僕は食い物を選ぶ前に酒を選ぶ。
日本酒は避けて通れない酒だ。
1975年頃の居酒屋は日本酒の全盛期だった。
どこに行っても灘の生一本、それも剣菱。
ある時店をやってる人に聞いてみたことがある。
「どうして剣菱なんですか」と。店の人が言うには
「そりゃ辛口だからさ、つまみの売れが違うさ」
肴は刺身、焼き魚、煮魚、焼き鳥、塩辛、鰹のたたき
海鼠腸(このわた)夏は冷奴、冬は湯豆腐。すき焼き、
しゃぶしゃぶ、寄せ鍋、関東煮(おでん)煮しめ。
「近頃辛口の酒がないとお嘆きのあなたに、、、」
というコピーがテレビCMで流れたのは1990年頃。
本当に辛口の酒がなくなり口当たりのいい日本酒
ばかりになった。特にブランドの日本酒が。製造方法が
変わったのだろうか。その頃には日本酒離れという言葉
さえも使い古されていた。
吟醸酒や大吟醸がもてはやされ剣菱も辛さを失っていた。
僕は出張先の新潟で飲んだ〆張鶴(村上)に心を奪われ地元の人
に勧められるまま〆張鶴と久保田(新発田)を三越新潟店から
一升瓶で何本か送って貰い、暫くはそれを楽しむことができた。
飲み終わって酒屋に〆張鶴を注文すると、いとも簡単に届けてくれた。
何のことはないと飲んでみるとまるで違う。新潟で地元の人が
三越新潟店から一升瓶で送らせた意味がようやくわかった。
何のことはない。ニューヨークで飲んだ日本酒と同じで防腐剤の影響
だった。久保田も似たような感じだったが少しマシだった。
特に一番安価な百寿は今でも気に入っている。
それにしても、翌日のだるさと浮腫みは何ともならない。
年を重ねた今では尚更だ。