ヒンデミットとバスクラリネット | 国田健 -クラリネット・バスクラリネット覚え書き-

国田健 -クラリネット・バスクラリネット覚え書き-

オランダ在住のバスクラリネット奏者です。

日本では時々ヒンデミットのファゴットソナタをバスクラリネットで演奏している方が見かけられます。実はあまり海外では見られないのですが、恐らくそれはこの曲を収録した音源が日本で多く販売されていることに起因していると思います。

 

そしてこれも元を辿るとホラーク氏に繋がります。(彼について以前の記事をご覧ください。)

ヒンデミットは1960年にファゴットソナタを自身の手でバスクラリネット用に編曲(とは言いつつも原曲そのままで、バスクラリネットソナタとして演奏することを許可)しています。国際的に活躍しているヒンデミットが彼のレパートリーに加わったことでホラーク氏はその後多くの作曲家からバスクラリネットのオリジナル作品を書いてもらうことに成功しています。

 

また、これについては面白い逸話が残っています。

ホラークがオーケストラのリハーサルの後に1人で音出しをしていると、1人の男性が彼のバスクラリネットに聴き入っていました。彼は徐々にホラークへと近づいていき、最終的には彼の傍までやってきてホラークに「これはできるか」など言いながら色々な質問をしていきます。一通り質問が終わると彼はホラークに「これまでにヒンデミットのファゴットソナタを演奏したことがあるか」と問いました。ホラーク氏は「ヒンデミットはファゴットの想定して作曲しているからバスクラリネットでの演奏を良くは思わないだろう。」と答えました。そして男性は答えました。「私がヒンデミットです。」

 

こうしてヒンデミットのバスクラリネットソナタが誕生しました。一説によるとヒンデミット自身もバスクラネット版の方をファゴット版より気に入っていたそうです。また、こちらはあまり知られていませんが実はピアノ、ヴィオラとヘッケルフォン(又はテナー・サクソフォーン)のための三重奏 op.47も同じように演奏が許可されています。こちらの方は演奏の難易度が非常に高く自分もバスクラ版どころか、オリジナルすら生で聴いたことはありません。非常に好きな曲なのでそのうち自分で演奏したいと思っています。

 

 

次回も彼が関わった有名な作品に触れようと思います。