浪人加藤平之助が橋を通ると自分に<そっくり>な左官の男,与平が飛び降りようとしている。与平は,娘の婚礼のために,妻が大事にしていた鼈甲の櫛を質屋に預け5両を調達したが,それを取り戻そうとしてばくちをやってすってしまったのだ。平之助が止めると事情を話して死にたいという。平之助の方は,娘が上役小林伝兵衛に手籠めにされそうになり抵抗したら殺されてしまった。平之助は伝兵衛を仇と切ってしまう。それに対して,伝兵衛の腕利きの息子,彦一郎が平之助を仇と狙うようになる。そこで,平之助は与平に「どうせ死ぬなら(顔がそっくりだから)自分の身替りになって切られたら5両をお前の妻子にやる」と持ちかける。結局,与平が殺されそうになっている時,平之助が彦一郎を後ろから切ってしまう。実は,平之助が与平に会う前に,たまたま与平の娘に会って,事情を知っていたのだ。また,身替りを持ちかけたのも,腕利きの彦一郎を切る策略だったのだ。最後には平之助は与平に持ち金全てを与える。そちらの金は断るが「<そっくり>持っていけ」がオチ。

 この演目は古典の様に見えますが,初めて聴きました。実は中島要が2009年に初代三笑亭夢丸の公募に応募して優秀賞を得た作品なのだそうです。仇の仇なぞ,イスラエルとハマスの争いを連想します。加藤平之助の作戦は卑怯に見えますが,[武士の辛さ]という言葉でカバーしていました。

(CSのTBSチャンネルの落語研究会より)