米RCA の ファミリーライブラリー 12巻

ジャケット表のピアノはベートーヴェンの使用したC.GRAF コンラット グラーフ作で、聴覚の弱って来たベートーヴェンの為に4本弦のピアノを製造した(普通のピアノは3本弦) 但し4本弦は調律が難しく、思った程には音量増幅とはならなかったらしい…。

今回のピアノも4本弦に縁がある (東)ドイツのBLUTHNER ブリュートナー ピアノです。

 

世界的に活躍した日本人ピアニストというと、内田 光子 中村 紘子 宮澤 明子 …園田 高弘 野島 稔 …らよりも、前? ナカジマ ハナエさんと言う方が…、 

先日亡くなられた フジコ ヘミングさんとは同年代でしょうか? 主に東欧の方で活躍された様で…。二人はピアノも当時 東ドイツのブリュートナーを弾かれていた…という共通点もあります。

 

この当時はオーケストラのソリストとして録音に選ばれるだけでもヨーロッパでは大変な事でした。

 

 

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第五番 皇帝

pf. 中島 皇恵   ニュールンベルグ響  第一楽章から 

 ピアノの響きがオーケストラに埋没しがち⁉︎

そういう録音なのか ピアノ(ブリュートナー)のせいか⁇ (多分両方!) その分、普段聴く(ポリーニ)皇帝では、

ピアノの音に集中し過ぎていて オケの音は余り聴いていなかった⁉︎  聴き慣れていなかった音が良く聴こえます。メロディーラインを弾いていなかった時のチェロはコントラバスと同じ動きをいつもしてる(慣例)訳では無い…、木管楽器(2パート)の響きと 木管同士でのメロディーの引き継ぎも鮮明に聴こえます。弦のピッチカートとピアノの左手との共奏も、ピアノのパッセージが木管のソロメロディーのオブリガード(冠 飾り)になっている部分も良くオケと溶け合う響きのピアノです。

 

 

60年代の録音の様です。®️1966 再販1970.73,

ファミリー企画の廉価盤の為か?元々の録音がRCAからのリリースの割には 余り良く無い感じ…。←RCAは1959年迄 25cmLP盤(開発側) モノラル録音に拘りが有り、そのノウハウは高かったのですが、時代は英EMI (米CBS) コロンビア系の30cmLP ステレオ録音へと舵を切ってしまいましたので…。少し懐かしい、古めかしい響きがこの頃のRCAには残っています。古い=悪いでは無いので、聴き進んで行くと耳に馴染んで来て、その良さが感じられて来ます。


同  第一楽章終結部

 新しい ベートーヴェンの皇帝の魅力を感じます。

ベートーヴェンのオーケストレーションの素晴らしさを(今更ながらに 再認識)ショパン チャイコ ラフマニノフ …素晴らしいピアノ協奏曲は他にも有りますが、オーケストラと対位法の抜きん出た手法はベートーヴェンには敵いません。

 

 同  第二楽章(全)

 オーケストラとの融合、共演の第二楽章です!



 カートリッジはaudio-TechnicaのMC型です

 

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第五番 皇帝

第三楽章(全)  pf. 中島 皇恵 ニュールンベルグ響

 ホールで聴く(A席辺りの中央よりも後で)ピアノ協奏曲の響きというのは こんな感じなのかも知れない。

 

LP や CD録音の際にピアノがクローズアップされ過ぎている⁉︎ 編集段階でのバランス感覚の違い。

改めてベートーヴェンの 皇帝が彼のピアノ協奏曲の集大成で有った事を再認識させます。

 

日本では余り知られて居なかったピアニストの? 中島 皇恵さんですが、凄くクレバーな 皇帝の演奏をしています。

 

ピアノ協奏曲の譜面(例)

Ⅰはソロピアノ Ⅱはオーケストラを纏めたピアノ(2台のピアノ用)譜を見て練習します。(コンデンス(纏めた)スコア版 ) 

