聴いていなかったというのと、ヨッフムによる歴史的録音を聴くことができる貴重な記録の一つであると言えるでしょう。


「オイゲン・ヨッフム指揮/ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第1番 ハ長調作品21

交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

交響曲第9番 ニ短調作品125「合唱付き」


「オイゲン・ヨッフム指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

交響曲第2番 ニ長調作品36

交響曲第3番 変ホ長調作品55「英雄」

交響曲第4番 変ロ長調作品60

交響曲第5番 ハ短調作品67

交響曲第7番 イ長調作品92

交響曲第8番 ヘ長調作品93



 ヨッフムといえば、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ロンドン交響楽団とベートーヴェン交響曲全集が非常に有名だが、今回はそれらよりも前の録音となっている。今回は「Memories」から発売されたものだが、別のBOXとしては「ドイツ・グラフォン」に録音されたバンベルク放送交響楽団と今回にも収録されているベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との録音を収録した全集も別で発売されている。これに関してはまた後日探してみたいところだが、まずは比較的に手に入りやすい「Memories」からの交響曲全集をみていこうと思う。


・ベートーヴェン:交響曲第1番

録音:1942年3月

・・・1942年の演奏とは思えないくらいに音質が良い第1番である。放送録音ということもあるため、ノイズが入っているのだがそれとしても弦楽器の透き通るような安定感からなる美しい音色とサウンドは非常に功を奏する形となっており、全体的に推進力を感じることができるような快活でエネルギーに満ち溢れた演奏となっている。若き日のヨッフムによるベートーヴェンということもあって、後の全集とはまた違う印象を受ける点もあって個人的には非常に新鮮な印象を受ける演奏だった。特に弦楽器における統一感のあるサウンドは聴きもので、


・交響曲第2番

録音:1958年1月

・・・ノイズもそれほどなく、比較的に聴きやすい音質となっている第2番。この時代のベルリン・フィルにしては珍しく、重厚的なサウンドよりも明確かつやや引き締まった感覚を味わえるような美しい音色を味わえる感覚が非常に素晴らしいと言えるだろう。木管楽器と金管楽器のすっきりとした音色も良いが、やはり弦楽器のサウンドにひかれるものがある。近年主流になっている古典奏法とまではいかないが、透き通るような美しい音色やダイナミック・レンジの幅広さが生かされた余裕のある演奏や細かいテンポの緩急が功を奏する形となっている。これは今回驚かされた交響曲の一つである。個人的には大分好みな第2番だった。


・交響曲第3番「英雄」

録音:1937年6月

・・・時代も時代なので仕方ないと思うが、音質はそれほど良くない印象が強い。常にノイズが付き纏っているのに加えてノイズが強すぎて演奏が聴こえない。「Memories」の音源はまれにこういった録音が紛れているのだが、歴史的な記録としては十二分に聴く価値が演奏としてはあると言えるだろう。圧倒的な安定感のあるサウンドと、土台のしっかりとした弦楽器群の分厚いサウンドは聴きごたえがある。木管楽器の音色が非常に豊かなサウンドとなっており、ホルンの音色も軽快さと深みに満ち溢れている。オーケストラ全体からは推進力を感じることができるため、フルトヴェングラーやトスカニーニにも引けを取らない素晴らしい「英雄」を聴くことができるだろう。


・交響曲第4番

録音:1961年1月

・・・この第4番も非常に音質が良い演奏の一つで、ノイズはほとんどない。カラヤンがベルリン・フィルと初めて完成させた第1回の交響曲全集における演奏に近しい感覚を味わえるのは間違いない。しかし、ヨッフムによるアプローチは意外にも安定感のあるテンポとやや重心の低さからなる分厚めな演奏である。第4楽章に入った時点でようやく快速な早いテンポとなるのだが、それ以外の楽章では比較的遅いテンポで演奏されている箇所が何箇所かある。しかし、それによってテンポの緩急が明確に演奏され分けられているようにも感じられる仕上がりとなっており、重厚的ではないが後味は非常にスッキリとした演奏を聴くことができるようになっている。


