兄のところにいた猫が亡くなった。

名前はミュウミュウ。メス。

18歳。大往生だ。




兄の彼女が、仔猫の時にヒョイって

貰ってきた仔がミュウミュウだった。


当時はまるで、自分たちの子供のように

大切に、大切に育てていた。



それは兄にとって、

とても幸せな時間だったに違いない。



しかし、これから色々な事を踏み出そう、

始めようとしてる最中、




彼女は






交通事故で亡くなった。






そこから兄とミュウミュウの

ふたりの生活が始まった。


お世話のほとんどを彼女に任していた兄は

戸惑うことばかりであった。


しかし、

兄の底知れぬ悲しみを癒してくれたのは

ミュウミュウだった。


お互いケンカをしたり、ささえあったりしながら、月日は流れた。




ミュウミュウは、気位の高い猫だった。


私が兄の部屋に行っても

ほとんど姿は見せず。


こちらから、

絶対に触りに行ってはいけない。


シャーッ!と猫パンチを喰らう。


お触り禁止‼️


必ずミュウミュウの方から近づくまで待たなければいけない。


ネコのおもちゃになんて目もくれない。


ニンゲンの思惑なんてお見通し!

とでも言いたげな、プライド高い、

なんとも猫らしい猫だった。



兄もそんなミュウミュウを尊重して、

ある程度の距離感を保ち、

お互いストレスフリーな生活を送っていた。

それが長寿へと導いたのかも知れない。







きっと

ミュウミュウは知っていたのだと思う。




彼女が集中治療室にいた数日間の、

あの耐えがたい辛さ、悲しさを。


若くして逝ったことへの本人の無念さ、

兄の無念さ、

周囲の無念さを。


あんな辛さは、もう二度と

味合わせてはいけないことを。




ミュウミュウは、

いつも若々しかった。

いったい幾つなん?もう結構な歳やんね?

とよく話していた。

兄も不思議がるほどに、

病気らしい病気はしたことがなかった。




亡くなる前日。

いつもの時間にご飯を食べ、

いつもと同じようにおやすみを言い、

いつもと同じ場所で眠りにつき、


そしていつもと同じ朝を迎えた。



ただひとつ違っていたのは、



心臓が鼓動を打っていなかったこと。


ただそれだけ。







あっぱれなフィナーレ。


自分を貫いた猫生18年の幕を

いとも簡単にサッとひいてみせた。


兄を煩わせる事なく、

悲しみを長引かせることなく、



それは、






ただの日常。




とでも言うように。









ミュウミュウという18年生きた、

気高い、かっこいい、

そしてステキでかわいい猫がいたことを、

私は忘れないだろう。





私のお誕生日に、おにいと一緒に祝杯をあげてくれたん、忘れへんよ。


しかし去り際カッコ良すぎやで。


おにい、

滝の涙、流してるよ。







やはり猫ってすごいなとつくづく思う。





お疲れ様でした。ミュウミュウ。


兄の事、長い間

ありがとうございました。



彼女に会えるね。

いっぱい抱っこしてもらってください。


「やっと来たん。今度は私の番やからね」

と微笑んでる彼女の顔が浮かびます。


空からふたりでもう少し、

兄の奮闘ぶりを見守ってくださいね。





そのうち必ず兄がそっちに行きますので、

その時はよろしくお願いします。


それまで待っていてくださいね。






さよなら。



ありがとう。