クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。


尚美学園大学/芸術情報学部/音楽表現学科/音楽メディアコース卒業、トランペット、作曲、編曲、DTM


 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、ミッシャ・マイスキーがNHK交響楽団と共演した際のハイドンチェロ協奏曲第1番、ドヴォルザークチェロ協奏曲ロ短調、バッハ無伴奏チェロ組曲第5番よりサラバンドです。マイスキーが40歳の時にライヴ録音された貴重なCDで、ハイドンはフェルディナント・ライトナー、ドヴォルザークはオトマール・スウィトナーがそれぞれ指揮をしています。UHQCDで聴くマイスキーとN響の素晴らしい名演をみていきましょう。


「ミッシャ・マイスキー(チェロ)、フェルディナント・ライトナー指揮/NHK交響楽団」

ハイドン作曲:
チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.Vllb-1


「ミッシャ・マイスキー(チェロ)、オトマール・スウィトナー指揮/NHK交響楽団」

ドヴォルザーク作曲:
チェロ協奏曲 ロ短調作品104


「ミッシャ・マイスキー(チェロ)」

バッハ作曲:
無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV.1011よりサラバンド



 旧ソ連出身のミッシャ・マイスキーが40歳の時に来日した際のライヴ演奏。当盤の存在はN響のライヴCDを集めはじめて割とすぐの段階で存在を認識していたが、なぜかすぐに購入しなかった。普段あまり聴くことのないチェロ協奏曲ということもあったのだろう。しかし、その演奏を聴いてみると想像している以上に素晴らしいチェロの演奏を聞くことができた。今回はアンコールで演奏されたバッハも収録されている。


・ハイドン:チェロ協奏曲第1番

録音:1986年5月14日(ライヴ)

 繊細に描かれながらもテンポの緩急が明確になっている。各楽章ごとにたっぷりと歌っている場面やキレ味のある場面もあったりと、交互に演奏されていることもあって近年のハイドン演奏とは違う面白さに満ちた演奏というように聴こえるかもしれない。どっしりとした安定感のあるN響のサウンドによって、マイスキーの自由なチェロ演奏が功を奏する形となっているのだろう。特に第3楽章のスピーディかつ快調なテンポで進められていくエネルギーには圧倒させられるものがある。


・ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調

録音:1988年3月16日(ライヴ)

 圧倒的に分厚く太い芯のある音色を奏でるマイスキーによるチェロの演奏がN響と見事にマッチしており、これまでに聴いたことがないくらいの美しさを全楽章から通して聴くことができる。今まで何気なく聴いていたこの曲に対する概念を覆すような圧巻の名演である。高音質盤であることもあって、その強烈なサウンドがたっぷりと歌われていることに関しても多くの人々の心を掴むだろう。マイスキーの存在は以前より知ってはいたが、ここまで引き寄せられる演奏を聴くことができるとは思いもしなかった。


・バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番よりサラバンド

録音:1988年3月16日(ライヴ)

 ドヴォルザークのチェロコンを聴いた後に聴くからこその奥深い音色と重厚的なアプローチが非常に功を奏する演奏となっている。約5分間による演奏は、たっぷりと歌い上げられ、濃厚かつ骨太なサウンドからなるバッハの無伴奏チェロ組曲よりサラバンドを聴くことができる。まさにアンコールにふさわしい演奏である。


 聴き終えてすぐに思ったのは、なぜこれほどに素晴らしい名演を聴くことができたライヴCDをすぐに購入しなかったのか。繰り返し聴きたくなる素晴らしい演奏を楽しむことができた。マイスキーの録音を聴いたのは今回が初だったので、この他にどのような演奏が行われているのか、気になるので探していきたい。そして、N響ライヴCDも着々と集めることができている。ずっと気になっていたCDも購入することができたので、近いうちに取り上げたいと思う。


https://tower.jp/item/3186177











 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、ジャン・マルティノン&NHK交響楽団によるチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」です。マルティノンによるチャイコフスキーの「悲愴」といえば、タワーレコード限定でSACDハイブリッド仕様にもなった1957年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏が懐かしい。あの演奏は確かに大きな衝撃を受けた。それがN響とのライヴ録音で蘇ります。


「ジャン・マルティノン指揮/NHK交響楽団」

チャイコフスキー作曲:
交響曲第6番 ロ短調作品74「悲愴」

ドビュッシー作曲:
牧神の午後への前奏曲



 マルティノン&N響による「N響伝説のライヴ!」シリーズは当盤含めて4種類存在しているが、今回取り上げるチャイコフスキーの「悲愴」とドビュッシーの「牧神」を購入することができたことによって、見事コンプリートしたことになる。その後発売されたCDについてはまだ購入できていないCDがあるので、これに関してはまた探していきたいと思う。


・チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

録音:1963年5月3日(ライヴ)

 録音状態として、多少の歪みが第1楽章冒頭より聴くことができるようになってはいるものの、演奏が進んでいくとほとんどなくなり気にならなくなる。N響のチャイコフスキー「悲愴」はデュトワや岩城さんをはじめとして多くの演奏をこれまでに聴いてきたが、その中でも一番コンパクトな印象を受ける演奏だったかもしれない。響きがそこまでないのは録音状態の関係もあるのだろうが、オーケストラ全体をよく見渡すことができる世界観と透明度の高さ、アンサンブルの素晴らしさが光っている。何よりも色彩的な音色によって演奏が行われているので、パワー型ではないにしても非常に面白いサウンドだった。テンポの緩急からなるキレ味はそこまでなく、明瞭な美しさを持って楽しむことができたと言えるだろう。


・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

録音:1963年5月11日(ライヴ)

 先ほどの「悲愴」と比較すると、ダイナミック・レンジの幅広さやスケール感が非常に功を奏する世界観となっている。明らかにチャイコフスキーよりも大きな感動が味わえると言っても過言ではない濃厚さがあり、マルティノンが得意としているフランス音楽の世界観をそのまま味わうことができるのは非常に嬉しい。弦楽器の伸びやかで美しさ溢れる濃厚な音色は抜群によく、テンポの緩急や揺らぎによる細かな変化も見逃さないような展開には思わず鳥肌が立ってしまう。


 マルティノンの十八番であるフランス音楽で締めくくることができる当盤。チャイコフスキーの「悲愴」を聴いた後に油断していると、ドビュッシーの「牧神」で大きな衝撃を受けることとなる名演で非常に素晴らしい演奏となっていた。これに関しては繰り返し聴きたくなる素晴らしいCDとなっているので、稀少盤として扱われる理由もよくわかる。マルティノンによる「N響伝説のライヴ!」シリーズもここで一旦振り返ってみるのも良いかもしれない。


https://tower.jp/item/1645448












 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、アンドレ・プレヴィン&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」組曲、「インテルメッツォ」からの4つの交響的間奏曲、「カプリッチョ」より序奏、月の光の音楽、「サロメ」より7つのヴェールの踊りです。プレヴィンはいくつかのレーベルでリヒャルト・シュトラウス作品を録音していますが、今回取り上げるのはオペラ作品からなる曲をまとめた名盤となっています。


「アンドレ・プレヴィン指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

リヒャルト・シュトラウス作曲:
「ばらの騎士」作品59より組曲

「インテルメッツォ」作品72より4つの交響的間奏曲

「カプリッチョ」作品85より序奏、月の光の音楽

「サロメ」作品54よりサロメの踊り(7つのヴェールの踊り)



 プレヴィンはいくつかのレーベルでリヒャルト・シュトラウス作品の録音を残している。それらが現在頻繁に復刻されているのかと問われるとそうではないかもしれないが、他の演奏では聴くことのできないようなユーモアに満ち溢れた面白い演奏を聴くことができる。その筆頭が今回取り上げる「ばらの騎士」、「インテルメッツォ」、「カプリッチョ」、「サロメ」を収録したオペラからの管弦楽曲集である。


・リヒャルト・シュトラウス:「ばらの騎士」組曲

録音:1992年10月

 ここまで理想的な音色と響きによって演奏が行われた「ばらの騎士」が今まであっただろうか。弦楽器を中心として気品のある美しさと輝かしい音色の良さが見事に作品とマッチしている。終結部においても駆け抜けていく、ノンストップのような面白さもありつつ、たっぷりと歌い上げる伸びやかな演奏を聴くことができる場面もある。プレヴィンならではのアプローチが光るエンターテイメントに満ちた「ばらの騎士」組曲である。オペラ本編を改めて聴き直したくなるような面白さがあった。


・「インテルメッツォ」から4つの交響的間奏曲

録音:1992年10月

 「ばらの騎士」の後に収録されていることでこれが大きな意味の一つになる今回の曲。ウィーン・フィルの弦楽器による伸びやかでまとまりある美しい音色と響きが想像を絶するような広大なるスケールと木管楽器、ホルンなどとの相性の良さを魅せつけてくれる。各曲ごとの特徴からなるテンポの緩急、たっぷりと奏でられる濃厚な演奏には聴き入ってしまう。


・「カプリッチョ」より序奏、月の光の音楽

録音:1992年10月

 プレヴィンの息遣い?も聴こえるほどに躍動的なテンポの緩急を弦楽器による演奏から聴くことのできる演奏となっており、弦楽六重奏→オーケストラという面白さもあるため、抜粋とはいえこだわりも感じられる。弦楽六重奏による「序奏」だけでも非常に聴きごたえのある演奏となっており、高いアンサンブルからなる細部まで聴き込みやすい弦楽器による音色の良さが功を奏している。「月の光の音楽」が始まるとオーケストラへと編成は拡大され、穏やかかつ伸びやかな「序奏」で展開されたアンサンブルの音色はそのまま引き継がれている。ホルンの音色は何よりも心地良いので聴いているだけで聴き惚れてしまうだろう。


