第819回「ヴァント不滅の名盤シリーズ第3弾、ベートーヴェン交響曲第1番、3番、4番と序曲」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日は久々のご紹介となります。ヴァント不滅の名盤シリーズ第三弾を今回は取り上げていきます。昨年5月に発売された当盤は「Profil」のヴァントが残した名盤一つ一つを「Altus」からSACDハイブリッド仕様で発売されたもの。今回はベルリン・ドイツ響とのベートーヴェン交響曲第1番、第3番「英雄」、第4番、「コリオラン」序曲、「エグモント」序曲が収録されています。ヴァントのベートーヴェンといえば北ドイツ放送響とのエソテリックSACD盤が有名で、今でも高値で取引されています。ヴァントによる至高のベートーヴェンをみていきましょう。


「ギュンター・ヴァント指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第1番

交響曲第3番「英雄」

交響曲第4番

「コリオラン」序曲

「エグモント」序曲



 今回の演奏は交響曲第1番、第3番が1994年2月15日に、交響曲第4番は1996年4月9日、序曲2種類は1994年11月28日にベルリンフィルハーモニーにてライヴ収録されたもの。今回の演奏では是非とも北ドイツ放送響との全集と聴き比べをしてみたいと思ってしまうこと間違いなしだ。

 ベートーヴェン交響曲第1番、これまで交響曲第1番は何種類も聴いてきたが、ここまで優雅で好奇心を揺さぶられる演奏を聴いたのはバーンスタインとウィーン・フィルによる演奏以来のことのような気がする。ベルリン・フィルのお膝元でもあるフィルハーモニーにて演奏をしたヴァントとベルリン・ドイツ響によるこの演奏は、オーケストラの良さが凝縮されたかのような風情と濃厚な音色が混ざり合っている印象。近年演奏されている古典奏法や室内楽、ピリオド楽器によるものとは真逆のものだが、この余裕すら感じられるベートーヴェンには右に出る演奏などないだろう。聴く際は音の強さに注目をして聴いていただきたい。強烈すぎるというわけではなく、大きく振りかぶったパンチを柔らかいクッションで包み込むような力が働いているように感じられる。これによって生まれた音色がこの交響曲第1番にベストマッチしたのだろう。

 交響曲第3番「英雄」、先ほどの交響曲第1番とは打って変わり全体的に推進力も増した躍動感あふれる演奏となる。ベートーヴェンの交響曲の中でも「第九」の次に長い演奏時間となるこの曲、朝比奈隆の演奏では1時間を超えるものとなっていたが、ヴァントの「英雄」はそうなることはない。高いバランス能力と強すぎることなく程よい強さでの演奏。細かいダイナミクスの変化やテンポチェンジなど魅力的な箇所は多く存在するといえる。ここのところ様々な「英雄」を聴くが、そのたびに決定盤が変化している気がする。往年の時代にあった名盤も良いが、今回のようなライヴによる名演も引けを取っていないことを改めて感じさせられた。

 交響曲第4番、普段はこの曲自体あまり演奏されることがないマイナーな交響曲として扱われるこの曲だが、ヴァントの手によって名演へと生まれ変わる。キレ味もよくサウンドの作りも先ほどの2曲とはまた違うものだが、思わず聴き入ってしまう凄みがこの演奏にはある。セッション録音でも素晴らしい演奏はあるが、やはりライヴ録音には敵わない。今回の演奏ではそれがよくわかると思う。

 「コリオラン」序曲と「エグモント」序曲は比較的ベートーヴェンが作り上げた序曲の中でも人気のある作品。特に「エグモント」に関しては一番人気とも言える。交響曲3種類を聴き終えた後に聴くためどこかアンコールのようにも感じられるが、当盤の締めくくりにふさわしいトラック順になっている。ここまで述べた良さが凝縮されそれをここで楽しむことができる。

 「ヴァント不滅の名盤シリーズ」は現在発売されていないが、一つ一つの演奏はとても素晴らしい。ブルックナーも収録されているので聴きごたえがある。前回取り上げた第2弾から随分と時間が経ってから今回第3弾を取り上げたが今後は定期的に「ヴァント不滅の名盤シリーズ」を取り上げていきたいと思っている。すでに廃盤にもなりそうな勢いだが、気になった方は早めに購入していただければと思う。