JR筑肥線⇔福岡市地下鉄空港線の直通運転に使用されている303系。九州の鉄道車両の中で、私が最も好きな車両です。

昨年九州旅行に行った際に、初めて乗車することができました。

 

Nゲージの世界ではマイクロエースから製品化されています。

初回発売は2008年2月で、

  • 登場時仕様のK01編成(品番A-2870)
  • トイレ設置後のK02編成(品番A-2871)

の2種類が発売されました。

 

それから16年経った今年3月、現在の姿をモデルとしたリニューアル品が発売されました。

  • 現行仕様のK01編成(品番A-2872)

 

 

私は2008年発売のA-2871(2021年にヤフオクで落札)と2024年発売のA-2872(Models IMONで予約購入)を所有しています。(これ以降A-2871を旧製品、A-2872を新製品と呼ぶものとします)

 

新製品について、メーカーから以下の告知がされています。

  • 2008年2月発売のA2870/71を基に近年の姿で製品化
  • クハ303にトイレが設置され窓が1ヶ所埋められた姿
  • 前面、側面の「ワンマン」ステッカーがはがされた現在の仕様
  • パンタグラフ部品をよりリアルな形状のものに変更
  • 車体裾、床下インバータ、SIVなど形状を見直しよりリアルな姿に
今回の記事では上記の内容を含め、旧製品と新製品との間でどのような違いがあるか? 考察していきます。
かなり細かい話を書いているので、途中で飽きてしまうかもしれませんがご容赦ください。
 
 
先頭部
まず、車両の顔である先頭部から。
 
新旧を並べてまず目に付くのが赤の色味の違い。写真では伝わりにくいですが、旧製品はややくすんだ赤であるのに対し、新製品は彩度が高くビビッドな赤です。
 
新製品はワンマン標記が無くなっていますが、これは時代設定の違いによるもの。
 
ダミーカプラーは旧製品の時点で形状がイマイチでしたが、新製品では金型が劣化したのかさらに歪な形になってしまいました。
これは他社のダミーカプラーに交換したほうがよさそうです。
 
 
行先表示周囲の黒いフィルムは、旧製品はガラスの外側に印刷されているのに対し新製品はガラスの内側に印刷されています。
実車に忠実なのは新製品のほうです。しかし新製品は編成番号の位置が低すぎます。
 
 
ライト点灯状態。
旧製品の前照灯は乳白色のような色調ですが、新製品は純白です。
尾灯は新旧で有意差は見られませんでした。
 
 

車体側面

続いて車体側面。
 
メーカーからのアナウンスにある通り、車体裾のディテールが修正されています。
旧製品は車体裾が出っ張っていましたが、新製品では窪んでおり、実車通りの形状となっています。
 
また、ボディのシルバー塗装も質感が変わっており、新製品のほうがギラギラと反射が強い仕上がりです。
303系のボディはダルフィニッシュ仕上げではなくベルトグラインド仕上げなので、新製品のほうが実車のイメージに近いです。
 
 
車体標記も様々な点が違います。違いは次の表の通り。
 

 

①はメーカー時代設定の違いによるもの。

 

②は結論から言うと旧製品はエラー、新製品は実車に忠実です。

ただし少々事情が複雑です。まず実車の話をするとK01・K02編成はスペースなしの「KYUSHURAILWAY COMPANY」、K03編成はスペースありの「KYUSHU RAILWAY COMPANY」となっています。

したがって旧製品は「K01・K02編成がモデルなのに車体標記がK03編成」となっており、編成番号と標記の仕様が不整合です。

新製品はK01編成の実車通りの仕様となっています。

 

③戸袋部の「303」のロゴ下の黒い線の中には極小のJRマークがあります。旧製品では省略されていますが新製品では再現されています。

 

④弱冷房車表示の色は実車は黄緑なので、旧製品はエラーです。

 

また、窓ガラスの色も新旧で異なります。旧製品のガラスパーツは無色透明のクリアパーツで、側窓部分がクリアグリーンで塗装されています。新製品はガラスパーツ全体がクリアブルー成型です。

 

 

③と④に関して、参考までに実車の303ロゴと弱冷房車表示の写真を記載します。

 

 

