昨夜、寝る前に見たTVの天気予報によると、今日の最高気温は16℃らしい。
まさか、そんなに涼しいわけないでしょ、まだ8月だよ。
半信半疑ながらもとりあえず、東京から持参した秋物の薄手のジャケットを
デビューさせてみることにした。
わたしの風邪の具合は、相変わらずだし、防寒対策は徹底しておいた方が無難だ。
さて、そのわたしの体調について。
昨夜から風邪薬を服用したり厚着したりで早めに対処しておいたから
こじらせてはいないが、ときどきむせてしまう。
朝食を済ませてから、さっそくネットカフェへgo。
この辺はもう日課になりつつある。
ついでに、郵便局でアパートの持ち主が残していったガス代の支払いを済ませ、
日本へ手紙を送ったりした。
ひととおり市街でする用事が済んだところで、奨学生担当係まで移動。
Chazar Andras utcaというところで下車。
するとどうも見憶えのある景色である。
いまから7年半前、わたしが初めてこの国を訪れたときに
旧友のぺー氏とともに宿泊した安宿の真ん前だった。
なんという偶然だろう。
これから新生活を始めようとしているときに、
知らず知らずのうちに原点にたどり着くなんて。
とかなんとか、現を抜かしていたら、いきなり携帯が鳴った。
おそるおそる電話に出てみると、おっさんの声が洪語でまくし立ててきた。
断片的に聴き取れた語彙から判断するに、インターネット会社の人のよう。
いま家近くまで来てるから、出てくれとのこと。
そんなの無理ですよ、だんなー。
けっこう遠くまで来ちゃってるんだから。
すると、今日何時に在宅か?と訊いてくるので、
「13時までにはいるようにするから」と命からがら応答することができた。
このチャンスを逃したら、次はいつ来てくれるかわからない。
社会主義時代の官僚制の名残の色濃いこの国では、
あちらがやってくれると言ってるときは是が非でも合わせるしかない、
それが少しでも気持ちよく暮らしていくための知恵となるはずだ。
とまあ、なんとか電話は片付いた。
時刻は11:20過ぎ。
さっさと奨学金の方の用件をやっつけてしまわないと、予定が押してきた。
道に迷ってる暇はない。
ちょうど良いことに、例の安宿の前で感じの良さそうなおじさんが
庭仕事をしているのを発見。
とっ捕まえて片言の洪語で道順を聴いてみたら、
ゆっくりとした口ぶりで丁寧に教えてくれた。
言われたとおりに歩くこと数分、目的地の「教授の家」なる場所に到着した。
建物のゲートをくぐってからお目当ての担当者に辿り着くまではややてこずったが、
無事にアーグネシュさまにお会いすることができた。
手続き、というか必要書類(健康保険の加入証書とか)の受け取りは
すんなり終わってくれたので、
しばらくしてから成田空港から郵送した荷物が届くだろうことを確認し、
ほかに、洪語のコースはどこでどうやったら参加できるのかとか、
どうやったら市内交通の学割定期券が買えるのかとか、教えてもらった。
アーグネシュさまは、わたしの事前の予想とは大いに異なり、わたしと同世代の、
とてもキュートで英語も達者な方だった。
それに面倒見も良さそう。
この人だったら、信頼できそうだ。
こうして、いよいよアパートへと引き返す。
途中バスの乗り換えのついでにマッチっていうスーパー・チェーンで
食料を軽く調達して帰った。
帰宅して昼食を済ませ、ネット工事に必要なひととおりの書類を揃え、
部屋をざっと片付けて来客を待つ。
相手の持っていたこちらの住所が微妙に間違っていた関係で、
訪問までにムダに時間がかかってしまったが、無事におっさんに会うことはできた。
しかししかし!
彼は、わたしにADSLモデムを手渡して、受け取りのサインをもらうと
早々に立ち去ってしまった!
「ちょっと待った。家って、まだ電話開通工事済んでないんですけど。
おじさんがやってくれるんじゃないの?」
急ぎ足で訊いてみたら、
「箱の中にマニュアルがあるから、あとはお任せします」
的なことを早口で言い終わると、撤収する気配をプンプン漂わせていたので、
わたしの方でも彼を引き止める勇気は失せていた。
今日から自宅でネットができると胸を躍らせていた楽しい時間は、
秋風のように、いとも簡単にすり抜けていった。