チェリビダッケとロンドン響による人気盤の一つである「伝説の7コンサート」。元々は11枚組みのBOXとして「Cncert Club」から発売されていたが、2022年7月に「Prominet Classics」から復刻された。ミケランジェリによるラヴェルのピアノ協奏曲をはじめとして、チェリビダッケの十八番であるブルックナーは収録されていないとしても十二分に楽しめる演奏が多数収録された名演BOXとなっている。まず本日は、Disc 1,2をみていく。
[Disc 1]
・ヴェルディ:「運命の力」序曲
録音:1978年4月11日(ライヴ)
・・・冒頭演奏される金管楽器からはそれほどインパクトと音圧は感じられないものの、その後の音の流れや穏やかな音色ながら緊迫感と常に隣り合わせの状態で演奏されている感覚を味わえる点で言えば今回のようなダイナミクス変化やアプローチが合っているのかもしれないと聴いていて感じた。新マスタリングが施されていることもあってか、ダイナミック・レンジの幅広さはそれほどないとしてもオーケストラ全体を見渡せるようになっているのに加えて細部まで細かく聴き込むことができるようになっている。細かい「緩→急」や「急→緩」の変化も明確に演奏されているかつ、晩年のような重々しいテンポで演奏されていないというのも聴きやすいと言える。
・ヒンデミット:交響曲「画家マティス」
録音:1978年4月11日(ライヴ)
・・・「ヒンデミット事件」のきっかけとなったこともあるが、フルトヴェングラーとベルリン・フィルによって初演されたヒンデミットの代表作の一つである。3楽章からなる交響曲ではあるが、オペラ版との姉妹曲という扱いのためその荘厳さや幻想的かつ美しい世界観は聴いていて毎回楽しませてもらえる感覚を受けることができる。ロンドン響による安定感のあるサウンドはもちろん、木管楽器や金管楽器、弦楽器など各楽器における特徴を見事にとらえた演奏が展開されているため、それぞれの楽章でたっぷりとこの曲を楽しむことができる。特に第3楽章が始まった瞬間の音響は新マスタリングが施されたことによるダイナミック・レンジの幅広さやテンポの緩急が凝縮されたようにも聴こえるので、聴き終えた後の感動が凄まじい。
・プロコフィエフ:バレエ組曲「ロメオとジュリエット」
録音:1978年4月11日(ライヴ)
・・・全曲版ではなく、バレエ組曲として演奏されている今回の演奏。抜粋されているのは以下の通り。
・モンタギュー家とキャピュレット家
・少女ジュリエット
・仮面
・別れの前のロメオとジュリエット
・アンティル列島の娘たちの踊り
・墓の前のロメオ
・タイボルトの死
演奏として、各曲ごとに明確なテンポの緩急が備わっているのはもちろんのことで、テンポを急激に早めることはないとしても緩やかで流れの良い演奏を聴くことができる。ダイナミック・レンジの幅広さも多少あるため、細かいダイナミクスを明確に聴くことができるのに加えて、統一された弦楽器の鋭さやスケールを味わえるのは非常に素晴らしい感覚を覚える。また、他の曲と同じように金管楽器の音色が特徴的なサウンドとなっており、ロシアのオーケストラではないがムラヴィンスキー率いるレニングラード・フィルの特徴的な金管楽器の音色を思い出すような印象を受けた。聴き終えた後に組曲での演奏だったが、全曲版を聴きたくなるような気持ちになった。
[Disc 2]
・ブラームス:交響曲第3番
録音:1979年5月31日(ライヴ)
・・・若干金管楽器の音色の癖や音程に違和感を感じるかもしれないが、これまでに聴いたことがないような独創性に満ちた演奏となっているのは間違いないところで、テンポの緩急における差も大きく出ており、揺らぎや溜めなど絶妙なバランスによって演奏がされているためこれまでに聴いたことがないようなブラームスが聴くことができるようになっているのは間違いないだろう。それもあってテンポに関しては早すぎることはないが、大分遅めに演奏されている楽章はあるので、まるで別の曲の演奏を聴いているかのような刺激的な演奏を聴くことができるのは間違いない。
チェリビダッケの録音はこれまでブルックナーの交響曲を中心に聴いてきたこともあって、今回のロンドン交響楽団とのライヴは個人的には非常に新鮮味のある演奏というふうに感じることができた。パワーに欠ける演奏もあるかもしれないが、晩年のチェリビダッケに近いところやそうではないアプローチをライヴから通して聴くことができるので、非常に貴重な代物であると言えるだろう。次回取り上げる際はDisc 3,4を取り上げる予定だ。
https://tower.jp/item/5501528/チェリビダッケ+ロンドン交響楽団-伝説の7コンサート
