鉄の歴史!!(1/10) | sakoのブログ

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【桜井 弘】古代ギリシャに、すでに「貧血」の原因だと見抜いていた人物がいた•••人体には絶対に欠かせない「鉄」、その意外な歴史と性質



現在までに118種類が知られている、世界を形作る構成要素、「元素」。私たち人類の身体もまた、さまざまな元素からできている。元素のちょっとしたバランスの乱れが健康状態までをも大きく左右する。そんな元素と人間の深遠な関係について、『元素118の新知識〈第2版〉引いて重宝、読んでおもしろい』を著した桜井弘氏に聞いた。


鉄/Iron

地殻中では酸素、ケイ素、アルミニウムに次いで多量に存在する鉄であるが、自然の状態で金属鉄が見つかることはきわめて稀である。人類が初めて出合った金属鉄は隕石に起源をもつといわれている。銅よりも少し遅れて、紀元前5000年ごろ、エジプトやアッシリアで、おそらく原始的な炉を用いて鉄鉱(酸化鉄)から鉄をつくっていたと考えられるが、かなりの不純物を含んでいたようである。


紀元前2000年ごろ、アナトリア(現在のトルコ)に入ったヒッタイト民族は高度な製鉄技術をもって強大な帝国を築いた。ヒッタイト滅亡のあと、製鉄技術が周辺の地域に広がり鉄器時代が花開いた。紀元後の初期に、インドの冶金家が鉄を精錬加工することに成功し、当時最も硬い金属であった鉄は、さまざまな道具や武器をつくるために使われた。


鋳鉄をつくる高炉(溶鉱炉)が発明されたのは、15世紀末のことであった。鉄と鋼を精錬する方法は急速に発達し、1855年、鋼をつくる転炉法が開発され、現在もなお用いられている。電解法による鉄の製造は20世紀に入ってからのことである。


鉄の語源は、複雑である。英語のironはアングロサクソン語に由来し、ドイツ語のEisenは光沢が氷Eisに似ていることに由来するといわれているが、確かなことはわからない。元素記号Feは、ラテン語の「硬い」や「強固」を意味するfirmusに由来する言葉ferrumといわれているが、これも詳細は不明である。なお、化学用語ferro,ferrous(第一鉄Fe2+)やferri,ferric(第ニ鉄Fe3+)は、ferrumから派生した言葉である。


鉄は銀白色の金属で、α、β、γ、δなどの同素体が知られている。鉄は反応性が強く、水を含む空気中ではどんどん侵されてしまう。このため古代につくられた鉄の品物や製品で、今なお残っているものはきわめて稀である。しかし、鉄を濃硝酸に浸すと、表面に薄い配化被膜ができ、鉄を保護し、それ以上侵されなくなる。これを不動態という。


鉄は代表的な強磁性体である。強磁性体は、磁気モーメントがさまざまな方向に向かっている物質の重合体で、外から磁場を与えると、磁気モーメントが一定方向を向いて強い磁性を示す性質がある。鉄以外には、コバルト(Co)やニッケル(Ni)も強磁性体である。この3種の元素をまとめて鉄族元素とよぶことがある。


おもな鉄の鉱石には、赤鉄鉱(Fe2O3)、褐鉄鉱(Fe2O3・3H2O)があり、他に磁鉄鉱(Fe3O4)、菱鉄鉱(FeCO3)、硫化鉄鉱(FeS2)やクロム鉄鉱(Fe(CrO2)2)なども知られている。鉄を含む化石も知られており、わが国では愛知県豊橋市の高師原で発見され、高師小僧とよばれている。褐鉄鉱の一種で、湿地帯のアシや水田のイネの根の周囲で鉄バクテリアが繁殖して、それが化石化したものである。根があった場所に穴が開いたおもしろい形をしている。かつては、これを鉄の原料として使用していたのではないかと推測されている。金属鉄は、鉄鉱石をコークスで還元してかたまり状で得られるが、不純物が混じっているので、さらに水素で還元する。電気分解によって純鉄を得ることもできる。


