チョコレート危機と2024年物流問題(5/17) | sakoのブログ

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中国人の西アフリカへの出稼ぎで加速する「チョコレート危機」•••「物流2024年問題」との意外な共通点も



異常気象「エルニーニョ現象」の影響でトウモロコシやコーヒー豆などの作物の収穫が世界的に打撃を受けている。中でも価格が爆騰しているのがカカオ豆だ。もっとも、値上げの原因は異常気象だけではないようで……。


西アフリカのカカオ農家が苦しんできた「格差のつけ」や、それと似た構造にある「物流2024年問題」について、『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が解説する。



春の台所を直撃した食品値上げラッシュ

新年度から家計を直撃している値上げラッシュ。この4月にはマヨネーズからハム、トマトジュースまで食品で2800品目以上、ティッシュやトイレットペーパー、宅配便も値上げされた。


おまけに野菜まで白菜一株1000円とか、キャベツ一玉400円などという異常価格。暖冬で生育が早まったために「冬野菜」は安くなったのだが、その代わり早くも収穫がピークアウトして「春野菜」が値上がりしているのだ。



消費者にとってはもういい加減にしてほしいというところだが、電気代も政府の再エネ賦課金値上げ(5月)と補助終了(延期があるかもしれないが、なければ6月)で、さらに値上がりする見通しだ。赤道付近の海面水温が平年より2度も高い「スーパー・エルニーニョ現象」の影響でこの夏は昨年よりひどい猛暑になりそうだ(NASAなどの研究機関)というのに、エアコンも気楽に使えない。


その「エルニーニョ」の異常気象で、世界的にトウモロコシ、コーヒー豆やカカオ豆、オリーブなどの収穫が打撃を受けている。中でも極端なのが、チョコレートの原料となるカカオ豆だ。カカオ豆の先物価格は、この1年半で5倍(トンあたり2,000ドル台から1万ドルを突破)に爆騰している。


何が起きているのかー。


カカオの木は、とてもデリケート。高温多湿で安定した気候、直射日光から守られた日陰、水はけがよい土壌などを必要とし、この条件を満たすのは赤道近くの特定地域に限られる。これまで、西アフリカのコートジボワールとガーナで世界のカカオ豆生産の6割を占めてきた。その両国のカカオ農園が、異常気象による水不足や洪水、ココアの木を枯死させる病気(カカオ膨梢ウィルス)の蔓延などに襲われたのだ。


ガーナではピークに100万トンを誇った収穫量が今季は半減する、という見通しも伝えられる。


カカオ豆の価格決定は生産農家が主導権を持つのではなく、アルゴリズムによる超高速コンピューター取引が主流となったロンドンやニューヨークの先物市場で決まる。カカオ豆価格がパニックのように跳ね上がった背景には、「クオンツファンド」と呼ばれるヘッジファンドの、買いが買いを呼ぶ「モメンタム投資」(株価上昇の勢いが強い市場シグナルがあるときに買いを入れる戦略)の影響もある。


「格差のつけ」から農家廃業が増加

だが、もう少し深堀をすると、異常気象や投機以外の構造要因も見えてくる。それは、これまで長い間放置されてきた「格差のつけ」とも言えるものだ。


近年ガーナではカカオ農家が農園を「ガラムゼイ」と呼ばれる小規模違法金採掘者に売り渡したり、農家を廃業して自ら金採掘者になる例が後を絶たない。ガーナ政府のカカオ評議会によると、2019年から2022年までの間に1万9000ヘクタール、東京ドーム4100個分以上のカカオ農園が違法な金採掘者によって買収・破壊され、昨シーズンもピーク収穫高の15%に相当する15万トン分のカカオ豆が失われたという。



西アフリカのカカオ豆農家は、その圧倒的多数が零細な自作農だ(関連記事:ご存じですか?「チョコレート」を取り巻くおカネの“苦い現実”)。国際協力団体オックスファムによれば、ガーナの80万人のココア農民の殆どは、一人一日2ドルの収入で暮らしている。


