「ナクソス」から発売されているCDは非常にコスパが良く、非常にマニアックな代物が多いと言えるだろう。今回の「海」、「春の祭典」もその一つだ。「春の祭典」に関してはストラヴィンスキー自身による2台ピアノ版は過去に何種類か聴いたことがあるし、楽譜も購入して分析したのは懐かしい思い出である。
ドビュッシー:管弦楽のための3つの交響的素描、2016年8月16〜18日録音
・・・ルシアン・ガルバンが編曲したドビュッシーの「海」。ルシアン・ガルバンはデュラン社の校正係として活躍した。特にラヴェルからの信頼は特に厚く、デュラン社に紹介したのもラヴェルであり、ラヴェル作品を何曲か連弾用に編曲したりしている。そんなガルバンによるドビュッシーの「海」は初めからピアノ曲だったかのようにも感じさせるくらいの美しさに満ち溢れた演奏で、聴いているだけでその神秘的で美しい空間に引きずり込まれる。テンポの緩急も元々のオーケストラ寄りになっていることもあってそれほど独創的ではないかもしれないが、素晴らしい編曲と演奏が合わさった瞬間を聴くことができるだろう。
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」、2016年8月16〜18日録音
・・・「春の祭典」のピアノ版といえばバルトークも分析したストラヴィンスキー自身の編曲による2台ピアノ(連弾)編曲版が存在している。今回のピアノ独奏版はレイチキスによって2台ピアノ編曲版を参考にして編曲したものである。リストがピアノ版に編曲したベートーヴェンの交響曲が非常に難易度高いものとなったように今回の「春の祭典」もそれなりに難易度が高いと言えるだろう。しかし、無心になって目を閉じながら聴いていると聴こえてくるものはオーケストラで演奏している「春の祭典」そのものである。むしろ「春の祭典」自体大好きな私としてはダイナミクスやテンポがピアノでの演奏に合わせているため独特の世界観を生み出していると感じる。特に「いけにえの踊り」は割りかしスマートで聴きやすいと思う。
今回ラルフ・ファン・ラートによるドビュッシーの「海」とストラヴィンスキーの「春の祭典」をみてきたが、元々のオーケストラでの演奏も十二分に美しいが、ピアノでそれが演奏されることによってこれまで聴き慣れているオーケストラ演奏とはまた違う美しさを味わうことができるようになっているので当盤を改めて聴いてみて刺激的に満ちた名演だったと改めて感じた。ガルバンによるラヴェル作品のピアノ編曲版も後日聴いてみたいのでそれはまた探したいところ。
https://tower.jp/item/4655995/Stravinsky:-The-Rite-of-Spring;-Debussy:-La-Mer

