THEATER MILANO-Zaにて

W3 ワンダースリー



作品誕生から60周年

手塚治虫氏原作の
W3(ワンダースリー)を舞台化


原作は
1965年週刊少年サンデーで連載
テレビアニメ版は全52回を放送


 

※ネタバレありの感想です




原作読んでないしアニメも見てないけど
3月に火の鳥展を見てたせいか
手塚治虫ワールド炸裂!
と感じる舞台だった

戦争に対するアンチテーゼ

暗めのストーリーを
ウォーリー木下氏
ポップな演出で現代的に仕上げている



紛争の絶えない野蛮な星である地球を
救済するべきか破壊するべきか
議論を交わし投票しても結論が出ない

そこで銀河連盟は捜査隊を地球に派遣

それがW3 ワンダースリーと呼ばれる
銀河パトロールのボッコ、ノッコ、プッコ

宇宙人的ビジュアルで登場した3人は
うさぎ、馬、鴨に変身


するとパペットが登場して
俳優さんたちは声優さんたちとなる

そのへんの見せ方がさすが!


平和だった小川村に住む
地球人の星真一少年と家族・友人たち

兄である星光一が正義のために挑む
秘密諜報機関フェニックスとしての
過酷なミッション

エーグニ領のユダ島でクーデターを
もくろむランプ少佐


この3つの場面が切り替わりながら
ストーリーが進む


圧倒的に強烈な印象を放つのは
なんといってもランプ少佐を演じる
成河さん

幼少時
国のために働いた父を国に殺され
その後母も殺され
姉と逃亡中に姉は力尽きて息絶え
自身は軍に捕まり拷問を受ける

そんな壮絶な少年時代を送った
ランプ少佐

冷徹で残酷な軍人として
ユダ島に君臨する


成河さんの動きが
読んだことのないはずの
手塚治虫氏の作画を思い起こさせる
ほどに劇画チックな動きを再現していた

言葉で表現するのは難しいが
その場を支配するくらいの

とんでもない迫力だった

透明人間に殴られる場面なんか
本当にそこに透明人間がいるかと
思うほどのリアリティを体現していた

この方が主役と言っても過言ではない



しかしながら

ダークサイドに闇落ちした

ランプ少佐ではなく
気弱で無口で影が薄い星真一少年
主役に置くところが
手塚治虫氏だと感じる


W3の好意的な報告にもかかわらず
銀河連盟は地球の破壊を命じる

でもW3はその命令に従わない

なぜなら調査の任務中
ぶっきらぼうだけど優しい真一を見て
地球が好きになっていたから



星真一という名前って
作家の星新一さんへの
オマージュですよね



命令に背いた罪でW3は
15年前の地球人にさせられ
真一と出会うハッピーエンド



第二次世界大戦の日本軍への批判として
この物語を描いたとしたら
銀河連盟の破壊命令に従わない
W3を描くことは
戦争に対する強烈なアンチテーゼ


地球上でいくつもの戦争が起こっている
今だからこそ感じるテーマの重さ

見終わった後緊張から解放されて
心地よい疲れを感じた



星真一役の
井上瑞稀くん

繊細な感じで丁寧に演じていた

2年前のルーザーヴィルのご縁で
ウォーリーさんに呼んでもらえたみたい
ありがたいことです



兄役の平間壮一さん
アクションシーンが結構多くて
こんなに動ける方だったのかと
びっくり



W3役の
松田るかさん
相葉裕樹さん
永田崇人さん


このお三方が本当に芸達者で
宇宙人から動物に変わった後は
声優として舞台上に黒子のようにいる

でも途中で気付いた
こなしているのはW3役だけでない

真一少年のまわりにいる
カノコとか修理会社のおじさんとか
自治体の青年とかが
実は同じ役者さん

衣装も全然違うので
切り替わりの速さに驚く

そして同じ役者さんが演じてることで
ラストのハッピーエンドが伏線回収される

そのキャスティングがお見事



それだけではない
人形係の方々も実はアンサンブルとして
セリフもあれば歌も歌う


登場人物があんなに多かったのに
カテコで役者さんが少なくてびっくり


色んな役をこなせる方々がいてこそ
成り立つ舞台


素晴らしかったラブラブ



成河さんの怪演を見るだけでも
観劇の価値は十二分にあると思う

平日ならまだチケットあるみたいなので
気になる方はぜひ劇場へ

6月29日まで




◆キャスト
井上瑞稀:星真一
平間壮一:星光一

松田るか:ボッコ
相葉裕樹:ノッコ
永田崇人:プッコ

彩吹真央:星兄弟の母
中村まこと:ハム・エッグ 
成河:ランプ少佐

冨永竜 石井雅登 早川一矢
手代木花野 石井千賀 大倉杏菜

人形操演
中村孝男 高橋奈巳 松本美里


◆クリエイティブ
原作:手塚治虫
脚本:福田響志
演出:ウォーリー木下
音楽:和田俊輔


◆上演時間
約2時間35分 途中20分休憩


◆あらすじ HPより
日本の田舎にある小川村に住む星真一は漫画を描くことが好きな少年だった。

2024年、宇宙にある銀河系のすぐれた生物の集まりである銀河連盟では、地球の存続について激しい口論が繰り広げられていた。多数決は同数で決着がつかず、銀河連盟は調査員を派遣して地球の様子を探らせることにした。

W3(ワンダースリー)と呼ばれる銀河パトロールのボッコ、プッコ、ノッコの三人は、地球人に怪しまれないように、それぞれウサギ、カモ、馬の姿に変身し、小川村に潜入し調査を開始する。そこで彼らは真一と出会い、行動をともにすることになる。

一方、真一の兄、光一は家族にも身分を隠し秘密諜報機関フェニックスの一員として、兵器の開発拠点となっているエーグニ領のユダ島へ潜入していた。そこで待ち受けていたのはエーグニ警備隊のランプ少佐だった。

真一とワンダースリーは次第にランプの野望、群衆の混乱に巻きこまれていく。