・「サロメ」より7つのヴェールの踊り

録音:1992年10月

 ここまでたっぷりとテンポを引き伸ばしたりと、伸びやかなるスケールからなる音楽がほとんどだったが、最後に収録されている「サロメの7つのヴェールの踊り」では躍動感からなるテンポの緩急が魅力的な印象を与えてくれる。特に弦楽器の音色のまとまりと、くもりのないサウンドがやはり魅力的である。キレ味の良さも金管楽器、弦楽器共に非常に優れており、細かいダイナミクス変化に関してもテンポの緩急含めて演奏を聴くことができるようになっている。終盤における駆け抜けるかのような歯切れ良さを彩る打楽器演奏にも注目したい。特にタンバリン、スネアドラム、シロフォンの音は非常に魅力的だ。


 プレヴィン&ウィーン・フィルによるリヒャルト・シュトラウス作品はあまりイメージがなかった分、演奏を聴くことができて非常に満足するような名盤だったのは間違いない。どの曲に関しても個性的でじっくりと聴きたくなるような個性的な世界観が展開されていて聴きやすかった。他の録音についてはまた取り上げるかは検討するが、積極的に聴いてみたいと思う。


https://tower.jp/item/5491474












 みなさんこんにちは😃本日12月11日は、エクトル・ベルリオーズの誕生日です。今年で生誕222年になります。そんな本日ご紹介していくのは、ベルリオーズの代表作品である「幻想交響曲」です。演奏されるスタイルも古楽奏法の登場で激変しましたが、今回取り上げる名盤はヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏です。1970年代に録音された非常に素晴らしいカラヤンの「幻想交響曲」をみていきます。


「ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベルリオーズ作曲:
幻想交響曲 作品14



 ベルリオーズはフランスを代表とする作曲家で、その多彩なオーケストレーションは多くの作品を生み出し、多くの人々を魅了した。今回取り上げていくのはそんなベルリオーズの代表作品でもある「幻想交響曲」。近年古楽奏法や室内楽編成による演奏や第4楽章のリピート演奏など、往年の時代における演奏とはまた違うアプローチからなる「幻想交響曲」を聴くことができるようになっているが、 今回は絶頂期におけるカラヤン&ベルリン・フィルの演奏、これは注目したい。


・ベルリオーズ:幻想交響曲

録音:1974年10月、1975年2月

 カラヤンは「幻想交響曲」を3回録音している。今回はその中でも一番最後に録音された演奏だ。まだ1,2回目の録音についてはまだ聴くことができていないので、これはまた後日取り上げられたらと考えている。


 今回の演奏、想像している以上に濃厚かつ分厚いスケールからなる美しいベルリン・フィルの弦楽器による演奏を聴くことができる。特に第3楽章におけるどっしりとしたやや重めのテンポからなる弦楽器の重厚的なサウンドによる演奏、木管楽器によるどこか儚げに演奏されているのが非常に聴きごたえのある展開と言えるだろう。何よりダイナミック・レンジの幅広さが功を奏する演奏によって、ベルリン・フィルならではの美しいスケール感が抜群に聴きごたえのある演奏を聴くことができる。第1楽章、第2楽章は夢のあるキラキラとした理想を描いたような遊び心溢れ、第4楽章以降も怒涛の音の波が演奏から通して聴くことができるようになっており、第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」含めてダイナミック・レンジの幅広さがある中で演奏が展開されているため、強烈なサウンドを味わうことができるようになっている。また、途中に聴こえる鐘の音に関してもやや遠くから聴こえるように、どこか不気味さを感じ取ることのできるような荘厳的な印象を受けた。


 ここ1週間ほどカラヤンによる名盤を片っ端から聴いているが、今回の「幻想交響曲」も白熱するような面白い演奏となっていた。この調子で1,2回目における録音も後日聴き、演奏を楽しみたいと思う。また、ベルリオーズでいえばインバル&フランクフルト放送響による管弦楽曲集をまだ聴くことができていないので、これに関しても時間がある時に取り上げられればと考えている。


https://tower.jp/item/4416459












 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、アンドレア・バッティストーニ&東京フィルハーモニー交響楽団によるマーラー交響曲第7番「夜の歌」です。これまでにも何種類かマーラーの交響曲は定期演奏会でも取り上げていた両者ですが、ここで交響曲第7番が発売されるとは思いもしませんでした。バッティストーニによるマーラーは毎回ハズレがないので、今回も期待して取り上げていきます。


「アンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団」

マーラー作曲:
交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」



 演奏当時は満席、かつ演奏が終わった直後に長いスタンディング・オベーションが巻き起こった名演であるバッティストーニ&東フィルによるマーラー交響曲第7番がついにCD化された。Apple Music Classicalでもハイレゾロスレスでリリースされており、UHQCD仕様の高音質盤で聴くことができるのは非常に嬉しい。バッティストーニ自身、「この曲にはずっと恋をしてきた作品」と述べており、演奏機会は少ないものの、それまでのマーラーのスタイルの集大成といえる傑作であるともバッティストーニは語っている。実際問題、近年この曲に対する再評価があり、演奏や録音数も以前より格段に増えている。


・マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

録音:2024年11月19日(ライヴ)

 各楽章ごとにテンポの緩急からなる細かい変化もさることながら、非常に強烈なサウンドを演奏から通して聴くことができたようにも感じられる。特にクレッシェンドからの盛り上がりや、楽章間の「緩→急」へと向かっていく瞬間のエネルギーなどが該当する。特に全楽章としてホルンを筆頭とする金管楽器の音が少々音割れとはいかないが、ハリの強さであったり音圧が見事にプレスしている印象もあるためそれが気になる。ただ、オーケストラ全体としてはまとまりあった音色と濃厚さの強い奥深めなサウンドを聴くことができるとなっているので、バッティストーニの強いこだわりも含めて体現されているのがよくわかる。テンポも過去の「巨人」などと比較すると意外にも冷静に思えるアプローチとなっており、長年演奏を共にしてきた両者の傑作的名演であることは演奏から聴いているだけで理解できるだろう。


 バッティストーニ&東フィルによる演奏はどれもハズレがなく毎回驚かされる名演ばかりである。今回取り上げたマーラーの「夜の歌」についても非常に素晴らしい仕上がりだった。現在までにCD化されたマーラーは何種類か存在しているので、このまま全集を作ってほしいくらいなのだが、これに関してはどうなるかわからないので続報を待ちたい。もちろんマーラー以外の曲についてもCD化されるのは嬉しいので、一つでも多く発売されることを願いたい。


https://tower.jp/item/7057077












 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、ウラディーミル・アシュケナージ&ベルリン・ドイツ交響楽団によるストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」、バレエ・カンタータ「結婚」です。何回か「春の祭典」を録音しているアシュケナージによるストラヴィンスキー・チクルスの一つとなっています。シャープさと骨太なサウンドを交互に味わうことのできる名盤を取り上げていきます。


「ウラディーミル・アシュケナージ指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団」

ストラヴィンスキー作曲:
バレエ音楽「春の祭典」

バレエ・カンタータ「結婚」



 アシュケナージによるストラヴィンスキー作品は何種類か録音が残されており、今回取り上げていくのは「春の祭典」と「結婚」。「春の祭典」に関しては後にアイスランド交響楽団との演奏が「Exton」から発売されている。これはまた後日取り上げるとして、ベルリン・ドイツ交響楽団とのストラヴィンスキーということで、聴く前から大きな期待しかないのは多くの方がわかると思う。


・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

録音:1985年11月

 分厚いスケール感と重厚的なサウンドを軸としたインパクトのある演奏が凄まじい。一音一音明確に演奏されており、ここまで歯切れの良さや細かい打点を聴くことができた演奏は類を見ないくらいである。各楽器ごとに群となった音の塊になっているわけではなく、それぞれの良さを一つにまとめていることでより聴きやすさが増した「春の祭典」とも言えるかもしれない。音の止めやそこから放たれた瞬間のスピードも強烈だ。特に「緩→急」へと向かう瞬発力は非常に凄まじい。


・バレエ・カンタータ「結婚」

録音:1994年3月

 打楽器と合唱による混沌とした世界観が大きなアクセントとも言える「結婚」。複雑なリズムからなる大音響の連続に聴き手によっては戸惑ってしまうかもしれないが、非常に面白い響きや打撃を聴くことができる。「春の祭典」で聴くことができたテンポの緩急からなるキレ味やインパクトの強い演奏は最初から最後までノンストップで描かれているのが非常に面白い。


 分厚いオーケストラサウンドが非常に功を奏する形となったベルリン・ドイツ交響楽団との「春の祭典」と「結婚」。アシュケナージによる演奏の中でも比較的にシャープさよりも芯のある分厚いスケールからなる演奏が中心となったオーケストラ・サウンドだったようにも思える。特に「結婚」に関しては楽しめる要素が多かったので、繰り返し聴きたいと思うほどの名盤である。


https://tower.jp/item/557295












 みなさんこんにちは😃本日12月8日はジャン・シベリウスの誕生日です。そんな本日ご紹介していくのは、シベリウスの交響曲全集の中でも特に有名な名盤であるロリン・マゼール&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏を取り上げていきます。管弦楽曲ではカレリア組曲、交響詩「タピオラ」も収録されています。ブルーレイ・オーディオで聴くこともできる高音質盤によるマゼールのシベリウスをみていきましょう。