・交響曲第5番

録音:1945年1月

・・・フルトヴェングラー時代のベルリン・フィルによるベートーヴェン演奏を思い出させるようなノイズや音割れがこの演奏では聴くことができるようになっているがサウンドはその親しまれたものと同じのため、重厚的で分厚く非常に聴きごたえがある演奏となっている。急な加速があったり、たっぷりと演奏するスタイルはヨッフムがフルトヴェングラーに寄せたのかわからないが、それが加わったことによる聴きごたえは非常に素晴らしいものとなっているのは間違いない。


・交響曲第6番「田園」

録音:1943年6月

・・・ノイズはそれほどないが、演奏全体の音に関しては比較的に歴史的な懐かしさを感じることができるサウンドとなっている。しかし、それとしてもハンブルク国立フィルによるサウンドが重心の安定した分厚い弦楽器による土台が作り込まれていることもあって、ベルリン・フィルに近い音色や特徴を感じ取ることができる演奏となっているのは間違いない。今回の演奏では、特に弦楽器と木管楽器によって奏でられる演奏が素晴らしい世界観となっているため、バランスの良さが中心にある。豪快さは演奏から感じられないとしてもテンポの緩急によって各楽章ごとに美しい旋律を奏でることのできるベストな「田園」を聴くことができるのは聴いていただくとよくわかるはずだ。


・交響曲第7番

録音:1938年9月

・・・1930年代の録音ということもあって、ノイズがある状態での演奏となっているが、それをものともしない芯のある音と、抜群の安定感を演奏から通して聴くことができるようになっているのは間違いないだろう。テンポの緩急に関しても大きな差があるわけではないが、決して重々しかったりするわけではない演奏で、統一感のある弦楽器のサウンドや木管楽器とホルンのなどの清々しさすら感じるサウンドはこの時代の録音の中ではあまり聴くことができないのではないだろうか?また、第4楽章で見受けられたのだが、細かいダイナミクス変化やヨッフム独特のアプローチによる溜めなどが功を奏する瞬間を体感できるのは非常に楽しめる点の一つとも言えるだろう。


・交響曲第8番

録音:1958年4月

・・・何種類も交響曲全集を聴いている中で、毎回驚かされる回数が多いのがこの交響曲第8番である。今回の演奏では、テンポの変化が柔軟であり、細かい溜めや加速があるため「緩→急」や「急→緩」といった音楽の流れが明確で非常にわかりやすい世界観が展開されている。第1楽章から聴き手の心を掴む演奏が行われており、ベルリン・フィルによる分厚い重厚的な土台のもと安定感のある、やや暗めのサウンドで演奏が行われた弦楽器群の上に明るめの音色で演奏される木管楽器や金管楽器の存在がある。また、俊敏に演奏される楽章もあるがオーケストラ全体のサウンドとしては安定感のある重厚的な芯のある音で奏でられているため、最初から最後までブレることのない演奏を楽しむことができるようになっている。


・交響曲第9番「合唱付き」

録音:1930年6月

・・・今回の全集の中でも一番古い録音となっている「第九」。それだけ前の録音となると確かに音質に関してはあまり良くないのでは?という印象を受けるかもしれないが、激しいノイズがあるというわけでもなく比較的聴きづらい感覚を覚えるようなわけではない。一部分によっては確かに急なフェードアウトや合唱や歌手をよりきかせやすくするためにオーケストラのボリュームをその場面だけ抑えたりする点が聴こえたりするものの、ハンブルク国立フィルの演奏自体としては非常に安定感のあるバランスの良いスタンダードな「第九」を聴くことができるようになっている。テンポ設定に関しては大分速いわけではなく、やや重心の低い形で演奏が行われている。


 ヨッフムによるハンブルク国立フィルとベルリン・フィルそれぞれによる録音を組み合わせた交響曲全集。非常に聴きごたえがある代物だった。「Memories」から発売されたCDは歴史的な録音という面では非常に貴重な録音が多数存在するので、今回の録音もそのうちの一つであることは間違いないだろう。ヨッフムの録音が他にもあれば今後も探していきたいと同時に、「Memories」から発売されている他のCDも引き続き聴いていきたいところである。


https://tower.jp/item/3310061/Beethoven:-Complete-Symphonies