オーガスト フェルスター (東独読み アウグスト フォルステル)

August Forster  Georgswalde C.S.R 1926年製造 フルOH済 

 

バッハ プレリュード ハ長調

神戸より移動600Km. OH後届いて即録音なので

此方で調律して無いのですが…。

 

 

Georgswalde は現在地図上には無い様なので、チェコのイジーコフという人口3600人程の町です。(戦前には大きなピアノ工場が其処に有りました)

 

Georgswaldeで検索すると1900年代には、オーストリアのボヘミアの街、工業都市と翻訳されて出てきます。プラハの北東。

ウイーン製のピアノの鉄骨はチェコで今も造られていますので(ベーゼンドルファー)19世紀からの鉄鋼業の町だったと思います。現在はリネン(麻の一種の繊維)の町だそうです。

 

(Googleの地図によると)ローバウ Lobau((ドレスデンの東に位置する)に在った方の工場が、戦後に東ドイツに組み入れられて、デムッサ公団に属してピアノは一括製造となり、(ブリュートナーを第一のピアノとして、それに次ぐブランドにアウグスト フォルステル、その下にツィンメルマンらが有った)静岡県磐田市にあった日本ベーゼンドルファー社(浜松ピアノセンター)にはこの3種が輸入されていた。ツィンメルマンは統一ドイツ後にベヒシュタインに買収されている。ブリュートナー、アウグスト フォルステル共に 一族子孫に会社が戻されて、製造継続されている。(3大名器とは違い、身売りされていない点は東ドイツに属していて良かったのかと。←東ドイツ時代 デムッサ公団によって ピアノの木材の山が管理されていて ドイツフィフィテ(響鳴板用松材)ブナ材楓材が木材倉庫に豊富に有った点が大きい。ベヒシュタインがツィンメルマンを買収したのは、旧東ベルリル側に工場を移転する為と、豊かな木材倉庫を手に入れる為で、ツィンメルマンの製造は後にポーランドに移した。(西ベルリルの端に有ったベヒシュタインの工場は統一ベルリルの街のほぼ中心地となり、ピアノ製造に於ける大きな騒音が問題となった…、ホフマン社を買収してベヒシュタインは工場を其所に移してから音が変わったと言われる←最終調節をするマイスターの部屋の広さ高さ響きが変われば音も微妙に違って来てしまう)2003年にドイツではピアノ用木材の無期限伐採禁止が法律となり、半数以上のピアノメーカーが製造を中止←中国資本にブランドを買い取られて、中国で製造されている(一体一路政策に乗り⁉︎) ベヒシュタイン傘下ブランドになったホフマン社は、チェコのペトロフの隣に移転(ペトロフの部品を使ってホフマンブランドのピアノを造る)となった。

 

鉄骨のエンブレム と弦を留めるアグラフ(金具)

 

YouTubeから

pf, シュピールマン ショパン ノクターン遺作 1980年 この演奏の方が耳に馴染みがあるので、映画のサウンドトラックに使われた⁉︎ (戦前のSP盤の録音も有る様です) このCDは映画の後で購入しました。

(映画の中シーンではBECHSTEINの映像の様でしたが)

 

 

鉄骨 弦を外した響鳴板に2つの工場が

 90年〜経っても響鳴板に割れ無し

 

オーガスト フェルスター社は戦前には

チェコスロバキア と ドイツに工場が有りました。チェコの首都プラハはハプスブルク家の夏の離宮が有りましたので、文化的な都市です。モーツァルトも圧倒的に受け入れられたのはチェコでドン ジョバンニの初演も喝采のうちに終わりました。

 

弦を抑えるダンパーフェルトも新しくしています

ハンマーはドイツ アーベル社にて巻き直し(芯の木部をドイツに送って)してもらいました。

 

 

響鳴板に割れは無し…、、

低音用の駒の表面の楓材(下の芯材のブナの上に楓材が貼られています)90年以上弦圧にさらされていたので細かな割れが出て来てしまっていたので、造り直しました。

低音の音の伝達も良くなり音も太く響く様になりました。

 

 

ドイツ工場は現在も存続。

チェコの工場は世界大戦で爆撃を受けて壊滅しました。ドイツ工場の方は戦後に東ドイツに組み入れられて、デムッサ公団に属して製造が続いていました。ベルリンの壁の崩壊の後、アウグスト フェルステル家に工場を戻されたので、現在10代目が継いでいます。主に中国とアメリカに出荷されていて、日本には輸入代理店が無いので個人的に並行輸入するしか有りません。

