川崎製鉄(現JFE)の社長になった西山弥太郎という人の生涯を描いた本ですが、大正時代から始まり東京オリンピック過ぎくらいまでの世の中の出来事も紹介されていて、過去の出来事や事件などの発生や景気動向などを感じながら読めました。

 

本を読み始めた当初は、今とは社会風景が全く違う時代の物語なので、今更読んでもなと思っていましたが、千葉県と岡山県に製鉄所を建設する辺りは、業界を知らない自分にとっては、今でも十分に通じるものがあるのではないかと感じれるくらい、いろいろな観点から書かれており非常に面白かったです。

 

水利権、地質、港湾状況、電力なども視野に入れて製鉄所の場所を決めており、誘致自治体との交渉や、地元住民の立退料、労使交渉、当時の通産省とのやり取り、世界銀行からの融資や、配当政策、公職追放令など様々な点でも物語が進められます。

 

読み応えばっちりでしたが、製鉄技術のイメージが湧かず、製鉄のノウハウや作業に関する内容は、かなり飛ばして読み進めました。

 

日露戦争で、高橋是清がジェイコブシフから融資を得ることや、GHQのマッカーサーが国連軍指揮官として朝鮮戦争を指揮し、当初押され気味だった韓国がインチョン上陸作戦以降巻き返し、朝鮮を陥落しそうになる当たりなど知らないことが多かったので、ネットで調べながら読みました。

 

最近のドラマで描かれている企業の社長は、物事がトントン拍子に進む幸運の連続で描かれていますが、この本はある程度は事実に基づいているだけあって、すぐ難局に直面し、対応していくところがリアリティがあってよかったです。

 

こういうのが経営なんだなと、新鮮な感覚を感じました。

 

読んでよかったです。