「ロリン・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」

シベリウス作曲:
交響曲第1番 ホ短調作品39

交響曲第2番 ニ長調作品43

交響曲第3番 ハ長調作品52

交響曲第4番 イ短調作品63

交響曲第5番 変ホ長調作品82

交響曲第6番 ニ短調作品104

交響曲第7番 ハ長調作品105

カレリア組曲 作品11

交響詩「タピオラ」作品112



 シベリウスは1865年12月8日にフィンランド大公国のハメーンリンナに生まれた。交響曲と交響詩を多く作曲し、中でも今回は収録されていないが交響詩「フィンランディア」が特に知られている。シベリウスの交響曲全集はまだ1962年に渡邉暁雄&日本フィルによるものが世界初録音されたばかりで、マゼール&ウィーン・フィルによる全集はそれに次ぐ形で録音された。どちらも今日において非常に重要な役割を担う名盤であることは間違いない。


・シベリウス:交響曲第1番

録音:1963年9月16〜20日

 以前エソテリック盤となっていたことで事前に聴いていた交響曲第1番。今回は通常CDのためSACDハイブリッド盤ではないのだが、圧倒的なまでのダイナミック・レンジの幅広さには驚かされると同時に大きな感動が味わえた。金管楽器の咆哮、弦楽器による俊敏かつキレ味のあるサウンド、後のマゼールでは聴くことのできない躍動的かつ強烈なアプローチからなるテンポの緩急が功を奏した演奏は非常に素晴らしい。クレッシェンドによってオーケストラ全体が盛り上がった瞬間における音楽の頂点たる美しさとかっこよさは、聴いているだけで誰もがしびれてしまうに違いない。


・交響曲第2番

録音:1964年6月

 鮮明かつ壮大なるスケールからなる演奏を聴くことができるようになっている交響曲第2番で、弦楽器の音色と響きが特に美しい。また、テンポの緩急からなる細かいダイナミクス変化が各楽章ごとに細かく演奏されていることによって、「緩→急」や「急→緩」の変化も楽しめるようになっている。特に第3楽章をはじめとするテンポの速い楽章では、鋭いキレ味が聴きどころであると言える。第4楽章が始まった瞬間の音が広がる瞬間も非常に素晴らしく、やはり弦楽器群による土台も含めて楽しめる演奏であることは間違いない。


・交響曲第3番

録音:1968年3月

 軽快かつ親しみやすい音色によって演奏されている弦楽器のサウンド、木管楽器の透き通るように美しさ溢れる美しい音色を聴くことができた。全楽章共通して明るさに満ちた美しいサウンドによる伸びやかな演奏が功を奏する形となっていた。ある意味ウィーン・フィルによる演奏としてもぴたりと当てはまるものがあったと言えるだろう。重々しいアプローチではなく、みずみずしく美しい音色が一貫して演奏されていたので聴きやすかった。


・交響曲第4番

録音:1968年3月20日、4月16日

 作品全体として、弦楽器群が軸となって演奏が進行していく。「暗→明」という構成になっていることもあって聴きやすい形になっている。また、ダイナミック・レンジの幅広さとリマスタリングによるバランスのいい配置の影響か、オーケストラ全体を見渡すことができるようにもなっているのは大きなポイントともいえる。何より第4楽章で演奏されるグロッケンの音が歯切れ良さと快活さを物語るような美しさがあったので、煌びやかで非常によかった。


・交響曲第5番

録音:1966年3月

 全3楽章からなる交響曲のため、気づいた時には第3楽章となってしまっているかもしれないが、映画音楽を聴いているかのような広大なるスケール感と、各楽器ごとに細かく演奏が行われており、一音一音骨太な演奏を聴くことができるようになっている。終始明るいサウンドで鮮明な演奏を聴くことができるため、透き通るような美しさ溢れる音色をたっぷりと聴くことができるのは非常に心地が良い。終盤における金管楽器の音色は特に感動的なので、ぜひ注目して聴いて欲しい。


・交響曲第6番

録音:1968年3月

 これまでに聴いてきたどの演奏も弦楽器を主体とした透明度の高い美しさに特化した演奏が多かった。今回の演奏はどうだろう。全楽章共通してテンポの緩急が非常に明確で、前向きかつ瞬発力がある。過去に聴いたことがないほどに速いテンポによって演奏が行われている。弦楽器主体であることは変わらないのだが、「緩→急」へと向かっていくノンストップ的な感覚が恐ろしいくらいに強烈なインパクトを生み出されている。特に第3楽章、第4楽章に関しては音の洪水のように止めどなく音が流れ込んでくる。今回の交響曲全集の中で間違いなく一番度肝を抜かされた演奏だった。美しいよりもかっこいいが勝つとは誰が予想しただろう。