 

Ⅱの譜面には …この旋律はfl.程度の補助記はドイツ系のものは有るが、フランスのデュラン版には(例えばラベルのピアノ協奏曲)には音符以外は何も書かれていない)

 

彼女は海外に居た為、オーケストラの指揮者の見る フルスコア(全パートの音が書かれている為1ページ(例えば4小節)に二十数段の五線譜🎼の有る冊子を詳細に

読み込んで ベートーヴェンの 皇帝 を熟知してから、演奏していると感じます。

(例、左手のこの動き音型はファゴットとの2重奏になっているのでfgを聴きながら弾く…など) オケパートを十分理解して。

普通 コンデンススコアを見て練習しておいて、ピアノの先生と2台のピアノで合わせ練習をしてからオケと 皇帝を 合わせた人では 決してこの様な演奏は出来無いのです。1960年代の日本ではフルスコアを手に入れる事ですら大変な時代でした。

日本人的な繊細緻密な 皇帝 の演奏になっています。期待していなかった⁉︎ニュールンベルク響も凄く良い演奏をしている。

(簡単にレコーディング、LP盤の発売など出来なかった時代ですから、気合い⁉︎の入り方が違う⁉︎ )

 

 

 

 

金属共鳴を排したピアノ BLUTHNER  

ピアノの基本設計で ピアノを叩いた打撃音は出しません。叩いても一定以上の大きな音は出せない設計で、決して叩く様に弾いてはいけないピアノだと習いました。

高音域の芳醇で純粋、しかも軽やかな響きがブリュートナーの持ち味で 新たな皇帝の魅力を引き出しています。競奏では無く 共奏する協奏曲です。

 

 

BLUTHNER  ブリュートナーピアノについて

戦後のピアノだとは思いますが、初代ユリウス ブリュートナーの設計のままに造られていたフルコン〜1980年頃迄は。

ベートーヴェン ピアノソナタ 第24番テレーゼ  pf. 中島 皇恵

 

初代ユリウス ブリュートナーの設計のままのフルコン使用で第四、第五セクションにアリコート(共鳴する4本目の弦)が張られていますので(右手側の高音域)オンマイク録音で、その効果も良く分かるかと思います。

 

 

最近設計変更されています BLUTHNERの1型フルコンサートグランド

長さは280cm かつては鉄骨のセクションは5つに分かれていましたが(レコードジャケットのブリュートナー)統一ドイツ後に、ブリュートナーの子孫に会社を戻されてからの設計変更で、今は4セクションになっています。

 

アリコット(共鳴弦システム) 3+1(共鳴弦)の4本弦

1段高い所に同音のハンマーで叩かれ無い弦が張られていて3本弦の直ぐ横にあるので、共振による響鳴作用も大きく音色も綺麗です。

 

芳醇な高音域の響き、まるでオーケストラの様な…とも例えられるブリュートナーの響きを創ります。世界一純粋な響きのするピアノ、それが故に少し高音域の響きが硬い音と感じる人も居ます。

 

スタインウェイとは対極にあるピアノ

 

鉄骨は共鳴させない 弦の圧を支える為だけのもの

鉄骨と響鳴板は直に接しない構造。

弦の振動は木材の響鳴板とボディーのみの設計。

(鐘をガーンと鳴らすか、拍子木をカーンと響かすかの違い…鐘の音の方が太く、拍子木の音の方が比較すると細くて鋭い音がする)

 

オーケストラの響きと良く溶け込むピアノの音の為、

ピアノ協奏曲でピアノの音がスタインウェイの様に抜きん出て聴こえこないピアノ…、中小ホールや室内楽に適したピアノ(とも言われて、最近設計変更をして、大ホールにも充分に対応できる様に)

 

 

世界ではイギリス人に一番愛されているピアノがブリュートナーで、その製造数の約半数は英国に輸出されています。(日本には年間数台程度しか無い 輸入代理店は横浜に有ります)

 

