エーリヒ・クライバーによる「デッカ録音全集」。聴き進めていけばいくほどに新しい発見があるのだからこれまで聴いていない分もあるが、新しい発見をすることができるのは何よりも嬉しいことに繋がるのは間違いない。前回のコンセルトヘボウ管による「英雄」も凄まじい名演となっていたが、今回のベートーヴェンとチャイコフスキーもそれに引けを取らない名演である。
[Disc 5]
・ベートーヴェン:交響曲第5番
録音:1953年9月
・・・ここまでエーリヒ・クライバーによるベートーヴェンの交響曲をいくつか聴いてみて共通している点といえば第4楽章は比較的にテンポが重くなる箇所が何箇所もあり、その時の重量感がこれまでにないくらいの大きな存在感を味わうことができるようになっている点が個人的には大きな衝撃を受けた。第1楽章から第3楽章まではテンポの緩急からなる変化やスムーズな運び方であったり、細かいダイナミクス変化などを楽しむことができるのが非常に良い。弦楽器群によるしっかりとした土台の上に金管楽器や木管楽器が乗っかり演奏をしているが、テンポが遅くなったとしても早かったとしても一貫性のあるサウンドを聴くことができるのは素晴らしいと言える。
・ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
録音:1953年9月
・・・非常に劇的かつロマンティックな演奏となっている今回の「田園」。サウンドが時代を感じるような懐かしさとなっているが、それが功を奏しているのかテンポも非常にベストなアプローチで聴こえる。弦楽器と木管楽器のダイナミクスや音形も統一されており、それに伴って緩急からなる自然の流れやバランスが取れているため聴きやすい。
[Disc 6]
・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
録音:1953年10月
・・・テンポの緩急の差が激しく、溜めやテンポが落ちる際や加速する部分などまさに多種多様と言っていいくらいに変幻自在な演奏となっている印象を受けた。それとしても演奏の流れは非常にスムーズであり、美しい音色と響きを持ち合わせながら演奏が進められていくので非常に聴きごたえがある「悲愴」となっているのは間違いない。ノイズも多少あるが、ダイナミック・レンジの幅広さがあることによってオーケストラ全体を見渡せるように感じることができるようになっており、木管楽器や弦楽器など全ての楽器を明確に聴き取りやすくなっている。
エーリヒ・クライバー没後65年記念BOXとして2021年12月に発売された今回の録音全集。以前から知っていた演奏もあれば、はじめて聴いて衝撃を受けた曲もある。そういう意味では今回のベートーヴェンとチャイコフスキーは衝撃を受けた側の曲となるが、もっと様々なエーリヒ・クライバーの名演を聴きたいとこの録音全集に収録されている演奏を聴くと毎回思う。次回取り上げるのはDisc 7,8。それで録音全集を取り上げるのは最後となる。
https://tower.jp/item/5243809/デッカ録音全集<限定盤>