・交響曲第7番

録音:1966年2月15〜28日

 単一楽章による演奏のため、他の交響曲と比べても演奏時間は短い。しかし、その約20分という時間の中にあるのは、壮大かつスリリングさを味わえるような強烈な演奏を聴くことができる。弦楽器を中心として演奏されているのは交響曲第6番同様ではあるが、高音の伸びや木管楽器と弦楽器の息ぴったり感は交響曲第6番に引けを取らないほどの音の流れを聴くことができる。音色や響きとしてもウィーン・フィルが演奏しているということが演奏にも大きな効果をもたらしているのがよくわかる。くもりや迷いが演奏からは感じられない。今まで大きく注目していなかったこの曲の違う姿を知ることができて、今非常に満足している。


・カレリア組曲

録音:1963年3月27,28日

 軽やかで親しみやすい描写が各曲ごとに楽しめる「カレリア」組曲。打楽器と金管楽器の歯切れ良いサウンドの相性が抜群となっており、聴きごたえとしても充分に楽しめる演奏となっている。「急→緩→急」のシンプルな構成でありながらそれぞれの曲の特徴、楽器が得意とする音色の良さを楽しめる。


・交響詩「タピオラ」

録音:1968年3月20日、4月16日

 終始暗い構成かつ弦楽器のうなるような演奏が引きつける世界観となっているが、交響曲第7番を聴いた直前くらいに聴いてみると現代的な要素も含まれた面白さがあるため、聴いていて非常に面白い作品となっている。ただ美しいだけではなく、冷徹な麺も兼ね備えた響き。これはウィーン・フィルの独特な音色だからこそ奏でることのできるバランスの良いダイナミクスであると考えられる。これを聴き終えた瞬間に、今回の交響曲全集は非常に素晴らしい名盤だった。


 さて、これまでに聴いてきたどのシベリウス交響曲全集とも違う非常に面白い演奏と世界観を楽しむことができた演奏だったのは間違いない。それが1960年代に録音されていたと考えると衝撃を受ける。マゼールは後にバイエルン放送交響楽団とも同じようにシベリウス交響曲全集を録音しているが、そちらはどのような演奏となっているのか?これはまた後日取り上げたい。ひとまず今日12月8日はシベリウス作品を聴きながら一日を過ごしたいと思う。


https://tower.jp/item/4015616











 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは、マリス・ヤンソンス&ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるショスタコーヴィチ交響曲第10番です。ヤンソンスの得意としたレパートリーであるショスタコーヴィチの交響曲。以前バイエルン放送交響楽団と録音した演奏を取り上げていますが、今回はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのライヴ録音。SACDハイブリッド盤で楽しむことのできる高音質仕様の素晴らしいショスタコーヴィチの交響曲第10番を取り上げていきます。


「マリス・ヤンソンス指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」

ショスタコーヴィチ作曲:
交響曲第10番 ホ短調作品93



 ヤンソンスの十八番であるショスタコーヴィチ。交響曲第10番を今回は取り上げていくが、フィラデルフィア管弦楽団との1994年録音、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との2009年録音、バイエルン放送交響楽団との2010年録音の3種類が存在している。バイエルン放送響との録音は以前取り上げているが、今回の録音はその1年前に当たるライヴ録音。どのような演奏となっているのか?


・ショスタコーヴィチ:交響曲第10番

録音:2009年1月29日、2月1、4日(ライヴ)

 非常に安定感のあるどっぷりとした演奏に驚かされるショスタコーヴィチ演奏となっている。ヤンソンスはこの曲を何種類か録音しているが、その中でもSACDハイブリッド仕様の高音質盤で聴くことができるようになっている当盤は比較的に人気がある印象である。ダイナミック・レンジの幅広さによって想像している以上に分厚いスケールからなる濃厚さと弦楽器群によるどっしりとしたサウンドが非常に功を奏する演奏となっている。第2楽章や第4楽章終盤における激しさと歯切れの良さが交差する瞬間のパワフルさも聴きごたえのある場面ではあるが、それよりも弦楽器や木管楽器によって演奏される静寂さを感じさせる第1楽章や第3楽章などが特に聴きやすい。全楽章通して作品の存在を明確としている演奏であることは間違いない。


