ショルティとシカゴ交響楽団が「DECCA」に残した名盤は数多く存在するが、今回のバルトークはその代表的な録音の一つと言っても過言ではない代物であることは間違いない。ショルティのバルトークといえばすでにロンドン交響楽団との「管弦楽のための協奏曲」、「舞踏組曲」やバレエ組曲「中国の不思議な役人」がSACDハイブリッド盤として発売されているが、当盤には「中国の不思議な役人」以外の2曲が収録されている。ある意味それによって聴き比べもできなくはない。
バルトーク:管弦楽のための協奏曲 1981年1月19〜20日録音
・・・バルトークにおける代表作として知られているこの曲。カラヤンやフリッツ・ライナーなど往年の指揮者たちが取り上げ名盤を残している。今回のショルティもロンドン響と1965年に録音をしているが、今回のシカゴ響との録音は1981年のものなのでそれよりも後ということになる。5楽章からなる交響曲と言ってもいいくらいの厚みとなったこの曲はその「協奏曲」という名前の通りに各楽器に独奏的な部分があったり大編成ではありながらも室内楽のようなオーケストレーションなどがされている。今回の演奏ではショルティとシカゴ響による分厚いながらも強靭なスケールとキレ味を持ち合わせる鋭いながらも柔軟性のあるサウンドを全楽章余すことなく堪能することができる。SACDハイブリッド盤となったことによるDSDマスタリングの効果によって細部までより聴き込みやすくなったのは特に素晴らしい仕様で、ダイナミック・レンジの幅広さによる明確なダイナミクス変化などが聴きやすい。これまでもこの曲は何種類か聴いてきているが、今回の録音が個人的には一番強い印象として残ったことは間違いない。
舞踏組曲 1981年1月19〜20日録音
・・・5つの舞曲と終曲による6曲からなる構成になっており、1923年に行われた「ブダペスト市成立5010年記念音楽祭」のために作曲された。同時期に作曲された「中国の不思議な役人」との共通点も指摘される曲となっている。そのため、現代音楽的な面が強い。難易度は比較的高いながらもバルトークの代表的な作品の一つとして演奏されるケースは非常に多い。演奏として、常に各曲で躍動感の味わえるような凄まじいエネルギーがシカゴ響による演奏で展開されており、オーケストラ全体の一体感を一気に味わうことができる。テンポの緩急からなるダイナミクス変化やアーティキレーション変化も功を奏しており、この曲を再認識した録音となった。
弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 1989年5月14日、11月14日録音
・・・「管弦楽のための組曲」に並んで人気を博しているバルトーク作品を代表とする名曲である。「緩→急→緩→急」のシンプルな形ながら「バルトーク・ピツィカート」や半音階など現代音楽に寄った作風となっている。今回の演奏ではテンポの緩急からなる細かいダイナミクス変化はもちろんのことシカゴ響による強靭なるサウンドを豪快なまでに味わい尽くすことができるようになっているので、最初から最後まで聴きごたえたっぷりの世界観が展開されている。不気味にも聴こえる中で生々しい弦楽器と強烈な打撃の強い印象を残す打楽器が強く頭に残る。
ショルティによるバルトーク作品の録音はいつ聴いても十二分に楽しめるので良い。またロンドン響との録音を聴きたくなった。「エソテリックSACD」シリーズでは特に打楽器の音が非常に良くなる傾向にあるため、SACDハイブリッド仕様の高音質盤を余すことなく楽しめるのは特に嬉しい。弦楽器含めて打楽器的な扱いがされるアプローチもバルトーク作品では多くみられるのでダイナミック・レンジの幅広さ含めて大分楽しめるのはエソテリック盤のSACDハイブリッド盤以外にないだろう。
https://www.esoteric.jp/jp/product/essd-90262/feature