同国の報道によれば、違法採掘者はこうした農民に対して、カカオ豆農園から上がる年間利益の10〜50倍の価格を提供して買い取る。さらに農家をやめて金採掘をやれば、一日100ガーナセディ(約7.6ドル)は稼げるという。ココア豆を育てるのに比べて手取りは3倍以上になるのだ。


生きるため彼らの選択を、責めることができるだろうか。西アフリカでは156万人の子供たちがカカオ農園で児童労働に駆り出されていると推定される(米労働省統計)が、その子供たちはチョコレートの味を知らない。


一方、世界最大の生産国コートジボワールでは、カカオの木から天然ゴムへの栽培転換が進んでいることが、カカオ豆生産減少の一つの要因となっている。カカオの木は、植えてから収穫までに4、5年かかる。実がなる確率は100分の1、と言われるほど低い。苦労してカカオ豆を育てても最貧困層(日収1.9ドル未満)の収入しか手にできない農家が、はるかに育てやすく収入が安定するゴムの木にシフトする理由は明白だ。


中国の影響でチョコレートが「贅沢品」に

実はガーナの小規模違法金採掘には、中国からの出稼ぎ者が深く関わっている。


国際移住機関(IOM)の報告書によれば、ガーナでは金価格が高騰した2008年以降5年間に、5万人の中国人が違法な金採掘に押し寄せる「ゴールドラッシュ」が起きた。同国では外国人の小規模金採掘は全て違法だ。2016年には業を煮やした政府が武装警察を投入し、4500人以上の中国人が強制送還されたり、立ち退きを迫られた。


昨年12月にも「ガラムゼイの女王」と呼ばれた謎の多い中国人女性が4年半の実刑を受けて、現地で話題になった。


興味深いことに、中国人ガラムゼイの多くは、広西チワン族自治区、上林(シャンリン)という特定地方からやってきた同郷者集団なのだ。上林は、経済発展から取り残された過疎地帯で、中国でも最も貧しい地域の一つだ。彼らは手掘り金採掘の長い伝統を持つ少数民族で、中国国内で従来のような採掘の道が閉ざされたため、海外、特に中国の資源投資が進むアフリカに活路を見出すようになった。


いつしかガーナに行けば億万長者になれるという噂が広まり、人口わずか50万人の上林から、ピークには6万人がガーナに向かったという。渡航のために大きな借金を負い、逮捕や暴力などの危険を冒し、言葉も通じないアフリカで一攫千金を夢見る若者らの姿を中国メディアが伝えている。


彼らは時にガーナ人と対立するが、基本的には地主に取り分を与えるなど、協業や利益供与によって地元に足場を築いた。従来、ガーナ人はスコップで手掘りする非効率な金採掘を行っていたが、上林からやってきた中国人ガラムゼイは数人集まって機械を共同購入するなどして効率化を進めた。


だがその一方で、彼らが水銀などの有害物質を使う安価な金採掘方法を広めたことが、同国に深刻な環境問題を引き起こした。


また、コートジボワールでカカオ豆から天然ゴムへの生産シストが進んでいる背景にも、中国の存在がある。香港を拠点とする美蘭集団が2020年からゴムの加工工場を稼働させ、一気に同国ゴム生産の4分の1を占めるまでに能力を拡大させたのだ。


中国国営の新華社が「コートジボワールで中国企業が現地の農業発展に一役買った」と誇らしげに報じているが、国内で新たな買い手や流通ルートが出来たことで、ゴムの木の栽培にはずみがついたのだ。


つまり、今の「チョコレート危機」は、これまで妥当な報酬を得てこなかった西アフリカの生産者が、中国人がもたらした機会をつかんで謀反を起こしている状況だとも言える。そうであるなら、「チョコレート危機」は短期では終わらないだろう。もう、チョコレートは「贅沢品」とあきらめるしかないかもしれない。