 音質の良さと交響曲第5番と同じように聴くことのできる安定感ある演奏が非常に功を奏する演奏となっていた交響曲第10番。これに関してはまたゆっくりとした時にじっくりと繰り返し聴きたいと思えるような壮大なる交響曲としての姿がヤンソンスによる指揮と、コンセルトヘボウ管による演奏で楽しむことができた。両者による演奏はこれまでも何種類か聴いているが、どれもハズレがないので今後も語り継ぐ名演として記憶していきたい。


https://tower.jp/item/3279200




 みなさんこんにちは😃先日今話題の映画である細田守監督最新作、「果てしなきスカーレット」を見てきました。Xでは公開当初から酷評の嵐でしたが、本当にそうなのか?と気になっていたのとよく考えたら細田守監督作品を映画館で見たことがなかったので、「このタイミングで見に行ってみよう!」という気持ちで見に行くことにしました。すると意外な結果に思わず…

 今回は映画の感想とApple Musicにて聴くのとのできるサウンド・トラックを取り上げていきたいと思います。


〜果てしなきスカーレット〜




 「果てしなきスカーレット」は11月21日に公開されたスタジオ地図、細田守監督作品。細田守監督といえば「サマーウォーズ」や「おおかみこどもの雨と雪」など有名な作品が多数ある。かつて日本テレビの看板を背負っていたスタジオジブリも今は何年も映画が作られていないが、その次に白羽の矢が立ったのがスタジオ地図、細田守監督と言えるかもしれない。映画が始まる際「日本テレビ」のロゴが登場していた。また、金曜ロードショーでも4週連続して細田守監督の過去作品が放送されるほどである。そんな映画本編はどうだったのか?まずは配役を見ていきたい。



・スカーレット:芦田愛菜

・聖:岡田将生

・アムレット:市村正親

・クローディアス:役所広司

・ガートルード:斉藤由貴

・ポローニアス:山路和弘

・レアティーズ:柄本時生

・ヴォルティマンド:吉田鋼太郎

・コーネリウス:松重豊

・ローゼンクランツ:青木崇高

・ギルデンスターン:染谷将太

・少女:白山乃愛

・老婆:白石加代子

・墓掘り人:宮野真守

・墓掘り人:津田健次郎



 錚々たる面々が揃っている映画は過去にあっただろうか?



 物語は中世の時代、スカーレットの父アムレットが叔父にあたるクローディアスに濡れ衣を着せられ処刑されてしまう。それに怒り、父の仇と復讐を誓うがそれを果たすことができず、スカーレットは逆に殺されてしまう。「死者の世界」で目を覚まし、クローディアスがまだこの地にいるということを知ったスカーレットは再び復讐のために立ち上がる。その道中、現代日本人の看護師である聖と出会って…


 「果てしなきスカーレット」の元ネタの一つとして、シェイクスピアの「ハムレット」が上がる。こちらも復讐劇になっており、ダンテの「神曲」もモチーフの一つになっている。「ハムレット」からは王が王子(ハムレット)に対して、「許すな」という言葉が使われているが今作では「許せ」となっている。また、スカーレットの名前もハムレットから取られている。ダンテの「神曲」からは、「死者の世界を旅する」という点が今作に引用された。


 正直な感想を先に述べると、面白かった。もっといえばチェンソーマンのレゼ編よりも独創性に溢れていたと思う。チェンソーマンに関しては漫画をアニメ化しただけなので、大きな衝撃はそれほどなかった。何よりも映像が綺麗で、死後の世界の映像美には映画館の大スクリーンで見るからこその良さがあった。龍の姿もまるで特撮を見ているかのようなリアルさがあり、雷が落ちた瞬間の描写など素晴らしいシーンばかりだった。また、映像の対比として、スカーレットや聖の生前はイラストレーションによるアニメ、死者の世界に関しては3Dアニメーションという構図がされていた。この変化も面白かった。


 酷評された部分で多く書かれていたのは「叫ぶ要素が多い」、「脚本が悪い」という点。これまでの「サマーウォーズ」などと比べると確かに苦しむ場面や戦闘シーンの多さによって泣いている、怒っているなど感情があらわになっているシーンが多かった。演じている俳優の方々も多忙な中収録に望んだことも影響の一つと言えるかもしれない。また、渋谷のダンスシーンが、「まるでインド映画のようだった。」という指摘についても確かに唐突ではあったが、聖が歌う「祝祭の歌」を聴いたスカーレットが知ったもう一つの可能性の世界を知る瞬間と考えれば唐突ではあるが不思議には思わない。


 ではなぜここまで酷評されたのか?何十年も前は「アニメはオタクが見るもの。」という印象が強かった。それが、「鬼滅の刃」や「ONE PIECE」、「SPY×FAMILY」などをはじめとしたアニメによって、コアなオタク以外でもより見る頻度が上がったことによる多様な解釈が増えた。その分、王道展開を臨む人も増えたのだろう。ある意味先の読めないオリジナルの作品は「見づらい、つまらない」という解釈に繋がるのかもしれない。しかし、映画本編としてはきっちり伏線回収されているので、確かに唐突なシーンもあったかもしれないが見れないほどではなかった。


 サウンドトラックには劇中に使用された音楽が収録されており、聴いているだけで映画を見ているかのような感覚になる。特にノイズキャンセリングイヤホンやヘッドホンで試聴した際は非常に素晴らしい。聴いている時に映像がないのが残念になるが、音楽の完成度も良い。映画を見に行くか迷っているのであればあえてサウンドトラックから聴いてみるのも面白いのではないだろうか?


