心を繋ぐ通訳★Mihoです。
少し前のことになりますが、離婚裁判の通訳をしてきました。この仕事をするにあたり、1冊の本がとても役に立ちました。記録しておきたいと思います。
私は、地元の地方裁判所登録の法廷通訳人でもあります。これまでに、刑事裁判の通訳経験はありますが、今回初めて家庭裁判所から離婚裁判での通訳依頼を受けました。
最初は非公開の離婚調停の通訳かと思っていたのですが、調停が不調に終わったご夫婦の離婚裁判での通訳とのこと。傍聴人がいる裁判です。
ここで、離婚裁判に至る流れをごく簡単に説明しておきます。離婚したい夫婦の間で協議離婚がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。しかし、それでも離婚成立に至らなかった場合、どうしても離婚したいなら、裁判所に離婚の訴えを起こします。これが離婚裁判です。
被告人が全裁判日に出頭する刑事裁判とは違い、離婚裁判(民事裁判)は、原告や被告に弁護士が代理人としてついた場合は、その代理人だけが裁判所に出頭すればよいので、原告や被告が毎回法廷に行く必要はありません。私が依頼を受けたのは離婚訴訟の最終局面である本人尋問という部分でした。弁護士と裁判官が原告と被告に質問します。その質問と答えを訳すのです。原告に英語の通訳が必要で、被告は日本人とのことでした。
自分の担当は全裁判中の一部分であっても、通訳として、それまでの過程を理解しておく必要があります。裁判所に関連資料の送付を依頼しました。しかし、今回は諸事情から資料のコピーを裁判所外に出すことはできないので、公判当日、開廷の1時間前に裁判所に来て、読んで欲しいとのことでした。
資料の枚数を聞くと、A4で約100枚あるとのこと。開廷の1時間前では読みきれないと判断し、書記官にお願いして事前に裁判所に行き、読ませてもらうことにしました。これが裁判の2日前。
裁判所で読んだ資料は、
・訴状
・答弁書
・第一準備書面(原告側、被告側)
・陳述書①②(原告側、被告側)
・証拠説明書(原告側、被告側)
重要事項のメモを取りながら読み、約3時間かかりました。これで、裁判の背景や出てくるだろう専門用語も大体見当がつきました。この時点での疑問はすべて書記官に聞き、回答をいただきました。幸い次の日はオフで、1日空いていたので、出来る限り準備をしようと決めました。初めての分野の時はいつもそうします。
ただ、困ったことがありました。私は、通訳の勉強も兼ねて、刑事裁判は何回も傍聴していますが、民事裁判、ましてや離婚裁判の傍聴をしたことがありません。どのような質問が両弁護士、裁判官から出るのか具体的なイメージがつかめません。私が担当する裁判までの間に、地元の家庭裁判所では離婚裁判の予定はなく、実際に法廷を見るのは不可能でした。
そこで、帰宅してすぐ、インターネットで検索。「離婚 裁判 本人尋問」と入れて、探しました。しかし、私が最も知りたい法廷での具体的なやりとりを記載したものはありませんでした。2時間ほど探して、もうそろそろ諦めようと思ったとき、「今度、離婚裁判中の夫の役を演じるので、荘司雅彦さんの本の法廷シーンを読んで研究しています」という、劇団員のブログを見つけました。
そこで、さらに本を検索すると、『小説 離婚裁判』という本にたどり着きました。荘司雅彦さんという弁護士さんが書かれた小説でした。法廷経験豊富な弁護士さんの本!期待が高まります。
アマゾンに注文したのでは間に合わないので、次の日の朝、近所の本屋に電話。この本の在庫があるとのことだったので、急いで買いに走りました。帰宅して読んでみると、ありました、4章に。私が最も知りたかった本人尋問のリアルなやりとりが。相手側弁護士の質問は、私の想像よりずっと厳しいものでした。
本のお陰で具体的なイメージがつかめたので、資料を元に、私が通訳する案件で想定される原告側弁護士、被告側弁護士、裁判官の質問をすべて日本語で書き出しました。次にそれを全部英語に直します。想定問答の作成は他の通訳案件の準備でもやりますが、私はこの作業が結構好きです。単語リストも作成。昭和、平成の年号が多数出てくることが予想されたので、換算でもたつかないように、すべて西暦に直して一覧表にしました。自分ができる最大限の準備が完了しました。
さて、裁判当日。裁判官、書記官と打ち合わせをして法廷へ。通訳人の宣誓、原告の人定質問を経て、本人尋問が始まりました。あとはただ、質問、答えを全力で訳していきます。前日までの準備が大いに役に立ちました。この本に感謝です。
帰宅後、この本をじっくり読みました。私は、この本からモラルハラスメントがどういうものであるかを初めて知りました。裁判の手続きもわかりやすく書かれている本ですので、興味がある方は是非!
