新堂隼人、ピアノ製作者のブログ in ドイツ -2ページ目

全体と細部のバランスを大切に。

ドイツは今、日曜日の夜です。



ここ数日は気温が上がり、20度を越えているのですが、それ以前は気温がマイナスだった日もあったので、こんな時期は体調管理をしっかりしなければと思います。



ドイツで職人の試験に合格してから、もうすぐで4カ月が経とうとしています。

職業訓練を受けていた時と現在で、何が大きく変わったのだろうと考えてみたのですが、それは「ピアノの生産ラインの中で仕事をしている」という事かもしれません。



物を作る仕事には納期があり、その期日までに出来る限り良い仕事をしていかなければなりません。その中で最近よく意識している事があります。



それは「常に全体を把握する」ということです。



まだ出来上がったばかりのピアノは全ての部品が新しく、馴染んでいません。そんなピアノが並んでいる中で、マイスターは、「簡単に調律だけして、まだ整調や整音がされていないピアノをザッと弾いてみて、最初の印象を持つのが大切だよ。それも試弾の時間は、とても短くね。」と言います。



整調や整音がなされていないピアノは、とても弾きづらいもので、弾き心地も良くなければ、聞こえてくる音の音量も音色もバラバラです。



そのような、サイズが同じ、つまり設計が同じピアノを弾き比べてみると、確かな違いがあります。設計が同じでも、例えば使われている木材の年輪や、細かい部品の角度の相違などから、第一印象の違いが生まれます。



その違いを聞いた後で、そのピアノに一番必要な仕事が何かを考えたりするのですが、先に全体を把握しておくと、かなり仕事がスマートに進みます。



特にピアノのアクションなどは細かい部品がとても多く、しかも細かい部分を調節すると弾き心地や音が変わったりするので、つい仕事をしていると、細かい部分にとらわれてしまいがちです。



ある先輩は、「僕は一つの工程をいつも3、4回に分けてやるんだ。最初は大雑把に、その次は少し細かく…という風に。そうすると疲れないからね。とにかく1日は長いから、頭や身体がいかに疲れないように過ごすかが大切。」とも言っていました。



個人によって方法は様々ですが、自分にとって、いかに負担が少なく、頭や身体をフレッシュな状態に保てるかを考えつつ、気がついたときには全体を見渡してみる、という事が大切だと考えています。









春の訪れ



時間帯によっては肌寒く感じることもありますが、大分、暖かくなりました。


この時期の天気には、ドイツ語でAprilwetter(4月の天気)という名前が付けられていて、快晴だなと思った後に大雨が降って来たり、それがすぐ止んだりという風に、コロコロと変わりやすい天候が続くので、傘の携帯が大切です。




最近では、陽が長くなってくるのと同時に、春らしい花が咲いています。


1枚目はGoldregen(ゴールドレーゲン)と言って、直訳すると「黄金の雨」、日本ではモクゲンジと呼ばれているそうです。


2枚目は桜です。日本の桜とは少し違いますが、それでも桜を見ると懐かしい気持ちになります。




今日は日曜日ですが、工房にピアノの練習をしに行って来ました。


あまり週末に工房に来る人たちはいないので、とても静かですが、落ち着いて練習出来ます。







古い楽器に見る新しさ


突然ですが、上の写真はアップライトピアノの中のアクションで、写真の中央にある部品をドイツ語でHammernusskapsel(ハンマーヌスカプセル)と言います。


アップライトピアノに限らず、ピアノの中には他にもカプセルと言う名の付く部品が多くあります。この中にある軸は、人間で言うと関節の役割を果たしていて、適切に動くように調整されていなければなりません。


例えば、軸の周りのフェルトが湿気の影響で膨張して、軸の動きが鈍くなったり、元々ゆるい軸が入っていたために余計な動きがあったりすると、軸の交換をしなければなりません。


そして軸の交換をするのには、部品をアクションから取り出し、古い軸を抜き、寸法を測り、新しい軸を入れて…、と時間がかかります。交換しなければいけない軸が多い時はなおさら時間がかかってしまいます。今日は同僚から興味深い写真を見せてもらいました。



これは1880年製のBlüthner(ブリュートナー)というメーカーのアップライトピアノにあったカプセルなのですが、これはとても画期的で、カプセルに付いているネジで、軸の締まり具合を調整することが出来ます。

つまり環境の変化があって、軸がきつくなったり、ゆるくなる事があっても、その度に軸を取り出したりする必要がないので、とても速く仕事が進みます。


このような今のピアノには無い工夫を、古い楽器ではよく見かけることが出来ます。