「チョコレート危機」と「2024年問題」の共通点

過酷なのに報われない仕事が長年放置された挙句、担い手がいなくなってサプライチェーン全体に支障が出るという事態は、なにもチョコレートに限った話ではない。



ホットな話題では、この4月からトラックドライバーの残業時間が制限されることで本格化した「物流の2024年問題」がある。


日本列島を縦断する長距離トラックの運転手は、自宅に帰れるのが週一日とか、車中で連泊したり、総重量が何トンにもなる荷物を手作業でバラ積みした後に夜間の長時間運転に出かける、などという過酷な労働環境を強いられている。それなのに、平均給与は大型トラックでも36万6,400円(総務省労働力調査)と、全職種平均を下回る。


残業時間制限は、全国およそ86万人のトラックドライバーの労働環境改善には不可欠な措置だ。だが、歩合制で働く当のドライバー達からはむしろ、残業制限で収入が減ったらもうやっていけない、と将来を強く悲観する声が上がっている。


大型トラック運転手の平均年齢は50.2歳と高齢化が進む。政府検討会の試算では、このままではドライバー不足によって今年で14.2%(4億トン)、2030年には34.1%(9.4億トン)も国内運送能力が足りなくなる。


日本は国内貨物輸送の9割をトラックによる陸上輸送に頼っている(全日本トラック協会)から、深刻だ。宅配の翌日配送や時間指定、いつ行っても欠品がなく商品が整然と並ぶコンビニや商店、必要最小限の在庫しか持たなくてもスムーズに稼働する工場など、これまで当たり前のように享受していたモノの流れが突然止まる。


産業全体に影響が及ぶ事態までくれば、もはや事態はトラック業界だけの問題ではない。今回の法改正では、大手荷主に物流計画の策定が義務づけられるとか、ドライバーの法令違反に荷主が関与していた場合には勧告や警告を受けるなど、荷主の責任も明確に問われることになった。


チョコレート業界でも、遅ればせながらサプライチェーン川下の大手チョコレート企業が、川上の農家の持続的経営や環境保全を支援する動きが出ている。物流でも、荷主側が荷積みの時間を減らしたり、なるべくパレット(荷役台)規格を同一化させて作業負担を軽減するなど、持続可能なオペレーションのためのサプライチェーン全体での協力が必要だろう。


それにしても、本来人手が足りない仕事では賃金が上がるはずだ。ところが、日本では「3次請け」「4次請け」などという多重下請け構造のため、トラックドライバーの手取りが低く抑えられてきた。


比較のため米国を見ると、ネットショッピングの増加で需要が増え、運転手不足が起きているのは同じ。全米トラック協会(ATA)によれば、昨年は6万人、今年は8万2,000人以上のドライバーが足りないと推定される。全米約350万人(国勢調査)のドライバー数に対して約2%と、日本ほどひっ迫していない。それでも走行マイルあたりの手当は過去3年間で1割程度上昇している(米交通安全局データ)。


米国ではトラック運転手の報酬にばらつきが大きいが、車両輸送車など特殊トラックでは年間10万ドル(約1,600万円)を稼ぐ人もいる。また、特に稼ぎが良いのがオーナー兼オペレーターの自営トラック業者で、中には50万ドル以上、日本円で8,000万円もの年収を上げる人もいる。


今回の時間外労働の上限規制は「労働者」であるトラック運転手が対象で、オーナードライバーの「個人事業者」には適応されない。そのため、今後は日本でも自営トラックが増えそうだ。ただし、今の下請けシステムが変わらなければ、労働基準法に守られない「業務委託」という名の搾取がむしろ増えるリスクがある。トラック業界からは、下請けを2次までに制限するべきだ、という提言が出されている。


確かなのは、「格差のつけ」は結局、食品値上げという形で我々消費者に跳ね返ってくるということだ。


https://news.livedoor.com/article/detail/26385755/


我慢を強いられる事にも限界はきます。

そこに付け込む輩が存在する事も…。