この演目は以前に市民会館で行われた歌舞伎で観たことがあります。人間の大きさくらいある毛抜きを黒子が操り,立ったり動かしていました。悪人が磁石で操っているという想定です。「そんな磁石あるか!」と違和感を感じていました。毛抜きも超大きいし。

 プログラムの題目の上に小さく「歌舞伎十八番の内」と書かれていました。これは「角(つの)書き」と言うのだそうです。団十郎家のお家芸という意味で書かれているらしいです。ちなみに十八番は「おはこ」とも読みます。お家の大切なものを箱に仕舞っていることが語源とのこと。

 このお芝居での毛抜きの大きさは市民会館で観た程ではありませんでした。それでも30 cm以上はあったと思います。これを羅針盤の磁石で天井裏から動かしていることになっていました。そんな強い磁石があるわけありません。恐らく,磁石が伝来した頃,「磁石はすごい」という噂が立ち,何でもできると庶民が思っていたことの象徴かも知れません。終わって帰る人たちの会話で,「何で刀が立たないのだろう」などという声も聞こえてきました。黒子が棒の先に付けて操るものとして,もう一つ印象に残ったのは,悪家老が首をはねられた時,黒子が棒の先に付けた頭部の模型を畳の上まで飛んだようにしたことです。笑う場面ではありませんが,ついつい笑ってしまいました。

 お姫様の住む大きな屋敷の門として,簡単な木戸が置かれていました。これを大きな屋敷の門と思わなければなりません。能狂言でも,子供の電車ごっこのような船が出てくる場面を覚えています。歌舞伎でも,「これが出てきたらこれこれをイメージしてください」というような約束事があるようです。これらの約束事をいろいろ覚えたらもっと楽しく観ることができるでしょう。

 歌舞伎を観に行きました。幕見席の入場料は払い戻しができません。予約しても当日熱が出てしまったら無駄になると考え,最近は当日の朝にWebで切符をとることにしています。以前に観たかった,「文七元結」は,超人気で,前日の発売時刻にドッと埋まってしまいましたが,その他は大丈夫そうでした。しかし,今回「鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)おしどり」を予約しようとしたら満杯でした。次の「毛抜」をとることはできました,。現在たまたま「團菊祭」と銘打った公演でした。明治に外国崇拝で歌舞伎が下火になったころ尽力した九代目「市川團十郎」と五代目「尾上菊五郎(おのえきくごろう)」を忍んでの公演だそうです。

 いつもの様に派手な,本人曰くテトロンの着物で出演しました。特徴は「夏熱く冬寒い」とのことでした。派手な着物を初めて使った時の師匠などの反応や,成功したことなどを話してくれました。登場した時,たまたま何人かの客が帰りました。「何人も帰ってしまった。こっちからは皆が見えている。一人戻ってきた」などと言っていました。ちょっと嫌味なまくらが長く,「私も落語はできますよ。最後の5分で」と言って, 猫と金魚の演目を話しました。たぶん5分以上やったと思います。金魚鉢の金魚が猫に狙われるということで,主が番頭に「棚の上に上げろ」と言うと,金魚を下に置いて金魚鉢だけ上げるような変な対応をとります。

 夏どろは,新米泥棒が金のない男の所に入り,逆に金を恵んでやってしまう噺です。落語芸術協会をもじってドロボー芸術協会とか言っていました。

 

 

 この人の話だったと思いますが,面白いことを言っていました。浅草演芸ホールの直ぐ近く,つくばエクスプレス浅草駅入り口の隣にパクパクという弁当屋さんがあります。ものすごく安いそうです。弁当1つ300円でも安いですが,少し前まで250円だったそうです。噺家は貧乏(「滝川一門では師匠以外は貧乏」と嫌味を言っていました)なので,よく利用したとのこと。つくばエクスプレスができる前は,この入り口の場所が空き地になっていてホームレスが集まってこの弁当を食べていたそうです。(先に高座に上がった)兄弟弟子は,そこに加わって食べていたそうです。「なぜ楽屋で食べない?」と訊くと,「(ホームレス)におかずを分けてもらえるから」と答えたそうです。私もその店を早速見てみました。そこには,ホームレスではなく,若い女性などがお客さんでした。

 

 

 出囃子が「さつまさ」でした。この出囃子が始まったので一之輔の出番かと思ったらこの方でした。以前の一之輔さんの高座で,「自分の出囃子は誰々の使っているものを,許可を得て使わせてもらっている」と聞いたことがあります。誰々かは忘れたので,きっとこの方からだと思いました。しかし調べてみると,一之輔さんは師匠の柳朝さんの許可を得て使ったとのことでした。さつまさは出囃子として何人も使っているのですね。演目は孫の話でした。

 看板ではピンクの着物に黒い羽織です。今回はオレンジ色の着物に黒い羽織で出演されました。寿輔さんほどではありませんが,ちょっと連想しました。演目は「長短」でした。新鮮だったのは気の長い長さんは関西弁,短七さんは関東弁でおこないました。なかなか合っていました。ただ,幼馴染ということですから矛盾は否めませんが…。

 落語の後で,踊りを披露してくれました。今回の情報ではありませんが,噺家さんは必ずしも踊りを見に付ける必要はないそうです。それでもおどりを見に付けている噺家さんは多いようです。

 着物の襟がはだけないようにするS字型の器具をどなたかに教えてもらったそうです。この高座でもそれをつけていると言っていました。

 演目は宮戸川でした。宮戸川はほほえましい前半と,ちょっと怖い後半に分かれます。ほとんどは前半で終わってしまいます。前半ではお花との馴れ初めの噺です。後半は所帯をもったお花が誘拐され,殺されてしまいます。ただそれは夢だったということで安心させる結末となります。前半と後半では雰囲気がまったく異なり,別の噺のようなかんじでもあります。大抵は前半だけで終わりにしてしまいます。今回も前半だけでした。

 「とうきょう ふとし」と呼んでしまいます。「あずま きょうた ゆめこ」です。前回見た2回ともゆめ子さんの認知度に不安を感じました。今回は話のスタイルを変えていたように感じました。古い歌の話題を出して,歌うのです。このパターンも楽しむことができました。

 浪曲では釈台を用いますが,講談との違いは,浪曲では布をかけて行うことだそうです。現在一番若い浪曲師だそうです。清水次郎長のさわりをやってくれましたが,本題は新作でした。玉川祐子は日本最高齢の芸人なのだそうです。その方の話です。祐子さんは101歳だそうです。携帯をガラ系からスマホに変える時付き添いを頼まれて行ったそうです。スマホ代は使用料に上乗せする形で支払うのに,3年契約と5年契約があるがどちらにするか訊かれたとのこと。現在101歳なので,5年契約は微妙というのが笑いの種でした。

 落語に駕籠や追いはぎの噺は多くありますが,この演目は初めて聴きました。吉原に行くには駕籠で行くのが常道らしいですが,幕末には治安が悪化していて蔵前辺りに吉原に行く駕籠を狙って追いはぎが現れるのだそうです。そこで男は考えました。着物や金を尻の下に隠して下着だけで駕籠に乗るのです。駕籠屋には「逃げればよい」と結構な金をやります。追いはぎが,駕籠を開けると身ぐるみを剥がされた形になっている男がいました。追いはぎは「もう済んだ!」と思い込むと言うオチです。