新堂隼人、ピアノ製作者のブログ in ドイツ -4ページ目

職人

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。




私事なのですが、昨日、1月2日から4日にかけてドイツの職業学校で行われたピアノ製作者のための終了試験に合格し、Geselle(独:ゲゼレ)の国家資格を取得しました。



Geselleというのは「職人」という意味で、マイスターの1つ手前の階級を表わします。ドイツにおいては、今日から自分は職人であると言えるようになります。



3日間かけて行われた試験時間は計24時間で、その中に13鍵盤を持つピアノの製作、アップライトピアノの調律、そして追加課題が含まれていました。



時間に追われた試験中のこともあって、さすがに合格発表の日は試験を受けた友人たちも、そして僕も緊張していました。



合格発表の時に受け取ったGeselleのための証明書はドイツで働く上でとても大切なものです。



まだまだ勉強する事は多いのですが、1つ1つ着実に技術を身につけていきたいと思います。



職業訓練の終わり

日曜日の夜。ドイツの今年の冬は例年より暖かかったのですが、ようやく各地で雪が降り始めたそうです。



今年は12月22日が仕事納めで、来年のはじめに実技の終了試験を控えていますが、工房での職業訓練は22日で終わります。



3年半の職業訓練の間、色々な事があったのを思い出します。



言葉の壁に悩まされた事、日常生活においてのトラブル、ドイツ人の性格を理解するのにも時間がかかりました。日曜日にはほとんどのお店が閉まっていることや、事務的な手続きがなかなか進まないこと。色々な事が新鮮でした。



考えてみればドイツに来るまでの25年間を日本で過ごしていたので、ドイツでの生活に違和感があったのは当然の事だったと思います。日本から出てみて、良くも悪くも「日本らしさ」を感じたり、勉強したこともありました。



実習で今の工房に初めて行った日、僕を工房で働いている人たちに紹介してくれるはずだったマイスターが来ていなくて、「あなたは何者なの?」と皆に聞かれたのを思い出します。



僕が職業訓練をしている間に工房を去ってしまった人たち、新しくやって来た人たち。色々な人がいましたが、皆から本当に沢山の事を教えてもらいました。



いつも忘れてはいけないと思うのが、ピアノはヨーロッパで発明され、進化した楽器だという事です。日本人が日本の国技や伝統文化を感覚的に理解できるように、ドイツ人はピアノの事を理解することができるのだと思います。



これはなかなか努力によって克服するのが難しいものでもあると思うのですが、長く取り組む価値がある課題でもあると思っています。



長くなってしまいましたが、残り少ない職業訓練の期間、頑張りたいと思います。



有意義な時間





この時期、出勤する時間帯は真っ暗なのですが、歩いていると何処からともなく「ガリガリ」という音が聞こえてきます。



車のフロントガラスが凍っているので、それを削り落としている音なのですが、これを聞くと冬が来たなあという気がします。



工房では職業学校の卒業試験の準備をしています。課題であるオクターヴのピアノを作っては分解し、作っては分解し…という作業を繰り返しています。



試験時間は限られているので、なるべく無駄な手順を省き、効率よく作業を進める事をいつも念頭に置いています。



話は変わるのですが、昨日、一か月ほど中国へ出張に行っていたマイスターが帰って来ました。そして、今日は海外の販売店を招いたピアノ展示会があったので、昨日と今日はマイスターと作業をしていました。



ピアノを弾きながら、「この音には力がないね」、「ちょっと音が尖り過ぎているかな」、「もうちょっと音を解放させないとダメだね」、「低音部と高音部のバランスはどうだろう」などと言いながら作業を進めるのですが、色々と勉強が出来ました。



マイスターが言っていた、「音を作るのはIntonieren(整音)の分野の仕事だと思われがちだけど、鍵盤やアクションの調整、調律でもそれが出来るっていう事だよね。あと基本的な事だけど、弾いた分の力をそのままダイレクトに使えるように調整をする事。ピアノの中には隙間が必要な部分と、そうではないところがあるからね。」という言葉が、昨日の作業を簡潔に表わしていると思いました。



冒頭の曲は、昨日と今日の作業中に弾いた曲です。