「只今・・・って、何してる。」
居間のフローリングの上。
膝を曲げて仰向けに寝そべり、何度も上体を起こす綾織の姿があった。
「何って、筋トレだぞ!」
「いや、見れば判るよ。」
「あぁ・・・いつもは部屋でやっていたからな!」
「成る程。いや、成る程じゃない。お前は人ん家で何してる。」
「駄目だったか・・・?」
「駄目?そんな事言ったか?」
「そうか!」
「で、何故筋トレ?」
「ムキムキになりたい訳じゃないぞ、運動をする事が大切なんだ!」
「うわぁ・・・居候無職の発言じゃねぇ・・・。」
「お前もやるか?」
「いや、遠慮しておく・・・所で。」
逸見は持っていた大きな包みを、綾織の前に置く。
ドサッと置かれたその包みに、綾織には、あまり重量感は無かったように見えた。
「じゃ、渡したからな。」
そして、逸見はそそくさと部屋の方へ歩いて行く。
「開けても良いのか!?」
「開けなくてどうするの?大した物じゃないけど。」
短く言うと、逸見は部屋の扉を開け、身を隠してしまう。
「渡したって・・・何の話だ?」
う~ん、と唸りながら綾織は考えた。
そして答えに気付き、嬉々として包みを開ける。
中には、もふもふの白い小動物のぬいぐるみが入っていた。
赤い首輪が付いていて、手足や耳、尻尾は小さく可愛らしい形をしている。
人が抱きしめられる位の大きさで、抱きしめると暖かく柔らかかった。
<信じられるか?一億人殺したんだぜ、こいつ。
***
部屋の扉がノックされる。
「あー、はい?」
逸見の返事が半分も終わらぬ内に扉が開き、入ってきた綾織が甲高い声を上げる。
「何だあれは!!」
「あー・・・気に入らなかったか・・・」
逸見が気まずそうに言うのもお構いなしに、綾織は続ける。
「可愛いじゃないか!!あったかくて、やわらかくって、もふもふで・・・あぁもぅ、可愛いなぁ!」
見れば、綾織はしっかりとぬいぐるみを抱いていた。
「有難うな、拓未!!」
「どういたしまして。」
「でも・・・誕生日プレゼント、くれないんじゃなかったのか?」
「じゃあ返して、って言ったら?」
「嫌だぞ。これはお前が私にくれたんだから、もう私の物だ!返さないぞ!」
「そうかい、そうかい。いやぁ、ね。ちょっと驚かせようかと思っただけだよ。この間のとは違う意味で。」
「ふふ、そっか!」
「そうですよ。わかったら出て行け。」
「何でだよ~、冷たいなぁ。」
「莫迦、アンタの予想以上の反応に照れてるんだよ。」
「こいつも可愛いけど、お前も可愛いな!」
「はー・・・素の性格を可愛いって言われたのは初めてだ。感覚狂ってるんじゃないの?」
「返事は可愛くないなぁ。」
「うるせぇ。」
そっぽを向き表情を隠す逸見に対し、綾織はその笑顔から更に笑って言った。
「とにかく、有難うな!!」
「・・・はいはい。」
(来年、或いは再来年とやらの、今年は用意できないらしいプレゼント。そんな表情で礼を言われたら、絶対用意してやりたいとか思ってしまうだろうが・・・あーぁ。実の妹も、この位可愛かったらねぇ・・・でも、あいつも旅行とかの土産は素直に喜ぶんだよなぁ。ブツブツ・・・)