みなさんこんにちは😃2021年に創立40周年を迎えたヨーロッパ室内管弦楽団。今回はそれを記念して発売されたアーノンクールとのライヴ録音が初CD化されました。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスの交響曲が収録されています。また、当盤は2021年度第59回「レコード・アカデミー賞」の交響曲部門で入賞しています。アーノンクールとヨーロッパ室内管の深い絆をみていきましょう。
「ニコラウス・アーノンクール指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団」
ハイドン作曲:
交響曲第100番「軍隊」
交響曲第101番「時計」
モーツァルト作曲:
交響曲第29番
行進曲ニ短調
セレナード第9番ニ長調「ポストホルン」
ベートーヴェン作曲:
交響曲第5番
交響曲第7番
ブラームス作曲:
悲劇的序曲
交響曲第4番
アーノンクールのCDを聴くのはわりと久しぶりのように思える。ピリオド楽器や室内楽編成でのスペシャリストともいえるアーノンクールがヨーロッパ室内管弦楽団と演奏した数々の演奏は名演として我々に記憶されている。今回はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスの各交響曲がいくつか収録されたライヴ録音で、当盤のためにリマスターが行われている点も注目すべき点だろう。
ハイドン:交響曲第100番「軍隊」、モダン楽器ながら引き締まった音色と快調に進んでいくテンポには改めて新鮮に感じる。ここ最近ハイドンのCD含めてアーノンクールのCDを聴くこと自体があまり多くなかったということもあったためだろうかDisc 1に収録されているこの「軍隊」を聴き始めた時には鳥肌が立った。特に第2楽章や第4楽章で登場する軍楽隊からなる打楽器のダイナミクスや金管楽器の音色が非常にぴたりと当てはまっていると言える。人によっては騒がしいと思われる方もいるかもしれないが、私としてはこれくらいインパクトがある方が聴きやすかったりする。
交響曲第101番「時計」、有名な木管楽器によって演奏される第2楽章も非常にキャッチーで愛らしく演奏されている。そしてその対比となるのだろう、金管楽器や弦楽器の引き締まった音色には驚かされるばかりだ。特に弦楽器に関しては唸り上げるような生々しさすら感じる。リマスターがされていることもあってダイナミック・レンジの幅広さも良く、各楽器のダイナミクスはより効果的なインパクトを与えるようになっている。
モーツァルト:交響曲第29番、オーケストラ全体が一体となった研ぎ澄まされたかのようなサウンドと駆け抜けていくかのように早いテンポで演奏される。ダイナミクスのバランスも非常に良く、個々の楽器で強すぎるというものはまずない。リマスターによる効果もあると思われるが透き通る音色でスッキリとしていて聴きやすい第29番となっている。
行進曲、セレナード第9番「ポストホルン」、交響曲とはまた違う面白さのある曲が収録されている。オーケストラというよりは個々の楽器に焦点があてられた形とはなるものの、技量ある奏者が揃ったヨーロッパ室内管ということもあってかその演奏は非常に素晴らしい。室内楽編成ではあるもののダイナミック・レンジの幅広さが功を奏した形となっており、研ぎ澄まされたモーツァルトを楽しむことができる素晴らしい名演となっている。
ベートーヴェン:交響曲第5番、アーノンクールはすでに第5番を同オーケストラと録音している。それに関しては以前当ブログでも交響曲全集を取り上げたことがある。今回の演奏はどちらかといえばアーノンクールがウィーン・コンツェントゥス・ムジクスと第5番を演奏した際のアプローチと近いように感じた。過去に同オーケストラと録音された演奏は「テルデック」から発売されたが、その時よりも勢いはより一層増し、ダイナミクスや推進力、音色もより鋭さが上がっている。それによってか演奏時間も全楽章通して短くなっている。当盤は往年の時代における演奏とは違う新時代の室内楽編成でのベートーヴェンをまず入門的な意味で聴く際にオススメできる盤となるかもしれない。これはモーツァルトやハイドン、ブラームスにも言えることだと思う。今回は交響曲全集ではないもののこの後の第7番とセットだからこその良さがあると私は感じた。
交響曲第7番、こちらも第5番と同じで過去にヨーロッパ室内管と録音している。オーケストラ全体の音色としては引き締まっており、より強固さが増したように思える。弦楽器と木管楽器、金管楽器と打楽器それぞれの一体感は素晴らしく、決め所を見失うことなく必ず決めてくる点は非常に良い。ベートーヴェンの交響曲の中でもポピュラーな作品とされるが固めに作られていることもあってややロックに近いようなイメージを聴いていて感じた。個人的には今回の演奏では第5番よりも第7番の方が好みだったかもしれない。
ブラームス:悲劇的序曲、私個人としてベートーヴェンやハイドン、モーツァルトによる室内オーケストラでの演奏はそれなりにイメージができるが、ブラームス作品を室内オーケストラで演奏するイメージがあまりなかった。近しいものとすれば「Exton」から発売された久石譲とフューチャー・オーケストラ・クラシックスによる立奏での演奏だろうか。この後に交響曲第4番をみていくがまずトラック1に収録された「悲劇的序曲」をみていくと、先ほどまでのハイドン、モーツァルトやベートーヴェンの演奏と比べてそこまで強固な印象はあまり感じられなかった。やや鋭さがあるくらいである。また、ダイナミクスの追い込みも素晴らしく演奏における緩急がよく使い分けられている。今回の演奏では弦楽器と金管楽器特にトランペットの音形に統一感があり曲にぴたりと当てはまっていた(人によってはやや強すぎるようにも感じるかもしれない。)。
交響曲第4番、演奏が始まった時には予想とは違い美しさに磨きがかかった演奏であると感じた。大オーケストラとは違い人数が限られるという点もあるのだろうが、少数精鋭という言葉を具現化したようなブラームスだった。第1楽章、第2楽章はやや硬派ながら美しさが全体的に押し出されていたが、第3楽章に入った瞬間強烈な金管楽器と打楽器によるインパクトあるサウンドが展開される。徐々にギアを上げていくイメージだろうか。そして第4楽章に入りここまで演奏されてきた良さを全て体感できるようなハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンとはまた違う研ぎ澄まされたブラームスを聴くことができる。
さて今回創立40年記念として発売されたアーノンクールとヨーロッ室内管弦楽団によるハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス交響曲集をみてきたが、今回の演奏でまた室内楽編成によるベートーヴェンやモーツァルト、ハイドンを聴いてみたいというふうに思えた。音が強固なため長時間聴くと少々疲れてしまう点が今まであったが、今回は特に疲れるようなことはなかったので慣れたのかはわからないがここ最近避けていた室内楽編成による演奏やピリオド楽器によるCDを聴いていきたいと思う。なるべくはアーノンクールとヨーロッパ室内管中心に聴いていきたいのでベートーヴェンピアノ協奏曲全集などを取り上げられればと考えている。