修吾のお母さんは翌日帰って行った。


それからは、特に連絡もなく

落ちたことを責めるわけでもなく、

これからどうするんだというわけでもなく…





修吾も何もやる気も起きず夜遅くまでお酒をのみ、

日中は寝ている毎日だった。


私もあまり学校に行かずバイトばかりの毎日だった。




そんなある日



授業中電話がかかってきた。




知らない番号。



教室を出て電話に出てみる。

「はい?」



「あっ。○○科の仲島といいます。あの…修吾の…」



修吾が入る予定の診療科の医師からだった。



修吾と学生時代同期だったので、一度だけ会ったことがあったのだ。


誰にいきいて私の携帯を調べたのかわからないが…





医局でも先生たちが心配してるので一度様子を聞きたいとのことだった。



迷った。



美歩は修吾の家族じゃない。


医局の先生たちと会って話すことで修吾の信頼を崩してしまうかもしれない。


修吾に「そこまで勝手なことするな」といわれてしまうかもしれない。





とりあえず授業が終わったら仲島先生に会って、

他の先生と話をするか決めることにして電話を切った。



まず、修吾のお母さんに連絡した。


私が代わりに話をしてきていいかどうか。



修吾の家族の返事はYesだった。






それなら…そう思い先生たちに会うことを決めた。





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修吾はまだ気づいていなかった…。




玄関をあけお母さんを迎えた。




「修吾!!」




お母さんが声をかけると修吾はすぐに目を覚ました。




……が布団にもぐり込み叫んだ



「帰って。」


お母さんは冷静に修吾をなだめた。



「何子供みたいなこと言ってるの。

お父さんもみんな心配してるんだから

ちょっとでいいから話させて

。美歩ちゃんのところにいたいならそれでいいから」





修吾の反応はない。



美歩は無理やり布団を剥いだ。


その時




修吾のたまっていた思いが爆発した。



「もう俺無理だよ。医者になんてなりたくない。

もう生きて行きたくない。…死にたいよ。俺なんて……」



修吾のお母さんは今までどんなに心配でも涙を流さなかったが



この言葉を聞いた時は黙って涙を流した。


美歩はショックだった。



修吾がどんなに落ち込んでいたかはわかっていた気でいたけど

そんなことを本当に考えていたなんて。




両親のことも、自分の存在もすべて

修吾にとっては不必要な存在だと言われたような気がした。



やはり何もしてあげることはできないのか。。。




「どうして?どうしてそんなこというの?やめてよ。私は修吾のことが必要だもん」



壮絶だった。その時はそう言うしかできなかった。




修吾と修吾のお母さん、そして美歩



3人がそれぞれ様々な思いを抱えその場にいた。




…しばらく沈黙が続いた。



お母さんが

「わかった。修吾。とりあえずお父さんに修吾は無事だって伝えるね。

今、会いたくないならそれでもいいから。…帰るね」


そういった時


修吾は布団の外に黙ってうつむいたまま出てきた。

「…ごめん。今は何も考えられない。そっとしておいてほしい」



お母さんは黙って頷いた。



今度はソファーで3人穏やかな沈黙が続く。




少しずつ緊張感がなくなり

修吾の表情も穏やかになっていた。


もう国家試験の話はしない。そっとしておく。


とりとめのない話をして、笑顔も出てきた。


お昼が近づいていた。



みんなおなかも空いてきていた。

「何かおいしいもの食べにいかない?」



修吾が好きな洋食屋さんでビーフシチューを食べた。


その頃には修吾はすっかり元に戻っていた。




……と思っていた。

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修吾が無事に帰ってきたが


お母さんとは結局会うことなく



何にもなかったかのように

数日が過ぎた。

国家試験のことはお互い口に出さない。

美歩も修吾が心配でなるべく家にいるようにした。

今までの数日間が嘘かのように穏やかな日々だった。

でも美歩はこのままじゃいけないと思っていた。


修吾には気づかれないように学校で修吾のお母さんと連絡をとり

修吾の様子を報告した。


「ちゃんとご飯食べてる?

ちゃんと寝てる?」

そんな母の心配を

少しでも近くにいる美歩が安心させてあげたいという思いでいっぱいだった。

それでも、お母さんはやっぱり修吾本人に会わないと安心できないようだった。

お父さんも、やはり顔をみて修吾と話をしてきて欲しかったようだ。


そこで、こちらに来ることを修吾にばれない様内緒にしておいて


修吾が寝てる間(早朝に)そっと美歩の家に来てもらって

無理やりでも会ってもらうことにした。

母はこの数週間で何度片道6時間の道のりを往復したことだろうか。


それでも無理やり会おうとしないところが

修吾の家の優しさなのか

息子に対して甘いのか

もしくはずっと離れて暮らしていたのでどう扱えばいいのかわからないのか…


いずれにしても今は親子で話をするべきだと思った。




当日

修吾はいつも通り夜更かしをしていたので

7時すぎてもまだぐっすり眠っていた。 


チャイムは鳴らさないように打ち合わせをしていたので

玄関の前に着くと携帯に連絡をもらい

そっと鍵をあけた。



いよいよ対面の時です。



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