Baldwin ボールドウィン SD-10 コンサートグランドピアノ made  in  USA で聴く ムソルグスキー 展覧会の絵 他

D.H.Baldwin はスタインウェイ ベヒシュタインに少し遅れて1862年から楽器製造を行い、1865年にシンシナティーに移り、豪奢で芸術的な建物(工場)を作りました。(Baldwin Piano & Organ.co.)なので最初は需要の有ったチャーチオルガン製造からだと思います。

旧型のピアノは1920年頃に完成していました(STEINWAYよりも少し早く…スタインウェイは1935年に現行と同じ響鳴板の形の製造に関する特許を取り完成。但し、それ以前の方が良かったと言う演奏家も多い) Baldwinの戦前の評価はそれ程 芳しくは無く、レコーディングでの使用も少し有る程度で、製造数はアメリカ第1位…(YAMAHAのU1 やG2みたいなピアノの製造がメインと思えば良い感じ⁇) で、戦後1962年にドイツ ベヒシュタインを買収してから楽器の性能を飛躍的に伸ばし、スタインウェイに次ぐピアノにアメリカではなりました。(最盛期はハリウッドにピアノを提供して、ハリウッド映画に映るピアノは全てボールドウィンが使われる迄になりました…本社はGP専用工場となり、他に2カ所UP専用工場を持つ迄に)

演奏家では L.バーンスタイン、B.ジョエルらもコンサートでボールトウィンSD-10を使う様になりました。

その後、1988年にベヒシュタインはBaldwinから離れ、ボールドウィン自体はギブソンギターの経営下に入り、ギブソンギターの経営難からアメリカでの製造を中止し、現在は全て中国で製造されていて、本社も移転し西海岸に移した工房ではプロ用とコンサートグランドピアノのみ、プロフェッショナルなチューニングを施してから出荷しています。

(製造数200万台超〜と、倒産の危機に遭うと言う点では、日本第二のピアノメーカーKAWAIと同じで、その点からもアメリカのKAWAIとも呼べるメーカーです)

 21世紀になりアメリカ製のピアノはNY STEINWAYを除くと、その殆どはアメリカ国内での製造を止めて、中国からのOEM品となり、Made in USAの響きは失われています。YAMAHAやKAWAIでJAZZも良いですが、やはりアメリカの響きで聴きたい!…と思うと、NY STEINWAY 1択では…少し寂しい限りです。

 

国内盤にもボールドウィンSD10を使って録音したLP盤が2枚(+1枚有った筈なのですが…)

 

日本コロンビア(DENON)  XO-7004-N

ムソルグスキー 展覧会の絵 と ラフマニノフ前奏曲集より  園田 高弘 演奏

 

 彼の録音では他に 埼玉県入間市民会館にSD10を持ち込んで、通常とは逆にピアノを置いて…ステージ後ろの反響板を向いてピアノの大屋根が開けられていて、マイクは反響板側からホールの客席を向いて置かれて、深いホールの残響も収めるようにセットされた。ベートーヴェンのソナタを録音した盤を持っていた様に思う。

(ついでに書くと、彼はKAWAIの製作が短期間だったフルコンサートグランドピアノのGS100でドビュッシーの前奏曲集第一巻も録音している。

KAWAIとBaldwinとの繋がりも有り、ボールドウィンのブランドの一つである、Howard ハワード名のピアノはUSA KAWAI工場でOEM製造されていた。)

 

ムソルグスキー 展覧会の絵より プロムナード  小人

   pf. 園田 高弘

…小人での低音の重い響きはベヒシュタイン系の音を連想させます。

日本での録音評は余り芳しくは無かった様で…(レコ芸等の録音評では) 聴き慣れていなかったボールドウィンSD10の録音、新しい録音形式のデジタル録音のマイクセッティングにはスタッフ、レコーディングミキサーにも戸惑いが有ったのかも?(LP盤の製番も7004-Nなので、国内製作の4枚目⁈) アナログ録音でのノウハウの蓄積の有るハンブルグ スタインウェイとは かなり響きに違う印象があり…、現場での戸惑いも有った⁈

 

 

ジャケット解説面

1973年千葉県文化会館大ホールにて録音


同 展覧会の絵より バーバヤーガ キエフの大門

 今までのアナログ録音のマイクセッティングでは 楽器とマイクの距離が近く…、そのかわりにホールエコーは余り含まずに ピアノの生の音、マイクがピアノの中に有る様な、近くでグランドピアノを覗き込んで聴いている様な、ある種のリアルさが有ります…(自宅のBaldwin 2024にも共通する響が感じられて、特に高音域のスタインウェイを超える鳴り…2024はSD10よりもバス弦は〜1m程短いですが、打弦後の重い低音の響きに、同じ頃に開発された機種なのだと…。)ホール残響は余り⁈含まないボールドウィンのリアルな響きが楽しめます!(DENONの1,000円の廉価版CDのシリーズに再販はされているのでしょうか?←無いとすると残念です)