鉄は、建築、運送などあらゆる分野の機械器具をつくるために利用され、日常生活に最も密接に関係する元素である。99•99%まで精製した超高純度になると、空気や酸に安定で、低温でもしなやかで加工しやすい。


鉄を主成分とする合金は、炭素の含有量によって分類されている。純鉄(炭素0•02%以下)、鋼(炭素0•02〜2%)、鋳鉄(炭素2〜4•5%、もろいが鋳造しやすい)、および銑鉄(炭素3%以上、鉄鉱石から直接製造された鉄)である。


鋼には、炭素鋼、合金鋼、普通鋼、特殊鋼などがある。炭素鋼材料を高温から急激に冷却すると、溶けきれなかった炭素が地金とは別の硬い組織をつくる。急激に冷却するこの操作を「焼き入れ」といい、日本刀をつくる場合などでもおなじみである。


合金鋼はニッケル、クロム、マンガン、モリブデンなどを加えた鋼である。炭素が1•2%以下で、クロムを10•5%以上加えたものはステンレス鋼で、高い強度をもっている。中でもクロム18%とニッケル8%を加えた鋼は18ー8ステンレス鋼といわれ、代表的なステンレス鋼である。


鉄のおもな化合物には、表26ー1のようなものが知られている。磁性元素である鉄は超伝導発現には適さないと考えられていたが、鉄とヒ素とを含む化合物で高温超伝導体が発見されている。ランタン(La)、鉄、ヒ素(As)、酸素を含むLaFeAsO高温超電導体とその類似構造を有する化合物は、鉄を主成分とすることから「鉄系超伝導体」とよばれ、銅酸化物超伝導体の次に高い超伝導転移温度が達成されている。



環境面から貴金属に代わる鉄触媒が精力的に研究されている。鉄触媒を用いて温和な条件下で、安定な炭素−水素結合を炭素−炭素結合に変換できることが示されている。また、ルテニウムに代わって鉄錯体をオレフィンメタセシス反応の触媒として使用できることも実証されている。


人と鉄との関係は、古代ギリシャ時代からすでにあったとされている。医学の父といわれる古代ギリシャのヒポクラテスは、貧血は鉄欠乏症によると考え、その治療に鉄を用いていたという。


人の血液から鉄を発見したのは、イタリアのメンギーニであった。1746年、彼は血液を燃やして残った微粒子の中に磁石に引きつけられる成分として鉄を見つけ、それが赤血球の素になっていると考えた。18世紀以後、鉄は血色素ヘモグロビンの構成成分であることが化学的に明らかとなった。


鉄を含むタンパク質は多数知られており、表26ー2のように、ヘムタンパク質と非ヘムタンパク質に分類される。2000年以降も新しいタンパク質(ニューログロビンやサイトグロビン)が発見されている。



体重70kgの成人には約6gの鉄が存在し、血流には447mg•dm−3存在する。一日に約6〜40mgの鉄を摂取している。


人体中の鉄の約65%はヘモグロビンとして赤血球中にあり、数%はミオグロビン(ヘムタンパク質、分子量はヘモグロビンの4分の1)として筋肉中にある。残りの大部分は貯蔵鉄として骨髄、肝臓、膵臓中に非ヘムタンパク質型のフェリチンやヘモシデリンとして存在する。血液中の鉄の運搬体はトランスフェリンという血清タンパク質がその役割を担っている(表26−2)。


鉄は体内でFe3+からFe2+へ、また逆へと変化する。このときの還元や酸化の作用が機能と深くかかわっている。たとえば、赤血球中のヘモグロビンが酸素を体のすみずみに運ぶが、酸素はヘモグロビンの鉄が還元された状態にのみ結合する。


鉄を含んだ野菜にはホウレンソウやパセリがある。クギを根元にばらまいてこれらを栽培すると、いつのまにかクギは吸収されてしまう。鉄を多く含む食品を表26ー3に示しておいた。



さらに連載記事〈ゴム手袋を装着して触ってもアウト…殺人事件にも使われた「タリウム」の「致死量」と「特徴」〉では、タリウムについて詳しく解説する。


https://news.livedoor.com/article/detail/25647470/


貧血にならないように気を付けます!