みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは最近発売されて話題を呼んだクレンペラー最後のマーラー交響曲第9番を取り上げていきます。クレンペラーは晩年交響曲第9番をニュー・フィルハーモニア管、ウィーンフィルとそれぞれ録音していました。そして今回エルサレム交響楽団とのライヴがここに蘇ります。海賊盤がこれまで知られていましたが、音質があまり良くなかったという点もあります。そのため今回、マーラーファンの方々にとっては待望の発売だったかもしれません。様々な工夫がされ尽くされた極上のマーラー9番をみていきましょう。
「オットー・クレンペラー指揮/エルサレム交響楽団」
マーラー作曲:
交響曲第9番
多くの巨匠的指揮者が晩年になるとこの曲を取り上げてきた、バーンスタイン、ワルター、カラヤン、バルビローリ、そしてクレンペラーが該当することだろう。近年ではそういったこともあまりなく、マーラーの交響曲の中でも重厚的でより深いテーマを持った作品として演奏される形が取られることが多くなってきた。今回の9番はマーラーが完成させた最後の交響曲であり、その曲の姿としては「死」に関する点が非常に多いようにも感じられる。今回の録音は1970年にライヴ録音している。ニュー・フィルハーモニア管とは1967年に、ウィーンフィルとは1968年にそれぞれ録音した。
今回の演奏はヴァイオリンを両翼に配置し、低弦は左側に配置と古典的な配置での演奏となっているためこれまでの同曲の演奏とはまた違う観点で曲を楽しむことができるようになっている。まず第1楽章、テンポも非常に遅く演奏時間に30分を要しているが、これから始まる壮大な交響曲を予感させる仕掛けを感じさせる。ライヴ録音ということもあるのだろう、各楽器の音には存在感がある。個人的に一番耳に残ったのはチャイムの音で、芯があり教会で聴いているかのような気持ちにもなるが、どこか不気味な印象を受けた。今回の演奏は、マーラーとも親交があったクレンペラーがマーラーに対して最後に宛てた手紙という意味合いも取れるかもしれない。
第2楽章、ゆったりとしたテンポながらどこか安らぎがある感じが伝わってくる。牧歌的とまではいかないが、不気味な優しさとでも言おうか。テンポ変化はここでもあまりなく、変化したとしても少しだけである。オーケストラの技術的にはもう一声欲しい部分もあるが、そういった面がこの曲に対して立ち向かう精神的な偉大さを感じさせるので面白い。最後にあるファゴットの音が非常に生々しく聴こえてくるところや今まで気づかなかったであろう箇所がどんどん出てくるのでぜひスコアを持っている方はスコアを見ながら聴いていただきたい。
第3楽章、通常この楽章は比較的推進力が感じられ、どんどん進んでいくため全く止まることがないような印象があったが今回は非常に安全運転な気持ちもする。途中テンポの変化はあるものの、基本的には一定のテンポで演奏されている。途中演奏がズレてしまうなどの綻びもあるものの、そういった面もマーラーの「混沌」というイメージに当てはまり面白い。最後の追い込みは非常に危機迫る様子が反映されておりこの後の第4楽章をより引き立てていることは間違いない。
そしてこの曲の中で最も禍々しく、美しい楽章がきた。第4楽章である。長かった第1楽章に比べるとこの第4楽章ではこれといって長いわけではない。ただ通常時とは違うオーケストラ配置ということもあり、全く聴いたことがないような音響効果をもたらしている。個人的な話だが、今回においてマーラーの交響曲の中でも一番有名であり人気のあるのは交響曲第5番だが、それ以上に曲として、人間の本質を知ることができるのは交響曲第9番しかないと私は感じている。最初にあげた巨匠たちもそうだし、この曲を取り上げた際はどこか一つの終わりをイメージ付ける。「死」に最も近いというこの曲だからこそそれは感じ取れるのだろう。そして、その本質を今回の演奏でも体感することができる。クレンペラーにとっても最後のマーラー9番であるこの曲、クレンペラーが全身全霊をかけてこの曲にかけたことが音を通して伝わってくる。楽器ごとの音程も若干ズレているようなのかその不協な感覚もより曲をひきたてている。
今回これに合わせてウィーンフィルとの同曲も購入している。こちらもまた後日ゆっくり聴いてご紹介したいと思っている。さて、今回の演奏を含めてもう少しで所有数が600種類になりつつあるマーラーの交響曲。今後も引き続き集めていくことは変わりないし、もっと良いものを見つけていけたら幸いだ。目指すところはあくまでも1000種類。これが終わったら次はストラヴィンスキーの「春の祭典」あたりを収集しようと思う。