実名報道(6/8) | sakoのブログ

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薬物依存症者の「逮捕実名報道」家族が抱く違和感


薬物依存症者の実名報道について、報道各社で判断が分かれています(metamorworks/PIXTA)


薬物依存症者の回復を支援してきた施設「木津川ダルク」(京都府木津川市)の入寮者3人が覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕され、一部メディアで実名報道された。


これを受けて薬物依存症者の家族会や支援団体は連名で、逮捕と報道の在り方を問題視する声明を発表。今回のような形で逮捕や報道がなされると、薬物依存の当事者たちをかえって支援から遠ざけてしまうとの懸念を表明した。


大きく取り上げられた逮捕・実名報道の影響

木津川ダルクの加藤武士代表によると、入寮者3人は5月8日、京都府警木津署に逮捕された。同署は別の薬物事件で逮捕された人の供述をもとに、約1カ月前に3人への任意捜査を始め、ダルクもその時点で再使用の事実を把握したという。


ダルクは、薬物依存症者の自発的な意思に基づく回復を支援する施設で、入寮者の行動や外出を制限することは基本的にはない。3人は任意捜査が入った段階で逃亡することもできたが、警察の事情聴取などに協力しながら薬物の再使用と向き合い、施設の提供する回復プログラムを続けてきたという。


加藤代表らが警察の対応を待っていたところ、同署から5月7日、「明日逮捕する」との連絡が入った。


「自分たちで出頭すると伝えたのですが、警察から『それはやめてほしい』と言われました」


さらに逮捕から約2時間半後、朝日新聞が先行して報道し、各社が追随したことで事件はよりセンセーショナルに扱われることとなった。


「朝日新聞からは前日にダルクの別の施設に問い合わせもあり、警察のリークがあったと推測されます。私たちは行政の依頼で、引き受けのない出院者・出所者も受け入れています。なぜ出頭を拒み、大きく報道されるやり方をあえてしたのか、理解に苦しみます」


加藤代表は一連の報道によって、全国にあるダルクの施設が薬物使用を放置しているかのような誤ったイメージが拡散されてしまうことを懸念する。さらに「薬物依存に苦しむ人が『ダルクを頼ると、有無を言わさず警察に通報されてしまうのではないか』と考え、相談を思いとどまりかねない」とも指摘した。


また大手メディアのうち毎日新聞、産経新聞などが逮捕者を実名報道する一方、朝日新聞、読売新聞などは匿名で報じ、判断が分かれた。


罪を犯した以上、報道されることも含めて自分のしたことの責任を引き受けるべきだ、という意見もある。しかし、他人へ危害を加えたり違法薬物を取引したりせず、薬物使用のみで逮捕された依存症者については「制裁は裁判所の判断する量刑によって行われます。実名を報じ、社会的な制裁まで受ける必要があるのでしょうか」と加藤代表は疑問を投げかける。


名前は「デジタルタトゥー」として半永久的にネット上に残る。実名を報じられた人の中には20代の若者もいるが、罪を償った後も就職や結婚が困難になったり、物件を借りるときや住宅ローンを組むときに支障が生じたりと、さまざまなハンディを背負うことになる。


「前科のある人の再起が難しい日本社会において、薬物使用者を一律に実名報道するのは、本人の再生と社会復帰を妨げるだけです。社会から排除されるつらさから逃れるため、再使用に走るリスクも高まります」と、加藤代表は強調した。


ダルクの窮地は本人や家族にも打撃

NPO法人「全国薬物依存症者家族会連合会(やっかれん)」や依存症当事者・家族の支援を担うNPO法ASK、ギャンブル依存症問題を考える会などは5月12日、連名で声明を発表。「依存症者がダルクで回復の道を歩んでいることで、家族がどれだけ救われるかわかってほしい」などと訴えた。


ダルクは全国に80カ所以上存在するが、中には地域住民の反対運動などが起きている施設もある。声明は、地域の反発が強まることなどへの懸念を示し、実名報道に関しても「依存症者の将来をつぶすだけで何の役にも立ちません」と非難した。


やっかれんの横川江美子理事長は、回復施設や薬物依存症者に対する社会のスティグマ(差別や偏見)が強化されてしまうのではないか、と話す。


「人間は知らないもの、わからないものに恐怖を感じます。逮捕の事実だけが報じられることで、薬物使用者はこれまで以上に得体のしれない存在として警戒され、社会の中で回復するのが難しくなってしまいかねません」


薬物依存者への対応として、閉鎖病棟や矯正施設で一定期間、当事者を薬物から引き離すことも行われている。しかし物理的に薬物をシャットアウトするだけでは、回復して社会復帰することはできず、自らの意思で「やめ続ける」ことが必要だ。ダルクは本人の意思を尊重しつつスタッフが生活に必要なサポートを行い、回復に必要なプログラムも提供できる非常に重要な施設だと、横川理事長は強調する。


一度薬物から離れた人は「使う前」と同じ状態に戻るのではなく、「使わずにいられた」日を一日一日積み重ねて生きていかなければならない。それは社会の人が思う以上につらいことであり、ダルクのような仲間のいる場で、ともにやめ続けることが不可欠なのだという。


逮捕された3人は弁護士を通じて、木津川ダルクの加藤代表に「罪を償ったらダルクへ戻り、やり直したい」と伝えている。横川理事長の長男もダルクに入寮し、15年以上薬物から離れて生きてきたが、それでもさまざまな事情で施設から離れると、励まし合える仲間がいなくなり再使用のリスクに脅かされるそうだ。


「薬物依存者や家族に『卒業』はないと、私自身実感しています。だからこそダルクが窮地に陥ると、当事者や家族も同じように厳しい立場に立たされてしまうのです」


「依存症者は回復できない」との誤解

立正大学の丸山泰弘教授(刑事政策・犯罪学)は「ダルクは、出院・出所者など罪を償ったにもかかわらず行き場のない薬物依存者を受け入れ回復を支援しており、警察や司法当局にとっても重要な役割を果たしています」と語る。


警察側が、入寮者の逮捕だけがクローズアップされるような形で情報を開示すると「薬物を一度使うと、回復施設に入っても立ち直れない」という誤った印象が世間に広まりかねない。その結果、依存症者が人生の落後者であるかのようなスティグマが強化されてしまうのではないか、という危機感を示した。


「報道機関はしばしば、報道の公平性を担保するには賛成と反対双方の意見を併記することが大事だと主張します。ならば今回も、逮捕を報じるならダルクの果たす役割や施設のサポートで回復している人がいることも、併せて書くべきでした」


また依存の根本には、過去の虐待被害やトラウマ、貧困や差別などが潜んでいることも多く、国際的にはこうした根本原因に対して、福祉や医療、教育の面からアプローチすることの重要性も認知され始めているという。


日本でも当事者の「生きづらさ」に対する支援が可能になるよう、行政やNPOなどによるサポートや予防教育といった社会的なインフラをさらに充実させる必要があるとも、丸山教授は指摘した。


「欧米では、治療や生活支援を通じて薬物の問題使用を減らす『ハームリダクション』という手法も広まりつつあります。日本も問題使用を効率的に減らすためには何が必要か、という観点から、国際基準に沿った方法で薬物依存症者に向き合う時期が来ていると思います」


(有馬 知子:フリージャーナリスト)


https://news.livedoor.com/article/detail/26533754/


罪を犯した…

そこで終わらない…

難し過ぎる問題です。