みなさんこんにちは😃本日12月8日はジャン・シベリウスの誕生日です。そんな本日ご紹介していくのは、シベリウスの交響曲全集の中でも特に有名な名盤であるロリン・マゼール&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏を取り上げていきます。管弦楽曲ではカレリア組曲、交響詩「タピオラ」も収録されています。ブルーレイ・オーディオで聴くこともできる高音質盤によるマゼールのシベリウスをみていきましょう。
「ロリン・マゼール指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」
シベリウス作曲:
交響曲第1番 ホ短調作品39
交響曲第2番 ニ長調作品43
交響曲第3番 ハ長調作品52
交響曲第4番 イ短調作品63
交響曲第5番 変ホ長調作品82
交響曲第6番 ニ短調作品104
交響曲第7番 ハ長調作品105
カレリア組曲 作品11
交響詩「タピオラ」作品112
シベリウスは1865年12月8日にフィンランド大公国のハメーンリンナに生まれた。交響曲と交響詩を多く作曲し、中でも今回は収録されていないが交響詩「フィンランディア」が特に知られている。シベリウスの交響曲全集はまだ1962年に渡邉暁雄&日本フィルによるものが世界初録音されたばかりで、マゼール&ウィーン・フィルによる全集はそれに次ぐ形で録音された。どちらも今日において非常に重要な役割を担う名盤であることは間違いない。
・シベリウス:交響曲第1番
録音:1963年9月16〜20日
以前エソテリック盤となっていたことで事前に聴いていた交響曲第1番。今回は通常CDのためSACDハイブリッド盤ではないのだが、圧倒的なまでのダイナミック・レンジの幅広さには驚かされると同時に大きな感動が味わえた。金管楽器の咆哮、弦楽器による俊敏かつキレ味のあるサウンド、後のマゼールでは聴くことのできない躍動的かつ強烈なアプローチからなるテンポの緩急が功を奏した演奏は非常に素晴らしい。クレッシェンドによってオーケストラ全体が盛り上がった瞬間における音楽の頂点たる美しさとかっこよさは、聴いているだけで誰もがしびれてしまうに違いない。
・交響曲第2番
録音:1964年6月
鮮明かつ壮大なるスケールからなる演奏を聴くことができるようになっている交響曲第2番で、弦楽器の音色と響きが特に美しい。また、テンポの緩急からなる細かいダイナミクス変化が各楽章ごとに細かく演奏されていることによって、「緩→急」や「急→緩」の変化も楽しめるようになっている。特に第3楽章をはじめとするテンポの速い楽章では、鋭いキレ味が聴きどころであると言える。第4楽章が始まった瞬間の音が広がる瞬間も非常に素晴らしく、やはり弦楽器群による土台も含めて楽しめる演奏であることは間違いない。
・交響曲第3番
録音:1968年3月
軽快かつ親しみやすい音色によって演奏されている弦楽器のサウンド、木管楽器の透き通るように美しさ溢れる美しい音色を聴くことができた。全楽章共通して明るさに満ちた美しいサウンドによる伸びやかな演奏が功を奏する形となっていた。ある意味ウィーン・フィルによる演奏としてもぴたりと当てはまるものがあったと言えるだろう。重々しいアプローチではなく、みずみずしく美しい音色が一貫して演奏されていたので聴きやすかった。
・交響曲第4番
録音:1968年3月20日、4月16日
作品全体として、弦楽器群が軸となって演奏が進行していく。「暗→明」という構成になっていることもあって聴きやすい形になっている。また、ダイナミック・レンジの幅広さとリマスタリングによるバランスのいい配置の影響か、オーケストラ全体を見渡すことができるようにもなっているのは大きなポイントともいえる。何より第4楽章で演奏されるグロッケンの音が歯切れ良さと快活さを物語るような美しさがあったので、煌びやかで非常によかった。
・交響曲第5番
録音:1966年3月
全3楽章からなる交響曲のため、気づいた時には第3楽章となってしまっているかもしれないが、映画音楽を聴いているかのような広大なるスケール感と、各楽器ごとに細かく演奏が行われており、一音一音骨太な演奏を聴くことができるようになっている。終始明るいサウンドで鮮明な演奏を聴くことができるため、透き通るような美しさ溢れる音色をたっぷりと聴くことができるのは非常に心地が良い。終盤における金管楽器の音色は特に感動的なので、ぜひ注目して聴いて欲しい。
・交響曲第6番
録音:1968年3月
これまでに聴いてきたどの演奏も弦楽器を主体とした透明度の高い美しさに特化した演奏が多かった。今回の演奏はどうだろう。全楽章共通してテンポの緩急が非常に明確で、前向きかつ瞬発力がある。過去に聴いたことがないほどに速いテンポによって演奏が行われている。弦楽器主体であることは変わらないのだが、「緩→急」へと向かっていくノンストップ的な感覚が恐ろしいくらいに強烈なインパクトを生み出されている。特に第3楽章、第4楽章に関しては音の洪水のように止めどなく音が流れ込んでくる。今回の交響曲全集の中で間違いなく一番度肝を抜かされた演奏だった。美しいよりもかっこいいが勝つとは誰が予想しただろう。
・交響曲第7番
録音:1966年2月15〜28日
単一楽章による演奏のため、他の交響曲と比べても演奏時間は短い。しかし、その約20分という時間の中にあるのは、壮大かつスリリングさを味わえるような強烈な演奏を聴くことができる。弦楽器を中心として演奏されているのは交響曲第6番同様ではあるが、高音の伸びや木管楽器と弦楽器の息ぴったり感は交響曲第6番に引けを取らないほどの音の流れを聴くことができる。音色や響きとしてもウィーン・フィルが演奏しているということが演奏にも大きな効果をもたらしているのがよくわかる。くもりや迷いが演奏からは感じられない。今まで大きく注目していなかったこの曲の違う姿を知ることができて、今非常に満足している。
・カレリア組曲
録音:1963年3月27,28日
軽やかで親しみやすい描写が各曲ごとに楽しめる「カレリア」組曲。打楽器と金管楽器の歯切れ良いサウンドの相性が抜群となっており、聴きごたえとしても充分に楽しめる演奏となっている。「急→緩→急」のシンプルな構成でありながらそれぞれの曲の特徴、楽器が得意とする音色の良さを楽しめる。
・交響詩「タピオラ」
録音:1968年3月20日、4月16日
終始暗い構成かつ弦楽器のうなるような演奏が引きつける世界観となっているが、交響曲第7番を聴いた直前くらいに聴いてみると現代的な要素も含まれた面白さがあるため、聴いていて非常に面白い作品となっている。ただ美しいだけではなく、冷徹な麺も兼ね備えた響き。これはウィーン・フィルの独特な音色だからこそ奏でることのできるバランスの良いダイナミクスであると考えられる。これを聴き終えた瞬間に、今回の交響曲全集は非常に素晴らしい名盤だった。
さて、これまでに聴いてきたどのシベリウス交響曲全集とも違う非常に面白い演奏と世界観を楽しむことができた演奏だったのは間違いない。それが1960年代に録音されていたと考えると衝撃を受ける。マゼールは後にバイエルン放送交響楽団とも同じようにシベリウス交響曲全集を録音しているが、そちらはどのような演奏となっているのか?これはまた後日取り上げたい。ひとまず今日12月8日はシベリウス作品を聴きながら一日を過ごしたいと思う。
https://tower.jp/item/4015616