ベヒシュタインの響き

 比較に…、多分 BECHSTEIN Eを弾く 1960年代の録音で C. アラウの弾くベートーヴェンの皇帝です。

(ポリーニの次に良く聴いています)

 

 YouTubeから pf.クラウディオ アラウ

この当時、アラウは自宅でもベヒシュタインを弾いていました。(もしレコーディングにスタインウェイが使われていたのだとすると、相当古い戦前の?少し くたびれたスタインウェイに聴こえる(調律の酷い⁇)←スタインウェイは当時の現代的な響きのするピアノで、ベヒシュタインには古典的な香りが有るので…。

 

かつてのベヒシュタインも響鳴板の響きのみを増幅する設計でした。その時代のE型の響きです。


 

最近のBECHSTEIN D型 280cmです。

image

  追悼 十八番の曲を 新型ベヒシュタインでの演奏です。YouTubeから

 

 

 

 

 

BLUTHNER とBECHSTEINの響きの違い

 

オケとの融合を目指すか ソリストを目指すか…、

東西の両横綱とも言われたピアノ同士。

設計上の違いはブリュートナーには4本目の共鳴弦が張られている為、オクターヴは厳密に合わせて調律をしないと色々な問題が起こってしまいます。(調律が破綻してしまう事に)

 

ベヒシュタインはオクターブを2振動分広めにとって あたかもヴィヴラートが掛かっている様な響きで音を伸ばす設計です。

 

数字で示してみますと

A1 ,442Hz - 884Hz オクターブ上の音

A2 ,442Hz - 886Hz ベヒシュタイン

となり、ピアノの一番高いAラの音同士では8振動の違いがあります。

オクターブの取り方がオーケストラと同じく厳密なのがブリュートナーで、その響きは純粋でオーケストラと融合しやすく、

ベヒシュタインはオペラのソリストの声の様にヴィヴラートを効かせて鳴る(耳に響きが残る)設計なのです。

 

 

 …どこで 聴き比べて判断するのか⁇

やはり 高音域の響きの違いですね。

良く聴くハンブルグ スタインウェイの

響きを 標準とすると

ベヒシュタインには(旧E.EN)総アグラフの独特の鳴り方と ヴィヴラートする音の響き方、高音域はある1点から音が放たれる感じの響きがする(スタインウェイはプレッシャーバーやベルサウンドシステムにより 広がる感じの 面の響き)

ベヒシュタインの新型Dはクリスタルな響き。(余り好きでは無いが…)

 

ブリュートナーは共鳴弦を使った芳醇な響きと正確なオクターブの澄んだ響きに…。

 

ベーゼンドルファーはその独特な響きと

最高音域は大きなプレッシャーバーが弦を押さえるので その鋼の響きから。

(主に中低音で まずベーゼンと思う)

 

ファチオリやかつてのフランス系のピアノはドイツ アメリカ系と比べると、異質のラテン系の明るさが有る(力強い 重厚な とは違う) その中でもファチオリは現代的な響きがする。(何もそのピアノで古典派を弾かなくても良いと思う…ので詳しくは割愛)

 

 

 YAMAHA CF(X) は 最高音域はスタインウェイよりも鳴る 叩き気味の音はキラキラトーンが出て 特にプロコフィエフには、低音もオケと溶け合わないので良く聴こえて鮮やか( どこかに体育館にあったピアノの聴き慣れた響きが残っている!)

低音はスタインウェイ程の伸びが無い。

(ガ〜ンでは無く ガン〜と伸びる)

 

(S.)KAWAI EXは スタインウェイ YAMAHAよりも鳴らない、ブリュートナー系の響きで(かつてはブリュートナーコピーだったその響きは今も残っている)綺麗な響きだが全体に少し音が細い(ブリュートナーの重厚な低音の鳴り方とは違う)

〜1000人、1500人程度の大ホール(ショパンコンクールの会場のフィルハーモニーァホール)では大変良い響きがする。