ハゲタカ外資に翻弄される東芝
株取得から5年
今年3月末までに東芝が開催を予定している臨時株主総会。その場で、「3社分割案」に白黒がつけられる見通しだ。140年以上の伝統がある東芝は、内部からはなかなか分割案が持ち出されなかった。物言う株主から追い詰められ、やむなく選択した格好である。
3社分割案とは、まず発電事業などを手掛ける「インフラサービスカンパニー」、半導体を受け持つ「デバイスカンパニー」の新会社2社を設立する。そのうえで、東芝本体はフラッシュメモリー製造の「キオクシア」などの株式を保有する会社として存続。さらに、既存株主に新会社2社の株式を譲渡し、2年後をメドにその2社を上場させるというもの。
東芝の大株主は、第1位がエフィッシモ(9.91%)。次が、「3Dインベストメント・パートナーズ」(7.2%)、「ファラロン・キャピタル・マネジメント」(5.37%)と続く。
M&Aアナリストの解説によれば、
「すでに、東芝株取得から5年が経過し、物言う株主は出資者にキャッシュアウトを迫られています。そのため、物言う株主が東芝に突きつけたのが、MBO(経営陣による買収)でした」
目下、東芝の時価総額は2兆円。MBO資金として、内部留保の1兆円と銀行借り入れなどを合わせ、3兆円を準備しなければならない。
票読みは混沌
「再上場を果たすまで、東芝は新規投資も儘(まま)ならず、縮小路線を取らざるを得ません。MBOによる非上場化は物言う株主が甘い汁を吸うだけで、東芝にとっては破滅を意味した。なんとしてもMBOは避けつつ、別の株主還元策を打ち出さねばなりませんでした」
その後、様々な検討を重ねた末に編み出されたのが3社分割案だった。だが、大株主に名を連ねる投資ファンドは、もろ手を挙げて賛成しているわけではない。
「東芝からの打診に、エフィッシモとファラロンは中立。しかし、3Dは賛成から一転、反対に立場を変えました。年明け早々には、3社分割案阻止に向けた臨時株主総会の招集まで要求した。その理由は、東芝が昨年11月に3社分割案を公にしても、一向に株価が上がらなかったからです」
臨時株主総会の票読みは混沌とした状態だという。ハイエナにしゃぶり尽くされた姿を晒すことになりそうだ。
「週刊新潮」2022年1月20日号「MONEY」欄の有料版では、東芝と大株主の駆け引きを詳報する。