ベース接地型発振回路の実験 (1)案 | 技術日誌

技術日誌

ここでは,電子工作,木工などの趣味での記録を書いています。
なお当初はKMK研究所のメインテーマであるSPSのノウハウを書いてきましたが,順次SPSノウハウのページに複製を作っていきます。

 ここのところ寒いので,部屋に閉じこもっています。暇つぶしに電子実験でもやってみようと思いました。何十年も昔,アマチュア無線周波数の50 MHzの発振回路をつくったことがあります。ベース接地回路でうまく発信しました。発振器は,増幅器の出力の一部を入力に戻すこと(正帰還,入力電圧が上昇すると出力電圧も上昇する形での帰還)と,それが特定の周波数で行われることが必要です。トランジスタでは,通常,ベースが入力で,コレクタが出力です。そのベースには信号を入れず,エミッタに入力信号を入れるのがベース接地回路です。ベース-エミッタ間に電圧変化があれば,ベース電流が流れるので,エミッタを入力とすることもできるわけです。異なるのは,入力インピーダンスが低いということです。ということで,エミッタに帰還するベース接地(交流的にアースとの間に電圧が生じないという意味で,直流的には接地されていません)発振回路でやってみたいと思います。周波数はFMラジオの周波数帯を狙いました。

 まず,手持ちのトランジスタで使えそうなものを探しました。2SC945のfTが300 MHzなので,使えそうです。ただ,私がよく使うコレクタ電流(ほぼエミッタ電流に等しい)1 mAの時は,fT=200 MHz弱です。3 mAでfT=300 MHzとなります。3 mA付近で動作させたいと思います。ただ,fTは使用周波数の5~10倍必要と言われていますので,場合によっては狙う周波数を下げなければならないかも知れません。

 先ずバイアス電圧から考えてみます。電源電圧を12 Vとし,R1を30 kΩ,R2を15 kΩとすると12 VがR1とR2で分圧されベースには4.0 Vがかかります。エミッタはだいたいそれより0.7 V低いので3.3 Vとなります。その電圧により,R3にはオームの法則から3.3 mAの電流が流れます。これでfT=300 MHzの状態で動作してくれると思います。

 次に共振回路を考えます。下の回路では,C1-C2-C4の直列になったものが,L1と並列になっていて,LC並列共振回路を形成しています。案の回路では103 MHzになります(配線のLやCによりこれより低くなると思われる)。コレクタの出力は,C1とC2とで分圧されてエミッタに正帰還されています。分圧されることでインピーダンスは低くなります。これで共振回路があり,正帰還も行われるので,発振回路になるはずです。ただ,この分圧で良いかは,データシートから計算するより,だいたいの経験値を用いて,実際に働かせて調整してみることにします。帰還量が多すぎると発振波形は歪みますし,少なすぎると発振しません。なお,C3とC4はパスコン(バイパスコンデンサー)と呼ばれ,交流信号が障害なく通るような大きな値のものを用います。