鎌倉散策 熊野新宮(新宮社) | 鎌倉歳時記

鎌倉歳時記

定年後、大好きな鎌倉での生活に憧れ、移住計画や、その後の鎌倉での生活の日々を語ろうと思います。家族を大阪に置き、一人生活を鎌倉の歳時記を通し、趣味の歴史や寺社仏閣等を綴っていきす。

 

 

 江ノ電極楽寺駅の桜橋横を渡り導き地蔵の前の通り少し行くと右に入る。角に「熊野新宮、八雲神社、諏訪神社」の名が刻まれた石碑があり、そこを進むと熊野新宮の鳥居と緑色の銅葺屋根の社殿が見えてくる。六・七年前に訪れた時は失礼ながら古い木造家屋が乱雑に立つ通りだったが、今は小さな、お洒落な一軒家が個性豊かに建てられ、風景がかなり変わっていた。

 

 吉田秋生さんの漫画「海街diary」が是枝裕和監督により映画化された。鎌倉極楽寺に住む綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆の姉妹に鎌倉を出た父の死で腹違いの妹、広瀬すずと共に暮らすようになり、本当の家族、姉妹になる一年を描いた作品である。主演・助演の広瀬すずさんと長澤まさみさんが朝急いで極楽寺駅へ走り、この角を曲がるシーンがある。しかし映画に出てくる彼女たちの家は、この通りにはなく北鎌倉の個人宅を撮影に使わしてもらったらしい。吉田秋生さんの漫画「海街diary」は本当に素晴らしい作品で、九巻まで続いている。是枝裕和監督の映画化された「海街diary」も映画の時間的範囲の中で、良くまとめられた作品である。綾瀬はるかさんが、夏のこの極楽寺坂を上るシーンは非常に美しい。鎌倉好きの人間にとっては何度も読み直し、見直す作品と思う。

  

 関東大震災により近隣の八雲神社、諏訪神社が倒壊したため昭和三年(1928)から、こちらの熊野新宮に合祀されている。鎌倉時代は極楽寺の境内で、極楽寺開山忍性の足跡を著した『忍性菩薩行状略頌』に文永六年(1269)の新宮創建の記述があり、忍性が大和(奈良県)の出身で信仰していたとされる熊野本宮から勧請したと伝えられており、極楽寺の鎮守社とされた。永仁六年(1269)に火災に遭うが、正安二年(1300)に再建されたとも言われる。鎌倉幕府滅亡後足利氏に保護を受け、建武二年(1335)には足利直義が寄進した。

祭神:日本武命(やまとたけるのみこと)、速玉男命(はやたまのおのみこと)、素戔嗚命(すさのおのみこと)、建御名方命(たけみなかた)。例祭:九月九日(熊野新宮・諏訪神社例祭)。神事芸能:神輿渡御(七月第一日曜、八雲神社例祭)、鎌倉神楽(例祭)。宝物:神輿、山車。神徳:除災招福、疫病退散、農業(産業)守護。

 

 現在の社殿は昭和二年(1927)に再建されたものであり、極楽寺・稲村ケ崎住民の信仰を集め、こまめに手入れされた社である。まだ暑い九月の例祭は山車、神輿渡御で賑わう。今年の例祭はコロナウイルスの為、氏子総代による静かな例祭となったようで、神徳の疫病退散に与かりたいものだ。

住所:鎌倉市極楽寺2-3-1 交通:江ノ電極楽寺駅徒歩三分