幻となりつつあるミュージカル



ラ・マンチャの男

Man of La Mancha

先週、奇跡的に観劇できました


2回分のチケットを確保していて
1回は中止になってしまったけど
2回目は無事に幕が開いた




1969年初演から53年続いてる

単独主演シングルキャストで
1300回以上の奇跡のミュージカル


松本白鸚さんの
魂を揺さぶる渾身の
ファイナル公演


「魂を揺さぶる」は
決して誇張ではない


途中から色々熱くこみあげて
最後はもうたまらなくなって
本当に感動でした


客席総立ちで拍手


演者のみなさんと白鸚さんの姿が

舞台から消えても
高ぶる気持ちはおさまらず

オケのお別れの演奏を聴きながら
余韻に浸る


珍しくパンフレット買って
おうちでもしばし余韻に浸る
パンフレットおすすめです!


これでもうお会いできないのか


そう考えると
さみしさはとても大きい


でも
白鸚さんの

「これでやりきった」感は
ひしひしと感じた

 

休憩なしの2時間15分
体力的には相当きついでしょう


白鸚さんのお顔には常に
汗が光ってました


欲を言えば
全公演やりとげてほしかった


無念なお気持ちはあるかもしれないが
私のように観劇の機会を与えられて
至福の時間を過ごしたファンもいる

中止となった公演は残念だけど
上演できたことに目を向けてほしい


こんなにも長い間
感動を届けてくれて
本当にありがとうございます


ここ数年
歌舞伎からは遠ざかっていたけど
久しぶりに
4月の歌舞伎行ってみようかな



◆キャスト

宝石ブルー 松本白鸚:セルバンテス/ドン・キホーテ
宝石赤 松たか子:アルドンザ

宝石ブルー 駒田一:サンチョ

宝石赤 実咲凜音:アントニア
宝石ブルー 石鍋多加史:神父
宝石赤 荒井洸子:家政婦

宝石ブルー 祖父江進:床屋
宝石ブルー 大塚雅夫:ペドロ
宝石赤 白木美貴子:マリア

宝石ブルー 吉原光夫:カラスコ
宝石ブルー 上條恒彦:牢名主






※以下ネタバレあります
長いです


◆感想


初めて観たのは20年前
きっかけは松たか子さん

25年くらい前のNHKドラマ「蔵」
そこでの電撃的な出会いから
ずっと大好きな松たか子さん

松さんを愛するあまり
藤間家を箱推ししてる時期もあり
一時期は高麗屋の歌舞伎も観てた

松さんのお父様
松本幸四郎さん(現白鸚さん)の
ラマンチャの男を
初めて観に行ったのは2002年のこと

松たか子さんが若くして
アルドンザ役に挑戦した年

それから上演されるたび
劇場に足を運び
全部で4回観たようである

各場面をいまだに鮮明に記憶していて
もっと何回も観た気がするのは
舞台のインパクトが大きいからかしら

松さんがアルドンザ役を外れてから
すっかりご無沙汰

なので今回の観劇はなんと10年ぶり




まず感じたのは
白鸚さんの老い

動きがよれよれしてる
足を悪くしているというニュースを見たけどそのせいなのか

セリフが聞き取りにくいときもある
(何度も観たから聞き取れなくてもわかる)

でも迫力とオーラがすごい

だからこそ
狂気の老人アロンソ・キハーナが
しっくりはまっている

10年前までの
若々しかった幸四郎さんより
今の白鸚さんのほうがぴったり

53年連れ添った役と俳優が
同化してるかのような印象

そして歌は素晴らしかった
艶めいたハリのあるハイバリトン
そこは年齢を全く感じさせない

トータルで
魂を揺さぶる渾身のファイナル
というのは全く誇張ではない



松たか子さんも本当に素晴らしかった

スポットライトが当たってないときも
私の目は自然と彼女に吸い寄せられる
その佇まいに魅せられる

ライトが当たったときは
場違いな美しさに目が眩む
10年のブランクは全く感じない

ノーブルな雰囲気が漏れ出ちゃう
松たか子という女優と
場末の宿屋で働くあばずれ女
対極にある存在なのに
それが融合している

松さんがアルドンザを演じると
アルドンザが主役のような気にもなる
私のひいき目かもしれないけど

アルドンザの再生への物語
それを導いたドン・キホーテ

あの後アルドンザは宿屋をやめて
別の人生を送ったよね
もしかして修道院に行ったかも
そんな風に思った


◆あらすじ(ざっくり)


原作はドン・キホーテ

詩人セルバンテスが
教会を侮辱した罪で地下牢に入れられ
先住の囚人たちと即興劇を演じる

劇中劇として
田舎の老人アロンソ・キハーナが
自分を遍歴の騎士ドン・キホーテ
アルドンザを思い姫ドルシネアと
思い込み繰り広げられる物語




主人公は気の狂った老人
ヒロインはあばずれ女
キラキラした優美な要素はゼロ
普通のハッピーエンドではない たぶん


はじめ観たとき
若い頃は作品の良さが
正直よくわからなかった

観るごとに理解が深まり

この作品の持つ深いメッセージは
人生経験を積んだ今のほうが
より響いてくるように思う




事実は真実の敵なり




狂気とはなんだ?

夢に溺れて現実を見ないのも狂気

現実のみを追って
夢をもたないのも狂気

だが一番憎むべき狂気とは
あるがままの人生に折り合いをつけて
あるべき姿のために戦わないことだ





夢はみのりがたく
敵はあまたなれども
胸に悲しみを秘めて
我は勇みて行かん

道は極めがたく
腕は疲れ果つとも
遠き星をめざして
我は歩み続けん






アルドンザのような
泥にまみれた毎日を送ってなくても
誰もが何かしら抱えて生きている

そんな私たちに
エールを送ってくれてる

そういうことなのか~と思う


ファイナルになって
やっとちゃんと理解できた気がする



待ちわびた多くのファンにとって
見果てぬ夢となりそうな今の状況
1日も早く再開し
1公演でも多く幕が開きますように

祈るしかない







おまけ
先日の徹子の部屋に
紀子さん(白鸚さんの奥様)が
出演されていて

紀子さんは芸能人じゃないのに
ひとりでTV出るの!?
って驚いたけど

徹子さん、ラマンチャの日本初演に
家政婦役で出演されていて
そういうご縁での番組出演なんだ

53年の歴史ってすごいな
と思ったの

久しぶりに元気そうな紀子さん拝見できて
嬉しかった