四月十八日の土曜日、何時ものように神明神社にお参りに行き、その足で、台峯を歩く。目的はキンランと谷戸の池のオロチ桜であった。平成三十一年五月に鎌倉に住んで、すぐに裏山の台峯を見つけて歩くようになり、絶滅危惧種のキンランが咲く場所を知る。昨年は四月初旬に見て回ったが発見できず、絶滅危惧種のため見つけるのは難しいのだと思っていた。今年は四月の中旬過ぎにと思い出掛けた。
台峯の山道の中に、山崎小学校の課外活動に使われる、小学生が作成した十数枚の看板が設置された場所があり、「キンランを守りましょう」と書かれている。金襴は低山や山地の林の中に咲くラン科キンラン属の多年草である。大きさは三十センチから七十センチで、茎先に総状花序という柄のある花が花茎に均等につくりだし、三輪から十輪くらいの黄色の花をつける。花径は二センチぐらいで花の色は鮮やかな黄色である。花は平に開かず上向きに開花し、下から上へと咲きあがる。唇弁は上の唇下の唇と分かれる。上唇には赤い斑が入り、縦長の筋がある。下唇には浅い円錐状の距になっている。四月、五月、六月が開花月で、現在は絶滅危惧種に登録されている。花言葉は「眠れる才能」である。
キンランの人工栽培は非常に難しくその理由としてキンランの菌根(きんこん:菌類が植物の根に侵入して形成する特有の構造を持った共生体)への依存が高いためと言われる。菌根によりキンランの栄養分が供給されるが、その菌種は限られており、共生関係を成立する事が出来る菌根がなければ生育させる事が出来ないからだ。
この台峯も平成三十一年の九月の台風により倒木など、かなりの被害を受けた。倒れた木の伐採などが冬場に行われ、少しずつ整備がなされ、昨年の秋くらいから遊歩道も整備されて以前よりも歩きやすくなった。しかし、倒木などにより日当たりが良くなり、台峯の生息場所の土壌に変化が訪れたのかもしれない。大変微妙な生育環境であるため、平成二年度は咲くのは見る事が出来なかったのかもしれない。
何時ものようにキンランの咲く場所に着くと、日影にニ・三十センチの茎の上に黄色の花弁をつける花を見つける花の蕾は六・七ミリであるが、まさしくキンランである。その場付近に十五株くらいのキンランが咲いていた。周辺をゆっくり見て回り、もしかしてギンランを見つける事が出来るのではと探し続けた。十分ぐらい探したが、見つける事はやはり難しいのか、時期的にまだ早いのかと思い諦めかけた時、キンランよりも一回り小さな白い花弁を持つ花を見つけた。それはやはりギンランであり、一株だけ咲き始めていた。
ギンランはキンランより一回り小さく、白い花弁を持つためキンランに対しギンランと呼ばれるが、キンランと同じくラン科キンラン属の多年草である。開花期は五月から六月で、唇弁の基部は筒状になっており短い距となり、先は三裂し、二個の側裂片は三角状、中裂片は舌状になり五個の淡黄褐色の蜂起線がある。まだ蕾の状態であったため窺うことはできなかったが、キンラン、ギンランを見つけた喜びと、この時期に咲くことを知った喜びはひとしおだった。写真を撮ろうとするが昨日から風が強く、揺れる花を撮るのは難しい。昔のフィルムカメラだと大変であり、デジタルカメラの便利さを感じ何枚も取ってみる。しかし、それでも難しい。また、二・三日後に訪れ開花状況を観察してみたい。
二十日の今朝、開花状況を見に行くと日曜日見た何株かのキンランは萎れていたが、また別の所に咲き始め、そして少し一センチ弱の蕾を開かせている。一・二週間は見る事が出来ると思われが、一株だったギンランは、再び見つけることはできなかった。ゴールデンウィーク過ぎまで観察に行こうと思う。