 「果てしなきスカーレット」は公開3日間の興行収入2億1000万円とスタートとしては大きく苦戦してしまった。ただ、作品のモチーフなどに多少理解があればより楽しめると思うので、Xなどにおける酷評を鵜呑みにして見るのを止めるということは正直もったいない。実際、映画を見ている時まわりで泣いている人もいたので、これは名作であることも証明されている。かつて、ショスタコーヴィチなどの作品も当局によって批判された作品もいくつかあったが今では盛んに演奏され、聴かれている。すぐには評価に繋がらないとしても、1人でも多く本作の面白さが伝わってくれることを願う。


https://scarlet-movie.jp


https://tower.jp/item/7627476











 みなさんこんにちは😃本日はクリスチャン・マンデアル&クルジュ=ナポカ・フィルハーモニー管弦楽団によるブルックナー交響曲全集の続きになります。3日目となる本日は、交響曲第7番〜第9番の3曲です。個人的に楽しみにしていた交響曲第8番が収録されており、一体どのような素晴らしい演奏を効くことができるようになっているのか。聴く前から楽しみで仕方ありません。



「クリスチャン・マンデアル指揮/クルジュ=ナポカ・フィルハーモニー管弦楽団」

ブルックナー作曲:
交響曲第7番 ホ長調(ノーヴァク版)

交響曲第8番 ハ短調(ノーヴァク版)

交響曲第9番 ニ短調(ノーヴァク版)



 マンデアルによるブルックナー交響曲全集、平均して1時間近くある演奏時間が各9曲で連続するわけだが、正直1曲当たり演奏時間が長いと感じることはそれほどないのが面白い。そして、交響曲第9番を聴き終えた後の天に昇るような美しい感覚は、まさにこの全集を聴き終えた瞬間に味わえる感動的な響であると個人的に感じている。


・ブルックナー:交響曲第7番

録音:1986年6月

 比較的に重々しい重量級の演奏ではなく、テンポの緩急からなる推進力も含めて前向きに聴くことのできる演奏という印象と言える。特に第3楽章、第4楽章のテンポの緩急は非常に素晴らしい。その分第2楽章の深みあるテンポからなる演奏は遅く、重い印象の受けるアプローチであると言えるだろう。金管楽器の音色もキレ味と豊かな美しい響きをしているので、聴いている間の安定感あるサウンドも聴きごたえとしては抜群だ。


・交響曲第8番

録音:1987年6月

 ついに待ち望んだ交響曲第8番、テンポはやはりどっしりとした重みのある演奏となっているが、演奏がそれによってダレたサウンドにはなっておらず、金管楽器や弦楽器をはじめとして一つ一つの楽器が非常に伸びやかな音色と響きによって奏でられている。ダイナミック・レンジの幅広さによるスケールの壮大感も注目したいポイントで、第4楽章の14:20あたりにある二度目のファンファーレは重量感と共に圧倒的なまでの分厚い音圧が展開されており、大きな衝撃を与えてくれる演奏となっている。第2楽章のスケルツォでは、意外にもゆったりとしたテンポによる演奏ながらオーケストラ全体でも明確かつ明瞭なサウンドが展開されており、まとまりやすい音色と響きを聴くことができるようになっている。誰もが求めたであろう理想的なブルックナー像がここにあるのは間違いない。


・交響曲第9番

録音:1988年7月

 まさに期待を裏切らないような安定感と分厚いスケール、音圧からなる重厚的な骨太さが功を奏する演奏となっており、第1楽章冒頭や第2楽章の強烈なトゥッティ、第3楽章における低弦の音色が絶妙なまでに美しい音色を奏でている。あまりに強烈なサウンド故に多少のノイズも演奏から聴くことができるようになっているが、正直それも演奏の一部として楽しめるくらいにオーケストラ全体による演奏は非常に明確かつ濃厚な演奏を聴くことができる。


 マンデアルのブルックナー交響曲全集はこれで聴き終えたが、調べてみるとハレ管弦楽団ともブルックナーを録音しているようだ。交響曲第9番のみだったがこれはまた近いうちに取り上げておきたい。それにしてもこれほど充実したブルックナー演奏は久しぶりだった。これには人気が出るのもうなずける。久しぶりに繰り返し聴きたいと思える全集と巡り会えた気がするので、もう一周くらい聴きたいと思う。


https://tower.jp/item/3229083