今回の「ヴォツェック」は「Memories」から発売された代物で、欠落がある上にノイズもひどい録音なのだがそれを除けば歌手の台詞などは比較的聴き取りやすくなっており、オーケストラのその聴き取りづらさはより現代色を濃くしている。そして初演時に指揮をしていたエーリヒ・クライバーによる演奏という貴重なライヴ録音であるということを再認識させてくれる盤である。
ベルク:歌劇「ヴォツェック」 1953年5月25日ライヴ録音
・・・初演時に指揮をしているエーリヒ・クライバーに目がいきがちだが、今回は英語版での貴重な全曲録音とされている。全曲といっても欠落があったりするため最初から最後まですべて収録されているわけではない。しかしそれでもこのサスペンスといおうかホラーといおうか、なんとも不気味な物語を味わうには充分なものと言えるだろう。配役は以下の通り。
ジェス・ワルターズ(ヴォツェック)
トルスタイン・ハネソン(鼓手長)
エドガー・エヴァンズ(アンドレアス)
マレア・ヴォルコフスキー(マリー)
他
ほぼ無調であるのと複雑な構成かつ独特なリズム、不協和音は現代音楽と言っても差し支えない。この曲自体録音がそれほど多くないため、名盤や名演は限られてくる。その中でも名盤や名演ではないにしても歴史的録音の一つとしてこの演奏を聴くことに関しては大きな意味があると私は思う。演奏として、ノイズがひどく常に演奏と共に聴こえるわけだが、それをないものとするとオーケストラのボリュームはやや遠めで少々弱い印象を受けるが、歌手陣の歌声といってもほとんどセリフだがはっきりと明確に聴きとることができる。それに加えて緊迫した空気観や不協和なサウンドがよりこの物語に対する不気味さであったり恐ろしさというものが表現されている。
エーリヒ・クライバーによるオペラといえばモーツァルトの「フィガロの結婚」とリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」が真っ先に上がると思うが、歴史的な価値がある録音として今回の「ヴォツェック」も一度は聴くと面白いかもしれない。物語の終わりとして衝撃的な幕切れとなるが、ベルク作品の中でも代表的な曲となっているのでノイズがあったりするため聴きづらい点もあるかもしれないが一度聴いていただければと思う。
https://tower.jp/item/3431838/Alban-Berg:-Wozzeck-(In-English)