Bankcy  「パラサイト

 

 何処かの田舎道をぼんやり歩いてた。行く宛はない。何処から来たのかもあやふやだ。ふわふわ。

 田舎道たって、俺には何処だって辺鄙な道に変わりはない。何も見えてない。観たいものがない。風景は電波に見放されたブラウン管画面。あれは何だっけ。スノーノイズ? 砂嵐? 砂嵐ったって、乾燥した大地の砂塵の類じゃなくってさ。宇宙の背景輻射とか3度Kの黒体輻射とか? 150億光年彼方の宇宙の果てから来ている信号?

 そんな突飛な話じゃない。ただ頭の中が薄暗闇なだけ。海底に堆積した泥が舞い上がっちゃってさ。脳味噌の中の視界ゼロ。ほとんど徘徊かもしれない。


Saruo  糸の切れた凧、それとも風船。あるいは手放したのは魂なのかもしれない。誰の魂なのか。何故、そんなに大切な魂なのに追いかけなかったのか。それとも縁が切れてせいせいしてる? 億劫だった? 自分には荷が重すぎた? ただ臆病だっただけじゃないのか。何をそんなに怯えている?

 …え? 怯えてるのか、俺は? 腑抜け同然になったのは己への失望落胆のせいなのだろう。この手でしっかり握れない。あの強烈な目線、眼差しを直視できない。目を逸らしてしまった。自分が幸福になることが堪え切れない。

 ホントは抱きしめたいんだ。抱きしめる…違うな。縋りつきたい。ほとんど絡み付くように。パラサイトしたいほどだよ。壁面の苔か蔓か蔦になりたい。サルオガセに魅入られて気が付いたら自分の体が藻じゃないかと思えたり。サルオガセモドキになって樹上から垂れ下がって生きるか。…というかもう既になってる? 

 

 

[冒頭の画像は、拙稿「バンクシーをも呑み込む現実?」より。中途の画像は、「サルオガセモドキ - Wikipedia」より。]