73年録音なので、DENON PCM digital録音の初期のもので、13ビット録音(CDは16ビット記録) としては 決して録音悪くないと思いますが…、(下に記しているI.モラヴィッツ盤よりも良いと感じるのですが…)


ラフマニノフ 前奏曲集作品23-5 ト短調

ラフマニノフの前奏曲は全体にリミッターを掛けられてしまった様な(盤の内側になるので)ムソルグスキーの様な豪快な迫力が有りません。良く言えば、クリアなアナログ録音の様な音作りがされています。

 

Baldwin SD10を使ったラフマニノフの前奏曲集にはCBS盤のルース ラレードの弾く盤が(確かCDも有るはず)豪快な響きが良かったです。

当時のPCM13ビットはダイナミックレンジが74dB程、それに対してレコードの通常溝切りでの記録には60dB程なので、レコードの持つレンジの方が狭く、それをどう1枚のレコードに収めるかが、ミキサーの仕事で有り、とっさの大音量での破綻(歪んだ録音)を避ける為にリミッターの使用も安全策として有ったかと…今までのアナログ録音なら、さり気無く出来た操作もPCM digitalだと、それも感じられてしまう様で。

 

 DENON PCM録音のLP盤のレーベル

 

 


米コニサー ソサエティ録音盤 ドビュッシーピアノ曲

イヴァン モラヴィッツ演奏 フィリップス盤FH-14

 オーディオチェックレコード集として発売

LP盤なのにA面2曲、B面3曲の計5曲のみ収録。

ジャケット左の黄色と赤には録音レベルと解説が…、

↓花火 縦が時間の経過です。

今となっては少し茶番⁈的な感じも有る⁈

他の盤にはチャイコの1918年でのキャノン砲の音の入ったオーケストラの響き…等。自身のオーディオセットの性能もチェック出来る盤のシリーズとして発売された。

その最先端には、特に米国のテルデックのダイレクトカッディング盤(マスターテープ録音は経ずにミキサーから直にレコードマスター盤を刻んでしまう…昔のSP盤の現代版が)有りました。

 

ドビュッシー 前奏曲第2巻 花火

 こちらはレコードへの記録の限界に挑戦した盤で、結構評判となり ボールドウィンSD10の名を世界に知らしめたコニサー ソサエティ録音盤です。

園田氏の録音に比べてホールエコーが豊かに拾われています。(その為スタインウェイより音量が有ると言うか、少し五月蝿い響きにも感じられます)  モラヴィッツの演奏は元々 少し癖が有ると言われていました。←その拡大鏡の様な…とも今となっては感じます。

 

音楽鑑賞用にはプレスされていない盤の様で…、

LP盤の溝切り幅を広くして片面15分程度に…の際に

フィリップスでミキシングと再編集されているため)

(コニサーソサエティーからの発売は通常LP盤で、

片面にドビュッシーの前奏曲集から裏面には、小どもの領分 が収められていますので通常の溝切り盤)

オーディオチェック的に言えば、アンプもスピーカーも限界で悲鳴は上げていません。(高音域でツィーターの音にビリ付きが有るとか、低音ウーファーが重低音が出せないとか、音が割れるとかも無く…)

 

 

再生装置は…、

ターンテーブル 埼玉Micro製ダイレクトドライブプレーヤー DD-5

カートリッジ Aaudio-Technica製MC3100

6L6GCシングル真空管パワーアンプ(米GE+SYLVANIA球  初段MT管はGE 5814A放送局用高品質球)

phono RIAA偏差置換増幅はSONY AX-5

再生スピーカー 米ALTEC 402A 20cmアルニコフルレンジ +Technics 5cm金属ホーンツィーターがSANSUI製の箱の中に。 …オーディオチェックシリーズのモラヴィッツ盤で再生装置の優秀さは実証されましたが…、音楽鑑賞に耐え得る事も、ミキシング.再編集の際にも加味して欲しかったと思います。

 

 

 

 

他の録音盤で分かっているのは…、

アンドレ ワッツのアメリカ録音盤はボールドウィンのアーチストで、但し来日時の日本でのレコーディングはYAMAHA CFⅡを使用。

 

ホルヘ ボレ(ット)は アメリカ国内ではボールドウィンを使用し、カナダ他欧州ではベヒシュタインを使用。リスト ピアノ曲全集(未完)はベヒシュタインENを使用

 

ポピュラーでは ビリー ジョエルがボールドウィンのアーチストで有るが、スニーカーを履いて、ピアノの上でジャンプする時の使用ピアノの映像はYAMAHA!

