「指輪物語」は大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング」の原作である。現在では吹奏楽コンクールをはじめとして、演奏会などでも演奏されることが多くなっている吹奏楽曲のレパートリーの一つと言っても過言ではないだろう。それを今回作曲者デ・メイ自身による指揮のもと演奏を聴くことができるのだからこれほど貴重な録音はないと思われる。
・ニールセン、デ・メイ:「アラジン」組曲
録音:2012年11月17日(ライヴ)
・・・元々はニールセンが作曲した劇附随音楽であり、そこから抜粋された7曲が組曲として演奏される。
1.祝典行進曲
2.アラジンの夢と朝霧の踊り
3.ヒンズーの踊り
4.中国の踊り
5.イスパハンの踊り
6.囚人の踊り
7.黒人の踊り
からなるが今回の「アラジン」組曲は「祝典行進曲」、「アラジンの夢と朝霧の踊り」、「黒人の踊り」の3曲のみを聴くことができるようになっている。それぞれの曲で演奏される個性豊かな演奏には非常にユーモアがあり、キャッチーである。オーケストラによる演奏で聴くものとまた違う面白さを吹奏楽の演奏でうまく表現している。それはきっとデ・メイ自身による編曲版ということも大きいのだろう。
・デ・メイ:交響曲第1番「指輪物語」
録音:2012年11月17日(ライヴ)
・・・当初は作品1が付けられていたデ・メイによる最初の作曲作品。5楽章からなる交響曲となっており、各楽章には登場人物や情景のタイトルが付けられている。
第1楽章「魔法使いガンダルフ」
第2楽章「エルフの森ロスローリン」
第3楽章「ゴクリ(スメアゴル)」
第4楽章「暗闇の旅」
第5楽章「ホビット」
基本としては吹奏楽で演奏されるが、ヘンク・デ・フリーヘルによって編曲された管弦楽版も存在する。交響曲というよりは組曲に近い感覚ではある「指輪物語」。原作のストーリーとは異なる順番の曲順が並べられているが物語としての情景など世界観としては非常にわかりやすく作り込まれている。シエナのサウンドとしても特に金管楽器群の存在は非常に大きいものとなっており、各楽器による対話も素晴らしいが個々が奏でる音色も好みと感じる部分が大変多く存在している。また、吹奏楽の演奏ではあるが「キッチリ、カッチリ」としたサウンドではなく幅広く豊かなスケールを感じることができる音作りがされているためこの曲の壮大さも味わえるようになっている。
デ・メイによる「指輪物語」全曲を聴いたのは大分久しぶりだったが、面白い演奏だったことは間違いない。次はCDがあれば管弦楽版を聴いてみたいというところ。吹奏楽をやっている限りシエナの名前は誰しも聴いたことがあると思うが、今回のような自作自演による録音は非常に貴重でありよりその世界観を楽しむことができるようになることは間違いない。以前取り上げたバーンズとのCDもそうだし、今後もシエナによる多くのCDを聴きたいと思う。
https://tower.jp/item/3227465/指輪物語

