『ハケンアニメ』は、辻村深月の小説が原作の秀作である。アニメ業界に関わる人たちの作画を送り出すことへの飽くなき執念とその愛が圧巻であり、熱量迸るその全身表情がとても素晴らしい。瞳(吉岡里帆)・王子(中村倫也)の土曜日午後5時のハケン争いと、それぞれを支えるプロデューサー、行城(柄本佑)・有科(尾野真千子)が主軸として描かれるが、アニメ業界に属するひとりひとりの顔が本当に良いのである。

 

Moving pictureって心が動くことでは?心のMoving?そう、私は少なくともこの映画を観て心が動いた。というか、刺さった。アニメ工場。その狂想曲?毎日弦が千切れるまで奏でる、その熱量。熱い吐息れ。開かれた眼。心と身体のギリギリまで眠らないこと?いや、眠れないこと?・・・吉岡里帆が俯瞰でみる、とっぷりと暮れた夕暮れ。土曜日の夜のひとつひとつの灯りに向けて祈るように見下ろすその屹立。想いはひとつ。やりきれぬ孤独やささくれに声を殺して心で泣くあなたたちのこと。その週末に何かを贈れないか、と?・・・・・・資本主義は先細りで沈滞の晩年?・・・・・・冗談じゃない。誰が言ったんだ、そんなこと。私たちはこの国で昼も夜も何かを売り続ける。しかも、強要ではなく、率先してそうすること。全身全霊を捧げること。活況という名の鉄火場に居る彼等。ハケンを目指すアニメとは?・・・・・・増村保造の『巨人と玩具』。あの、菓子メーカーの争奪戦を思い出した。・・・いや、まぁ、敵対ではさほどなく、むしろそれは大同団結なのだが。彼等だけの国?グルーヴというべきか?・・・・・・売れるかどうか?・・・つまりは、わたしが誰かに食べて貰える価値があるか否かのこと。そのためならカップ麺にでも何にでもわたしはなる。そこにいるあなた。ひびわれたささくれに声を殺して泣く、あなたのこと。わたしはあなたに美味しくわたしを食べて貰いたい。だから、もっともっとわたしを美味しくしなければ、だ。私が作るアニメはわたしがみたい、それなのだけど。・・・・・・でも、わかってもらえるはず。あなたが今いる同じ冷えた夜。私もそこにかつていたのだから。かつてわたしの心を動かした、あの作品の一部始終。脳の襞に刻まれたあれが総てだ。そう。わたしが産みだそうとする、それをあれに匹敵させなければ。土曜日の夕暮れの孤独。ささくれと空腹。あなたも今そこで心が塞いでいるはず。あなたを満たすこと、癒すこと。・・・・・・見えない卵?サンドバッグを叩くのは産みの苦しみ。鶴の機織り状態。アニメは2次元でも2・5次元でもない。涙を枯らして汗を流す命懸けの3次元。その有酸素運動の結晶だ。movingまたmoving。ハケン争いの抗争ではなく、土曜日午後5時に関わる業界の特殊性と、その連動と連帯。天空を俯瞰する魂の浮遊。彼女の分身のアニメキャラ。爆走のエンジンの輪動は最も危険な回転花火。彼女が慕うレジェンドの彼氏、その分身も際立つ。なるほどアバターってそもそも虚実皮膜だったんだな。そう思えた。その虚実皮膜、虚と実がくしゃくしゃになって見分けがつかない。そのくしゃくしゃにより破れかけても少しも怖くはない彼等。・・・・・・ハケン争い双方のアニメの筋をもっと分かりやすくすれば、分身の立ち位置の際立ちが彼等のそれを浮かび上がらせたという感想はあるが、まぁ、それは私のボヤキなのだが。・・・・・・機械仕掛けながら、極め付きの全身を使った人力工場を見せることは魅せること。ようこそ、修羅場へ。身体が資本?違う。間違ってはいけない。心が資本なのだから。何故か?心が折れれば一瞬でジエンドなのだから。あなたのささくれを癒す為に、彼らはここにいる。知らなくてもいい。贈り物の主は得てして後からわかることが多いのでは?

・・・・・・階下に居る子どもたち。なんか刺さってくれたのかな?その気配をなんとなくを感じた、彼女。ベランダを捉えたフレーム。そこからさっと消える。アクション!次のステージへと背中が押された。心が資本の彼女の国の資本主義?鳴りやまないゴングが聞こえた。私には。