 

 

 

 Baldwin SD-10 フルコンサートグランドピアノ とベヒシュタインの関係

ボールトウィン社は1962年から独ベヒシュタインをその傘下に収め、その技術を注入して、満を期して1965年に発表されたのが、ボールドウィン SD-10 、そしてセミコンサートグランドピアノの SF-10でした。

 

SD-10の鉄骨構造(初期型)LP盤で使用も

第三セクションまではフロント アグラフを弦が通る一般のGPと同じ形式


ボールドウィンのバックアリコート式鉄骨共鳴

スタインウェイ式の弦の後ろ側に金属の三角枕元を置いたバックアリコートでは無く、駒から後ろ側の弦を振動させて、鉄骨にヒッチピンから直に伝える…弦を留める大型の黒いヒッチピンから鉄骨へ、木の駒から音の振動がダイレクトに鉄骨に伝わる。

(↓初期モデルのアリコート)

フロントアリコートの構造が後期より単純

(↓後期 フロント側改良型の画像です)

次高音と高音のセクションは、弦のフロント側はベヒシュタインの総アグラフ型で下から弦を押さえるブリッジが個別カットされていて、さらに銀色の金属部が弦の間に在りブリッジからの振動を上の+カポダストロバーへと伝える。ベヒシュタイン+スタインウェイの構造を取り入れている。(ベヒシュタインのアグラフの上側をカットしてブリッジの弦間から金属の枝を通して振動を鉄骨に伝える事で横の弦(両隣の半音の弦の強い共振を避けて澄んだ響きを増幅する…と言う、スタインウェイとベヒシュタインのいい所取りをした構造)


戦前からの旧モデルの鉄骨SD-6⁈

(フロント アリコートの構造も比較すると単純では有るがスタインウェイとは違う)←1900年にパリ万博、セントルイス1914年でグランプリ受賞と横鉄骨に有ります。高音側鉄骨手前にAcoustic Patentedアコースティックパテントと有りますが…どんな特許かは⁇(フロントアリコートの方式を指すとは思いますが)


ベヒシュタイン=木管楽器系の響きのするピアノ。

スタインウェイ=金管楽器系の華やかで、例えようの無い(独特のハーモニーする雑音成分のある)イニミタブルトーンを有する。

 

ボールドウィン=ベヒシュタインの響きが金管楽器系となって巨大な音響を手に入れた様なピアノ。サイズもスタインウェイの274cmでは無く、ベヒシュタインの280cmを採用。→後の FAZIOLIも同等サイズを採用している。ベーゼンドルファーも新型280が有る(鍵盤は88鍵で、92鍵 97鍵では無く)

 

 

Baldwin 2024.(monarch)モナーク

Baldwinブランドですが、アメリカではmonarch名でも発売されていた。

 

弦の前後に有る鉄骨共鳴装置…一見、手抜き⁉︎とも見える←弦の不要な振動を止める押さえのフェルトが全く無いので…。

木製の灰色部分の駒より後の弦は直接に鋳造鉄骨の半円形の凸部に接していて鉄骨に振動を直に伝える。この共鳴効果は抜群で小型アップライトなのにコンサートグランドピアノ並みに高音が鳴ります‼︎(鋳造鉄骨の成分がどうなっているかは分かりませんが、多分、美術鋳物の様に良く振動する材と硬さで造られている…お寺の鐘と同じく 良く響く鉄骨を) 現YAMAHAのUP

の鉄骨は硬くてシンバルみたいな嫌な響きの倍音を含みます。まだ高温の鉄骨にお湯をかけて速く冷ます為に硬い鋳造鉄骨となる為です。分子的な成分の安定結合にエージングという時間を掛けずに、時短、コストばかり見て楽器を作っているからです)

 

ベヒシュタイン社にとっては12n 109cmのアップライトのスケーリング(設計)を盗まれただけ⁇

左側の駒はベヒシュタイン型になった

42インチの鉄骨

40インチピアノ(100cm)は戦前からありましたが(戦場ピアノとしても) この109cmはベヒシュタイン買収後に設計されていますので、他とは音が違います。

後に113cm.118cmも造られていますが、アクションはメキシコ、鉄骨はブラジル、木部組み立てはスペインとMade in USAとは呼べない機種となりました…らを経て、21世紀に入って親会社のギブソンギターの経営難から、先ずアメリカのアップライト工場を閉鎖、その後GP工場も閉鎖となり、2008年以降は全てのボールトウィンが中国製OEM品となりました。

 

