1月13日にテレ東で放送された
新 美の巨人たち

テーマは

帝国劇場の美の秘密


とても興味深い内容だったので
備忘録として残しておきます




 

2025年閉館して建て直す予定の
帝国劇場



 

 

吹き抜けの大空間

ステンドグラスは帝劇を象徴する場所


階段の隙間が台形になっていたり



手すりが斜めに傾いているのは


非日常感を演出している


約2000席の
座席の色は落ち着いた古代紫

天井には蛇腹の折り紙のような造形

帝劇の美の魅力は
主張しすぎない奥ゆかしさにある

 

 

  帝国劇場の歴史

 

初代の帝国劇場が開場したのは
1911(明治44)年3月


大正時代には
今日は帝劇 明日は三越
が流行語になる


昭和になると一時期映画館になる


1966(昭和41)年9月
現在の帝国劇場が開場する

総工費60億円
地上9階地下6階


建築計画の責任者は
菊田一夫
 

東宝の専務であり
劇作家・演出家・プロデューサー


建築内部のデザインは建築家の
谷口吉郎

代表作は
赤坂の東宮御所
ホテルオークラ本館メインロビー

 

 

  建築内部のデザイン


建築家谷口氏の特徴は
巧みな光の使い手であること
芸術家とのコラボレーション
 

 

巧みな光の使い方

 

階段自体が照明装置

 

 

ただ光らせているのではなく
手すりの内部に実際の木を
スライスしたものを取り付けている


階段の内側がトチで
外側がマホガニー



トチの木目



マホガニーの木目


 

 

劇場内の光の工夫

側面の壁に色々な大きさのチーク材が
角度を変えて設置されている

光と影の効果で
奥行き感のある複雑な模様を生み出す


 

ロビーを見下ろす2階のカフェの光の工夫

窓の下端の高さに
テーブルと椅子の高さが合っている

 

 

窓が長方形の光の面に見えるように
その高さより上に物を作らない





芸術家とのコラボレーション

 

仮面 喜怒哀楽


彫刻家 本郷新

 

 

瓔珞(ようらく)

彫刻家 井原通夫


裏から


 

 

 

 

ステンドグラス 律動

洋画家 猪熊弦一郎

ステンドグラスは
日本の伝統的な華やかさを
近代的な感覚で演出したいと
日本のお祭りの色彩とリズムを
表現したもの


反対側から



猪熊氏のサインがあった




真ん中

下に本郷氏の仮面 喜怒哀楽が並ぶ

 

 

オブジェ 熨斗

洋画家 猪熊弦一郎

ベースは木材
山形の天童木工で作られたもの
表面に特殊加工

 

 

ロビーの壁

陶芸家 加藤唐九郎


ロビーの壁は
埴輪色のボーダータイル

埴輪は日本人の先祖が作った
一種の造形的ドラマ

それにあやかり
この劇場に日本の古い詩情を
土の色と肌によって表現したかった

 



谷口氏は
金沢の九谷焼の家に生まれた方なので
谷口氏の建築はシンプルでありながら
ある種の工芸が持っている
人間の肌に合うということを
よく考えている


壁の制作を依頼した先は
陶芸界の第一人者 加藤唐九郎

2年分の土を全部使い果たすほど
何度もやり直した
日本で一番贅沢な壁

 

 

 

 

谷口氏の言葉

 

    
舞台の芝居を重要と考え
建築はその印象を一層深める役目にした

目で見、耳に聴いたものが
心に響くようにしたいと思った

 

 

 


番組では紹介されなかったけど
こんな絵画もあった



 

 

  舞台機構


施主側の責任者
菊田一夫氏の構想は

 

    

世界一の舞台機構を備えた劇場を作る



世界的にヒットした映画
風と共に去りぬを舞台化したかった


どんなに場数が多い演し物であっても
舞台転換が極めて円滑迅速に手際よく
行われるような大舞台を実現したい


その言葉どおり
完成当時、世界一と評される
舞台機構を作り上げた


特徴は
素早いセットチェンジができること


表裏が回転するだけでなく
舞台の両袖と地下にも
セットの置き場を作り
それらをスライドさせ上下にも移動

数多くの場面をスムーズに
チェンジできる機構を作り上げた


念願の風と共に去りぬ
1966年11月3日に世界初演


燃えさかる街を馬車で脱出するシーンは
スクリーンに映像を投影し
その前で芝居させた


火事の映像は
特撮の神様である円谷英二監督に依頼


円谷監督が自ら
ミニチュアのアトランタの街を作って
最終的に燃やして作られた映像


この映像の前に
本物の馬を用意してお芝居させた


この舞台が大評判となったのは
いうまでもない


菊田氏の尽力により帝劇はその後
ミュージカルの殿堂としての道を歩む


1987年
現在の帝劇の顔と呼ぶべき作品
レ・ミゼラブルが開幕

帝劇最多公演数を誇る



1階入ってすぐの像

菊田氏かと思ったら違った

小林一三

阪急阪神東宝グループの創業者
宝塚歌劇団を設立

帝劇は
演劇の発展に注力した小林氏の
遺志を体している




今の帝劇のオブジェのいくつかは
新しい帝劇に引き継がれる予定

あと何回来れるだろうか

劇場内は写真NGだし
しっかりと目に焼き付けておきたい