 

 

チェコ工場製のピアノにはウインナアクション系(面影を残すアクション)が搭載されています。

調律師の特権?鍵盤に調律に来た年月日とサインが鉛筆書きされています。

 

 

ウインナ式アクション(グランドピアノ)の跳ね上げ式を90度変えた様な その名残の有るアクション

鍵盤の上にはフェルトのみで、その部分にアクションからの金属部分が乗って、そこを突き上げられるのですが、2箇所の木部の連結部によって、力の働く方向が少し変えられますので、跳ね上げ式のウインナアクションの名残り(グランドピアノでは一番奥に在るバーにアクションの一部が触れて、力の方向を変えて跳ね上がる様に動いてハンマーが弦を打ちます。グランドピアノの場合はドイツ(英国)式アクションとウインナ式では ハンマーの円弧を描いて動く向きが逆向きになります。)

 

 

アブストラクト(連結された)アクション

ドイツ式のアクションは(境目の右を見て下さい)横に出ている半円の木部下に鹿革やフェルトが貼って有ってその底を、鍵盤の下から突き出た部品が叩き上げます。

このアクションは横に広い半円部分下と縦の木が繋がっており、更にその縦の木は後の横からの木部とも繋がっています。

現在の主流の(ドイツ式)アクションはこの半円部の下部にフェルト、鹿革(合成皮革)が貼ってあって、鍵盤の後ろから突き出た円筒形(今は樹脂製)が、半円形の木部のフェルトと革のヒールを突き上げる事でハンマーが弦を打ち、音を出します。(ドイツ式の方が直接的に力が伝わります)

 

ローバウ製のピアノにはドイツのアクション(現在のものにかかなり近い)が搭載されていますので、同じオーガスト フェルスターでもチェコ製とは音色が違います。(弾き心地もチェコ製の方が軽やかな感じでウインナアクションを感じさせます)

(同じく1920年代のもので黒塗り三窓のLobau製も弾いた事があり、比較すると硬めの響きだと感じました タッチも やや重めに感じました 音に重厚感は有ります)

 

本器の方がウインナ系アクション搭載で柔らかい響きで、ポンポンいう感じでウインナトーンを思わせます。(比較すると少し音が細い感じです)

Lobau製も鉄骨構造は同じ

総アグラフの弦割りはC.BECHSTEINと同じ

(この弦割りは国産ではOHHASHI  Diapason も同じでベヒシュタインのコピー系です←左端4鍵盤が2本巻線、YAMAHAは3鍵(変更有り) 他社は2鍵が多い、安い機種は此処に2本巻線は無い)低音側との音色の繋がりを考えてそうしているので)

 

 

 

映画

戦場のピアニスト の シュピールマンの愛したピアノです。(ポーランド系ユダヤ人ですから、ドイツ工場製では無く、チェコ製の方を選んでいます)

 

YouTubeから ポーランドTV 1997年 

ショパン ノクターン遺作 嬰ハ短調

pf,  W. シュピールマン  ワルシャワの自宅にて録画

ピアノ …アウグスト フェルスター(チェコ)

 

弦も全て新しい レスロー製に張り替えました。

 チューニングピンも新調しています。

ハンマーもアクションのフェルト類も一新。

 ドイツ ヤーン社又はレンナー社製と交換。

 

あと100年使える様にと丁寧なOHです(計10ヶ月)

                (5月後半に高田馬場に行きます)

 

到着2日目 同じ曲を演奏してみました。

ショパン ノクターン 嬰ハ短調 遺作

 調律は未だしていません。あいにくの雨模様でした。

 

 白黒ですが、ソ連時代の動画でアウグスト フェルスターGPを弾く…が有りました。

ショパン スケルツォ第2番

 pf.ベラ ダビドビッチは戦後最初のショパン国際ピアノコンクールでH.C.ステファンスカと1位を分けあった(1位次席) 実力者で後にヴァイオリニストの息子の為にアメリカに亡命しました。

私事ですが、彼女とピアノを弾く奏法がかなり似ています。(東音のロシア(モスクワ留学)派の先生に習った事も有りまして、手首は鍵盤と平行、又は強音は手首を下げて弾きます) おおまかに言うとフランス-旧ロシア系の弾き方になります。(戦後のロシア派の鋼鉄のタッチは使いません)

 

 

 

 

 

 同じGeorgswalde 製の自動ピアノの演奏

YouTubeから

構造 外観デザインも同じなので ステンシル(OEMの可能性高い⁈) でも こんな硬い音では有りません(自動ピアノは鍵盤の下から、空気の力で鍵盤を下に引っ張って音を出しますから…指を垂直に立てて鍵盤を叩く弾き方は 普通のピアニストはしないので!)

