The NET 網に囚われた男 <그물> | 韓国映画ひくほどLOVE ~時々ぴょんて

<ヒューマン>

     監督:キム・ギドク

     出演:リュ・スンボム、イ・ウォングン


 
矛盾や皮肉、不条理満載。

観終わった後、ズッシリと澱(おり)のようなものが心の底に溜まる。。それは、監督の作品の好きな部分。
でも。
嘆きのピエタ』のような、「最高のエンターテイメントを観たわ!」感が無かったのよね。
案外普通だった。みたいな。
 
ま、これはこれで。さほど客層を選ばないという点では、良いのかも知れませんが。
 
とにかく。
リュ・スンボムさんは期待通りの熱演で。何も言う事はございません。
イ・ウォングンさん。。。可愛いねぇ~。可愛い過ぎるってば。
その可愛さが、純粋に人を信じるというキャラに、激しくマッチしていた気はするけどね。

余りにもアクが無く、可愛い過ぎて。ちょっぴり作品自体が軽めのタッチに思えてしまうところは否めなかったわ。
思ったよりたくさん出ていたし。
ある意味、彼の色が作品中に出過ぎていたのかも。
 
いや、ウォングンさんが悪いとかじゃなく。
爽やかな彼のお陰で、非常に「見やすい」作品に仕上がっているのも事実だし。。。ただ単に、個人的な映画の好みからは離れちゃったかな、ってだけの話です。
 
まぁでも。
「The 皮肉」って題名でも良いんじゃないかと思うくらい。悪と信じていたものと、善と信じていたものが、実は何も変わらなかったという、目がテンになる程の皮肉ありきで。
 
南の人間が言う、「不幸な人を救わねば!」という信念の恐ろしさも分かりやすかった。。。これはほんと、実社会でも多く存在する恐ろしさなんだよね。
 
不幸だとか可哀そうだとか。みんな自分基準でしか物事を判断しないから。
それって、相手の気持ちを考えている優しさのようでいて実は、自分の価値観の押し売りでもあるってこと。
相手の価値観は違うかも知れない。相手はそれを望んでいないかも知れない。。。そこまでの考えには到底及ばない。
 
私も、「一人で映画を観に行くなんてかわいそう」とか「一人暮らしは寂しいよね」とか。良く言われたけど。
いやいや、一人暮らし好きでしたし。一人で映画も旅行も、何の問題も無いですけど。それでもみんな、「一緒に行ってあげるよ」って。
一人で大丈夫と言っても、強がりだとしか思われないのよ。
 
実際私は、一人でも楽しいし。二人でも楽しいし。全く同じなんだけど。。。それがなかなか理解されないの。
まぁでも、その程度なら。彼らの優しさだと理解出来るので。大事にはならないけども。
 
それがもっと深刻な、人種問題や社会的弱者と言われる人に対するもの、自然や社会に関する出来事なら、本当に恐ろしい事になりかねない。
 
何が恐ろしいって、その、自分の価値観のみで動いている人間は全くの善意であり。疑問や迷いのない純粋な行動である、という事なんですわ。
まさか自分のその優しさが、相手にとって実は邪魔であったり。ましてや、相手を不幸にするなどとは、微塵も想像していない訳。
 
絶対的な「幸福」や「正解」など存在していないのに。どうしても人は、自分なりの「幸福」や「正解」を決めてしまって。それを押し付けるのが好きなんだよね。
 
この作品が好きか嫌いかは置いておいて。
どんな世界にも表と裏があり。強く信じているはずのモノに対してさえも、人間は非常に無力で。
結局。
絶対的なものなど存在しないのだと。はっきりと教えてくれるから。
そして。
物事を決める権力者の前では、それぞれの「幸福」を守ることがどんなに困難かって事も。。。それは国でも社会でも。小さなグループでも家庭でも。同じだよね。

 

そうだ!

最後に、どうしても言っておきたい事があった。

スンボムさんの娘ちゃんの持っているヌイグルミ。。。「くまのがっこう」のジャッキーだったのよ!

北側の貧しい家族なのに。なぜジャッキーなんだよ。ブランドくまだぞ。高いんだぞ。

最後のオチだって、そのせいで全く生きてなかったぞ!って騒いでたら。。。「誰もそんなの気づかないから」って言われた。。。なるほど(笑)。