ラフマニノフ/チャイコフスキー ピアノ協奏曲

 pf. スヴィャトスラフ リヒテル(Bosendorfer使用)のピアノコンチェルトをYouTubeから…、

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 &

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番

 

旧ソ連の鉄のカーテンの中からリヒテルが西側に演奏活動で出てくる様になったのは、チェロのM.ロストロポーヴィッチと同じく、ソビエトの外貨獲得政策の一つとして…。(彼らは優秀な⁉︎国家公務員として)

リヒテルが どのピアノを使うか?ソ連でのレコーディングではベヒシュタインが多い?バッハの平均率全集はベーゼンドルファーを使用。

西側でもベーゼンドルファーを弾く⁇ スタインウェイは余り好きで無いらしくて注文が多く、レコーディングにイタリアやコペンハーゲンからハンブルク スタインウェイを(コンサートの際に気に入ったスタインウェイを)そのホールからレンタルして運ばせたりもした。それが不可能なら、録音をキャンセルした。(曲により弾き分けもした、ベートーヴェンはベーゼンドルファー、シューマンはハンブルク スタインウェイと。)

1965年にYAMAHAのパリ支店がオープンし、欧州でもYAMAHAを見る機会があり、大阪万博でYAMAHAを弾き、YAMAHA  CFⅡ CFⅢ(S)にはリヒテル専用モデル(三叉では無く二叉鉄骨の)が有って、以降YAMAHAを弾く様になった。(試作段階の数台のうち、リヒテルのお気に入りを、彼専用にカスタマイズされたもの)

新宿にYAMAHAピアノシティーがまだ在った時に、製番1,000,000番の1970年のCFⅡ リヒテルが大阪万博で来日の時に使ったピアノを弾かせて頂けました。

(構造的には かなりスタインウェイ寄りのYAMAHA)

私自身は、その横にあったYAMAHA CS 250cm(当時で190万円)の方が音が好きだったのですが(←唯一YAMAHAで残っていたベヒシュタインモデルのピアノだった様です。) 

それ以降、リヒテルは日本での来日公演では、全てYAMAHAを使用していました。(YAMAHAでのレコーディングも多々残っています) ので、リヒテルをベーゼンドルファーで聴くのは珍しいことはなのかと…。

 

 

ラフマニノフピアノ協奏曲第2番 YouTubeから

 pf. S.リヒテル W.ロビツキー指揮 ワルシャワフィルハーモニー管弦楽団 1959年の初期ステレオ録音盤

 

当時ワルシャワのフィルハーモニアホールにはベーゼンドルファーインペリアルは無かったので旧275型

ベーゼンドルファー275の鉄骨 (最低音Fファ)の92鍵

 ショパン国際ピアノコンクールでも使われた古いベーゼンドルファーで、1980年には日本人の海老 彰子さんが3次予選までベーゼンドルファーを弾いて第4位に入賞している(そのピアノだと思う。彼女も本選のコンチェルトはスタインウェイに変えたが…)

当時のポーランドではドイツのスタインウェイやオーストリアのベーゼンドルファーを買うと言う事は、外貨が入って来ずに大変な事だった。そんな事情も有って、YAMAHAや KAWAIの援助で日本製のフルコンがショパンコンクールに提供される様になった。(ワルシャワのフィルハーモニーホールの所有するものでは無い)

 

リヒテルは自宅に旧型のインペリアルを持っていたので…彼の響きの要求に低音部が限界を超えてピアノが応えきれていない⁈

ラフマニノフのピアノ協奏曲をベーゼンドルファーで弾く事は、現在も 殆ど無いので それも稀少です!(SP盤時代にはモイセヴィッチが使った)

中音域の ふくよかな響き 高音域の歯切れ良い軽やかさ…美点も沢山 新たな曲の魅力としての発見も有りますが、ラフマニノフの要求する fff の鳴りは、スタインウェイには負けてしまいます。

リヒテルは新しいピアノは好きでは無いので(YAMAHA CF シリーズ以外は) スタインウェイも西側でのレコーディングに使ったのは4.50年前の戦前のものを使用しました。

 

ラフマニノフ自身はロシアで、このコンチェルトの作曲の際にはベヒシュタインを使っていました。アメリカでの1929年の自身の弾くSP盤の録音ではアメリカのベーゼンドルファーとも呼ばれる、Mason & Hamlin CC型を使って録音…ストコフスキー指揮 フィラデルフィア管弦楽団で YouTubeにもUpされています)

 

 

旧型ベーゼンドルファーインペリアルの鉄骨

 

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 

pf., S.リヒテル & H.V.カラヤン指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団  1962年録音盤

 

リヒテルのレコーディングのためにムジーク フェライン ゴールデンザールのステージには より優られた3大名器、ハンブルク スタインウェイ ベヒシュタイン   ベーゼンドルファーインペリアルが並べられていました。試弾の上、リヒテルはベーゼンドルファーインペリアルを選びました。その記念すべき西側でのグラモフォンの録音盤 YouTubeから

録音でベーゼンドルファーインペリアルを使用していますが、前ブログのバックハウスやブレンデルの弾く音と比べても、少しベーゼンドルファーインペリアルが悲鳴を上げている様な感じも。(ワルシャワの録音よりも余裕のある響きは、さすがインペリアルですが…、リヒテルの要求に音量面では応えきれていない様な…。)彼自身も、音楽を心を表現するにはベーゼンドルファーインペリアルが最高の楽器ではあるが、音量が不足すると…。スタインウェイは微妙さに欠けており若い人は その煌びやかさに頼り過ぎる嫌いがあるとも…。ベヒシュタインは戦前のものは申し分無いが、戦後のものは品質が変わってしまった。チェコのペトロフはフィルハーモニア(音楽堂)に有るものは良いが、他はムラが多い(チェコフィルとの旧チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番の録音時にはペトロフを使用)

 

通常の88鍵のピアノよりも9鍵多い低音域の鍵盤

左から側の9本の弦は太さも通常超え! (下8本はスチール弦に銅の二重巻き線、それから上のは銅は1重の巻き線になっている…銅は低い音程太い線で作る)

この黒鍵盤部分は普段弾かなくても、ペダルによる共鳴の重低音の響きが凄いです。特にリヒテルは自宅にベーゼンドルファーインペリアルを置いてあるので、その弾き方、響かせる方も良く解って弾いています。