<ヒューマン・大人>
監督:イ・ジェヨン
出演:ユン・ゲサン、ユン・ヨジョン

深いね。人生の切なさ満載でした。
昔、高齢者が高齢者相手に売春をしているという記事を読んだ事があって。考えた事も無かったので、かなりのショックを受けた記憶があるのだけれど。
どこの国でも似たような世界があるのは当然ですわよね。
そこは需要と供給の世界。そのての方にそのてのサービスを求める需要があるから成り立っている訳ですが。
なんともまぁ、普通の(若い方がやる)売春とは違った切なさや、見る側の痛みが伴う訳なんですね。これは。
本人はごく淡々と生きていて、全てを達観したかのように、(元の題名通り)イカせてあげたり逝かせてあげたり。需要にお答えしているだけなんだけども。
作品は実に良く出来ていて。なんだか、一本のドキュメンタリーを見たような気持ち。とは言え、全くドキュメンタリーチックに撮っている訳ではないの。
ただ、一人の女性の人生の、最後の一ページを覗いた。
でもその一ページだけで、彼女の他の人生もかなり垣間見ることが出来てしまった。そんな感じ。
ヘビーな性描写ありです。しかも高齢者同士なので。色んな意味でヘビー。個人的にはかなり苦手だったわ。
いや、高齢者の性に対してどうこう言うつもりはございませんのよ。ただ、スクリーンで見るのはちょっとな。しかも何度もだし。
けどね。
そこ無しで、この物語は成り立ちませんから。仕方ないです。
ユン・ヨジョンさんは『チャンス商会』が一番良いと思っていたけれど。この作品が一番になりました。一人舞台だし。完全に主人公の女性になり切っていて素晴らしかった。
ユン・ゲサンさんは相変わらずカワユイ。あんな人が近くにいたら私、絶対にかまってる。間違いなくかまってる。大家のネエさんと同じ末路、間違いなしです(笑。
人種問題や高齢者の現実など、色々な社会問題を含んだかなりディープな作品ではありますが。登場人物が(やっている事に反して)なんだかみんなピュアーでさ。
心がチクリをするけれど、悲しい涙は流れない。そんな雰囲気。
他人の言動や生き方には、見たり聞いたりしただけでは決して分からない、それぞれの意味や思惑がある。
ひとつの出来事や人間の表面のみで、簡単に人を判断してはいけないなと改めて思った次第です。