(店の軽ワゴン車)
🚐💨💨
🙁─👩
👩安美:
『 私が小さかった頃……
一流ホテルでパン職人をしたいた父は
独立してパン屋さんをはじめました…。
元々、腕の良いパン職人だった父の作る
パンは評判になり、店はすぐに人気店にな
りました。
でも商品に拘り過ぎる
父の経営方は
採算性を度外視したもので
正直、内情は良いものとはいえません
でした…….。
それでも父がいて… 母がいて…
愛犬のポチがいて
笑顔の絶えない
とても しあわせな毎日でした……。』
👩安美:
『 でも そんなある日……
父は友人の頼まれ、借金の連帯保証人に
なり……
その友人は姿を消してしまいました…。
多額の負債を抱えた父は……
ようやく起動にのり始めた店をたたんで
その返済に当てましたが、それでも負債の
金額にはとても及ばず、父も母も
昼も夜も働きづめでどん底の生活になりま
した…
だから、私はいつも ひとりでした………
そんな私にとって愛犬のポチだけが
心の支えでした………。』
👩安美:
『 そんなある日の朝、いつもどおりに
目を覚ますと 母は家を出てしまってい
ました……。
そしてしばらくして
私の唯一の心の支えであったポチも
病気になって………
ポチの容態が悪化したとき…
父も母もいなくて……
私は必死に助けを求めまたしたが
父も母も来てくれず……
ポチは私の腕の中で逝ってしまいました…。
子供ながらに わかってはいたんです……
悪いのは父に借金を背負わせた
その相手のひとであって……
父は何も悪くないと…………
でも私は当たりどころのない怒りを………
思い付く限りの罵詈雑言を父に
浴びせました………
そのときから 私と父の間には埋めようの
ない 深い溝が
出来てしまいました……
そして 私が高校生の頃……
ようやく 借金を返し終わった父は………
すでに疲れ果てていて…………
父の心は………
父の心は壊れてしまいました………。
父はいま……
特別な介護施設にいます………
私のせいなんです……
私のあのときのあんな言葉を
ぶつけてしまったから……
私は、父に取り返しのつかないことを
してしまいました………
私が……
父をあんな風にしてしまったんです………
だから……
わたしはどんなことをしてでも
のしあがっていかなければいけないん
です…………。』
😐寅男:
『 私は……
前の妻を病気で亡くして
絶望のふちにいたとき………
あるひとの言葉を励みに
そこから立ち上がって
頑張ることが出来たんです………
それはパン職人、谷本賢三さん
あなたのお父様です………。
彼のものづくりに対する直向きな
姿が 私に生きる勇気を与えてくれました。』
【車のダッシュボードの中から本をとりだして…】
📗😐寅男:
『 この本は私の宝物で いつも肌身は
はなさず持っているのですが
ここには色々な職業の職人さんたちの
言葉が載っています。
その中のひとつに
あなたのお父様の言葉が載っています……
これを……
あなたに貸してあげます………。』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄__________
【 駅のホームで………… 】
😐寅男:
『 あなたのお父様は、店をたたまれた後も
ホテルでパン職人として若手の育成などに
懸命に務められておりました……
そして そんな ある日、ご自分の異変に
気づき、病院に向かったところ
お医者様から認知症であるとの告げられ
たそうです。
この本の中には 娘さんである、
あなたに対する想いが
書かれています……
ぜひ、読んでください……』
😐寅男:
『 あなたが名店ル・モーイの娘さんだと
知ったとき…
なんの運命の悪戯かと思いました……
でも……ちゃんと意味があったんだ………。
断言します。
あなたの お父様がそうなったのは
病気が原因であって
断じて あなたのせいなんかでは
ありません!!
そして これから先、何があっても
私は懸命に生きるあなたのことを
応援します!!
がんばれ!! 安美さん!!』
👩安美:
『 ………………。』
(安美が寅男の背後に回る……)
👩
😓
えっ? 何?
( 安美が寅男の背中にもたれかかる………)
👩安美:
『 少しだけ……
背中を貸してください……。
うしろ………
振り返らないでくださいね……。』
😓寅男:
『 えっ……?』
👩安美:
『 ズルいですよ…………
弱ってるときに
そんなに優しい言葉をかけられたら………
もう 涙でメイク
ボロボロなんですから……、』
😓寅男:
『 ご、ごめんなさい……。』
──────__________
☺️👩
おっ、電車きた♪
🚋🚋🚋🚋
👋☺️じゃ♪
✋👩じゃ♪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄__________
♪ガタンゴトン ガタンゴトン…
🚋🚋🚋🚋___
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄___________
《 電車の中で本を読む安美 》
👩
📖
(ナレーション/中井貴一)
『娘へ………。』
先日、
病院で私が認知症であると告げられた……
既に少しずつ、いろいろな記憶が
消えていっている……
私から完全に記憶が消える前に
君に伝えたいことがある………
あの日、君があの言葉を私に投げ掛けた
日から……
君がそのことで自分を責め続けているこに
気付いていながら……
仕事人間であった私には
君とどう接してよいのか わからず……
うまく言葉を伝えられず、ただただ
時間だけが 過ぎてしまい……
気がつけば、私と君の間には
何か目に見えない溝ができてしまっていた……
思えば 私の身勝手で頑固な生き方が、
君や母さんのことを大きく振り回して
しまっていた………
本当にすまない……。
君から責められて当然だ……。
なので、
もし、あの日、私に言った言葉で
君がいまも自分を責めていたとするなら…
君が自分を責める必要などない。
しっかり、前を見てしあわせな生き方を
してほしい。
私はいつも君の味方だ。
いつかの日か、この本を君が目にして
いることを切望する………
👩
📖
────________
【 翌日……】
🏙️
👩安美:
『 社長……本当にこのまま
御主人とお別れになられて
よろしいいでしょうか……?』
👩舞美:
『 それはどういうこと……?』
👩安美:
『 だって………
あの人…… なんというか……
あまりにもいいひとで……、』
👩舞美:
『 だからこそ……
私も困って
安美にお願いしているんでしょう……
離婚の話、早くすすめてちょうだい。』
ペコリ……
👩安美:
『 はい、余計なことを言って
すみませんでした……、』
───────__________
【 数日後……】
😅寅男:
『 いやぁ~… お休みの日なのに
無理なお願いを言ってすみません、』
🎶
👩安美:
『 勘違いしないでください♪☆
あなたのためじゃなくて
汐里ちゃんのためだもん
ね~っ♪☆』
🎶
👧汐里:
『 ね~っ♪☆』
😅寅男:
『 あっ、そうですか………☆』
😅 👧 👩
『水族館たのしみだね~♪汐里ちゃん♪☆』
『しおり イルカさん見た~い♪』
🚗
【その様子を車の中から眺めている舞美……】
👩舞美:
『 くっ……………。』
_________────────
🚗
👩舞美:
『 もういいわ………
車を出してちょうだい……。』
👮運転手:
『 かしこまりました。』
🚏😅👧👩
────────
🚗💨💨ブォーン≡≡≡
(つづく)