屋上機器

新旧製品の違いで特に目立つのがパンタグラフ。

旧製品のパンタグラフは大柄ですが、新製品ではコンパクトになり、適切なサイズ感になっています。

平行リンクの表現は新製品では廃止されました。

 

パンタグラフを正面から見た図。

旧製品のパンタグラフはアームが太すぎるうえに上昇させると傾いてしまうので、正直に言って不格好でした。

新製品はすっきりした印象で、近年発売されたマイクロエース製品と同等水準と言えます。ただしKATOやTOMIXのパンタグラフと比較すると華奢です。

 

パンタグラフを上からみた図。

新製品ではパンタグラフが小型化されたのに伴い、屋根のパンタ台座のモールドが修正されています。

 

実車のパンタグラフ。

旧製品はパンタ本体、屋根の台座ともに大きすぎることがお分かりいただけるかと思います。

 

アンテナ類は形状は変わりませんが、新製品は光が透けにくい素材に変更されています。

これにより、プラスチックの安っぽさが軽減されました。

 

 

床下機器

VVVFインバータとフィルタリアクトル。

303系は1999年製のK01・K02編成と2002年製のK03編成では床下機器(VVVFインバータ、フィルタリアクトル、SIV)の仕様が違います。

(ただしK03編成のVVVFインバータとSIVは、2023年にK01・K02編成と同じものに交換されました)

 

旧製品の床下はK03編成(東洋IGBT-VVVF)の仕様になっていますが、模型化された編成はK01・K02編成(日立IGBT-VVVF)なので編成番号と床下機器の仕様が不整合です。

新製品は形状が変更され、K01編成の実車に近いものとなっています。

 

 

実車のVVVFインバータ(日立IGBT)。新製品は日立IGBTらしい形状をしているものの、実車とは少々ディテールが異なります。新製品のVVVFは床板とは別パーツになっており、もしかすると他の車両のパーツを流用したのかもしれません。

 

 

SIVも、旧製品はK03編成仕様となっており、K01・K02編成の模型としてはエラーです。

新製品は旧製品をベースに金型が改修されています。

 

 

実車のSIV。

新製品のSIVはあくまで旧製品の金型改修であるため、実車と同じ形状になりきれていないのが残念です。

 

 

屋根上のアンテナと同様、床板パーツも光が透けにくい素材に変更されています。違いが分かりやすいよう、凹凸の多いコンプレッサを比較しています。

旧製品は光が透けて、いかにもプラスチック的な質感です。新製品は光が透けないので陰影がはっきりしていて、無塗装でも質感が高いです。

同じモールドなのに、こんなにも印象が変わるものなのですね。

 

 

先頭車の床下は形状の変更はありませんが、新製品では保安機器類の箱がシルバーで色差しされています。

 

 

その他

付属の行先表示シール。新製品は行先・種別ともに収録内容が増えています。

列番表示器は旧製品がマグサイン、新製品がLEDとなっており、実車の変化が反映されています。

 

車両ケースのウレタンも変更されています。

旧製品はウレタンがきつくて車両が取り出しにくいですが、新製品は適度なゆとりが設けられており、スムーズに車両を取り出せます。

 


まとめ

303系の新旧製品を比較して、新製品に対して以下のような感想を持ちました。

 

【良い点】

  • 旧製品と比較して車体塗装がリッチな印象で(鮮やかな赤、メタリック感の強いシルバー)、見栄えが良い。
  • パンタグラフのサイズや、上昇時の姿勢が改善された。
  • 車体裾の形状が修正された。
  • 床板や屋根のアンテナ等、無塗装プラパーツが光が透けない素材となり、チープさが無くなった。
 
【惜しい点】
  • ダミーカプラーの形状が悪化した。
  • 床下機器の形状が変更されたが、部分的な改修にとどまり実車を再現しきれていない。
 

以上の通り惜しい部分もありますが、旧製品が抱えていた欠点のほとんどは新製品で改良されています。トータルで考えると良い点が圧倒的に勝っており、購入して満足できる製品だと考えます。

 

ただし、新製品は価格がネック。旧製品が17,500円+税であるのに対し、新製品は34,800円+税と、なんと約2倍の価格です。この16年でこんなにも物価高が進んでしまったのですね。