アクションはNYスタインウェイのアップライトピアノのアクションと同型(スタインウェイ アッチェラーテドアクションの特許が切れ)が搭載されています。

専門的になり分かりづらいかも知れませんが、ダンバー下の木部に下に向けて、第二のリピテンションスプリングが有り、ハンマーの軸下バットフレンジが3mm程弦に近づくと(四角い木を削り黒フェルトを貼ったその溝にスプリングに触れる…弦を打った後のハンマーの返りを助ける(速く戻す) ことと、グランドピアノの鍵盤も3mm押すと先ずアクションの奥に有るダンパーメカニズムに鍵盤の端の一部が触れて、ダンパースプリングの抵抗を感じるのと近く、グランドピアノのタッチに似た弾き心地を造り出す。このアクションのスプリングはリン銅製の真っ直ぐな細い線を曲げて作り、その調整は手作業になるので、時間と経験を有します。

同時期にYAMAHA YUXには板バネ式の同様なスプリングの特製アクション(連打がグラントピアノに近く効く)を搭載したが(プレスした板バネなので、女性工員(アルバイトでも)がアクションのその部分にネジ留めで取り付けるだけの時短品なので、そのアクションの評判は悪かったです。(経年劣化してもその板バネは代替え部品が無いので、今もYUXのみ中古価格が安いので、X支柱のYAMAHAだからと飛びつくのは要注意‼︎です。板バネが劣化して折れたら替わりは無いので…、多分121cmのYUSも同様な規格かと思います。)


鍵盤の重さもNY STEINWAYの低音51g〜46g最高音より1g軽い50g〜45g。

YAMAHAやKAWAIのUPは55g程と鍵盤の動きが鈍い。(中国製造となったYAMAHAのUPについては弾いたことが無く分かりません)YAMAHA製は200万円以下のUP及びGPは中国製です。アップライトについてはSU7 330万円のアップライトピアノは総国産のピアノです。KAWAI製は国産では有るが、安い機種〜100万円台は響鳴板がベニア合板又はチップを接着剤で固めた寄せ木のものとなっている(ドイツ製の安い機種も今は同じく…)外装も木目調と言っている様に、紙に木目のプリントにアクリルを掛けたもの貼っている。その下も木では無く、MDF 紙を重ねて接着した紙の板のボディーなので全く共鳴しない←ので、よく言えばデジタルピアノみたいに音は良く伸びる。箱鳴りが無い分。

 

一般的に普及しているドイツのヘルツ型のアップライトピアノのアクションではフレンジコードという糸にスプリングを引っ掛けて、鉄棒の逆上がりが上手く出来なかった時の様に、元の位置に戻ろうとしますが、常にバネにテンションが掛かっていてバネ臭いタッチになります。(YAMAHA製UPはこの化繊のフレンジコードが20年からの経過で良く切れていて、戻りの悪い、弾きづらいピアノになっている事が多いです)

 

 

3枚合わせのバックポスト支柱もベヒシュタインと同じ形式

支柱の真ん中は硬い橅材で弦圧を支え、外側は松材で音を本体に伝える役割。響鳴板は真横板貼りでドイツの銘器イバッハIBACH (ワーグナーの使ったピアノ)と同じなので、木目が横平行に見える。斜の棒状のものは響棒と呼び、張り合わせた響鳴板の補強と響きを均等に伝わらせる意味があり、ボールドウィンは45°の角度で響鳴板と接している。響鳴板 響棒 支柱の組み合わせで音が広がって豊かに聴こえるのがボールドウィンの設計。

 

 

 

ドビュッシー 月の光から

ソフト(弱音ペダル)を 1小節間を除いてずっと踏んでいます(踏み方の加減はありますが) 動画の後半部分で特に高音域で上記した、鉄骨共鳴装置の威力が発揮されています。

 

 

…家も建て直しになり、防音室も4畳と狭く、趣味で弾くには、気分はフルコン…でボールドウィン 2024が丁度良いです。NY STEINWAYの同型のUPピアノの1/2程の値段でしたが、同じアクションしかも、化学材は一切使っていない、木製 羊毛フェルト 鹿革の天然素材で、ベヒシュタインに倣った強靭な本体の設計で、年間を通してピッチの変化も2Hz以内 A=441Hzで調律して 441〜443Hz内に収まっています。(前回調律から10ヶ月の間)音の安定度からもYAMAHA製よりも上です!国産の様に先ず最高音域から音程が下がってきて音が汚く感じる…が起こらないので!
(当時YAMAHAよりも高かったので当たり前ですが…、G2.G3のグランドピアノなら買える値段でした)

 

 ベヒシュタイン側からすると1962年から88年までのボールドウィン支配下の時は暗黒の時代(ベヒシュタイン技術者が良く言います)技術を盗まれただけで…、このモデル2024もベヒシュタインの12n 109cmの42インチピアノのスケーリングを盗んだ!…時短で総アグラフにはしなかった点は現行のベヒシュタインのアカデミーシリーズも同じく)なのですが、私からするとベヒシュタインの設計を盗んで作ってくれてありがとう!ボールドウィン‼︎です

 

 

 

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