自動ピアノとは そういう弾き方でそういう音がするピアノになります。(紙に録音された演奏家のニュアンスに近くする事も出来るのですが、高度な再生技師が操作しないと…白いロール紙に赤や青の鉛筆で書かれた演奏曲線が初めから終わり迄あり、いくつかあるレバーの針先をその色鉛筆の軌跡に沿って動かして駆けるとかなり らいし響きを醸し出します。(このYouTubeの様に ただロール紙を回して音を出しているだけでは この音になってしまいます!

 

 

ポーランドの国の中では…、 

肥沃な大地の農業国からソ連を中心とする東欧となった時には工業国にされて、食糧に困る国に…、

戦前迄のポーランドで考えますと、ポーランド製のピアノとしては(当時ポーランドは100年間、国が地図上から消滅していたので) ED.SEILER ポーランドのレグニーサ(独リーグニッツ)製が有名でした。ザイラーは名前の通り 船乗りさんなので、アングロサクソン系で デンマーク→ポーランド→(戦後ポーランド工場は没収されてポーランド国営のレグニカピアノの工場とな) 暫くはデンマークに戻り→1960年から西ドイツマイン川沿いの街 キッチンゲンに近代的工場を作り、現代までピアノの製造を続けています。(中位及び下位機種は中国製又は中国製を日本又はドイツで最終調整してから出荷するのが中位機種、ドイツ製は上位機種のみ)

ポーランドの元ザイラーの工場はベルリルンの壁崩壊後に国営レグニカピアノは廃業し、其処に東ドイツだったツィンマーマンが入り、現在はベヒシュタインのOH工場となっています。

↓ポーランド人は作業は丁寧ですから…。

 

現在フルOH中のザイラー125です。鉄骨にも(ポーランド)レグニーサ製が刻印されています。1927年製

全弦交換、響鳴板修理、アクション全交換(国産に)

現在ドイツ圏(レンナー)では125cm用のアクションは製造されていない(110cm又は130cm用のみ) 国産にはまだ有るサイズなので国産アクションに全交換。

(ドイツレンナー社製もこの普及ランクのアクションはチャイニーズレンナーになってしまって、シュトットガルトには本社が有るのみなので、国産の方が安心)

 

ザイラーの音は 一言で言えば、スタインウェイから

鉄骨共鳴装置を全て外した様な響き。家庭内で演奏するのなら、弾いているとこの響きで充分なのではないかと思われてきます。贅肉質では無く、ポーランドの美男子の様に キリっとした(少し細身で)美しい響きがします。響鳴板に特徴があり、ヴァイオリンのストラディバリよりも前の名器、アマティーの構造的な模倣がされています。(その為か広いコンサート会場よりは家庭、プライベートコンサート向きなピアノです。)

 

ポーランドに行くと、意外と多いのが この戦前のザイラーのピアノかチェコ製のオーガスト フェルスター。スタインウェイはハンブルク製でも本社がアメリカNYなのでアメリカ資本として受け入れられていて、(ベヒシュタイン、ベーゼンドルファーは余り無い)戦後のものとしては同じ東欧圏だった関係で東ドイツ時代のブリュートナーピアノ。他のユーロ国よりも日本のKAWAIや YAMAHAが多く入っています。(少し音が細身のKAWAIの方が人気が在るのは ザイラーやオーガスト、そして戦後のブリュートナーの響きに馴染みのある地のせいもあるかと思われて来ます…KAWAIの戦後のお手本はブリュートナーのピアノでKG2.KG7のグランドピアノはブリュートナーコピー系でした) ショパン国際ピアノコンクールでも話題になったのは S.KAWAI EX とイタリアのFAZIOLlでした。

 

オーガスト フェルスターを高田馬場に納めた後、入って来る予定です。