Yacho   酔 漢 賦(鳥名篇)

 菱喰(ヒシクイ)! うん? オレは酔ってるのか。千鳥(チドリ)足か。足元が夜鷹(ヨタカ)ってるか? 赤腹のトナカイさんか? 鷹い酒だったなー。何が、大瑠璃(オオルリ 大麦)焼酎だ。山椒喰(サンショウクイ 最上級)の酒って、どこが三光鳥(サンコウチョウ)の酒だってんだ。安酒が。ペンギン(ペギー)葉山の歌なんて歌って、あれを水鶏(クイナ)これを水鶏(クイナ)って雀(スズメ 薦め)られて、尾長(お腹)が矮鶏(チャボ)矮鶏(チャボ)だ。

 白鳥(ハクション)! 鷽(ウソ)? 風邪か? ペリカン(割り勘)だと言ってたのに、オレに払わせやがって。鷺(サギ)に遭って、鴨(カモ)にされて、鷲(ワシ)、信天翁(阿呆鳥)だ。もう、小綬鶏(コジュケイ)もねえ。その上、雁(ガン)!鷭(バン)!と鳧(ケリ)まで入れられて。鳳凰(ホウオウ 頬)が木菟(ミミズク)腫れだ。歯も、差羽(サシバ)だ。仏法僧(ブッポウソウ)な世の中だぜい。

 ああ、郭公(カッコウ)悪い。オレにどんな鶫(ツグミ)があるというんだ。ああ、隼(ハヤブサ)、うちに帰りてえな。でも、鷸(シギ)い(敷居)が高いな。

 会社じゃ、禿鷲(ハゲタカ)頭の鵞鳥(ガチョウ 課長)にゃこき使われ、それでも売り上げが悪くて、葦切(葭切 ヨシキリ)だって、鶴鶴頭の文鳥(ブンチョウ 部長)にゃ怒鳴られ、丹頂(タンチョウ 会長)にゃ、雲雀(ヒバリ)散らされ、女房にゃ、インコと罵られて。そんなに真鴨(真顔)で怒らなくたっていいじゃないか。その上、四十雀(シジュウカラ 四十肩)どころか五十雀(ゴジュウカラ 五十肩)だし。ふん、そう、いつもいつもあんな戴勝(ヤツガシラ)に付和雷鳥ばっかり、してられっかてんだ。

 誰かオレを河鵜(カワウ)そうと思わないもんか。こんなに菱喰(ヒシクイ 必死)に働いてきたのに。みんな、なんて白鳥(薄情)なんだ。そのうち、鶺鴒(セキレイ、積年)の恨みを晴らしてやる! 鸚鵡(オウム)鸚鵡(オウム)と泣きたいよ。あーあ、昔は頬白(ホウジロ)で、百舌百舌(モズモズ)していて、川秋沙(カワアイサ)かりで、胸が朱鷺(トキ)めいた女房もよ、今じゃ、顔が孔雀(クジャク)孔雀(クジャク)で目黒(メグソ)一杯の椋鳥(ムクドリ)だし。

 オレはホントにあいつと五位(ゴイ)をしたのかな。あいつの野路子(ノジコ)を蟻吸(アリスイ)したのかな。あいつの大猿子(オオマシコ)に紅猿子(ベニマシコ)したっけな。あいつを磯鷸(イソシギ)人だと思ったのかな。何があんたに雎鳩(ミサゴ)を捧げます、だ。何が今日からあたいはあんたの燕(妻ね)、だ。ただの燕(唾め)!

 最近は、あいつ…、こっそり若い燕まで…。なのに、オレは女房の鷸(シギ 尻)に敷かれてる。朱鷺(トキ)の流れは怖いもんだ。もっと沢鵟(チュウヒ)して結婚すればよかったな。鸛(コウノトリ)が雪加(セッカ)く運んできたはずのウチの花鶏(アトリ)息子の長元坊(チョウゲンボウ 長男坊)も海猫(ゴメ)てばかりだし。ホントは翡翠(カワセミ 河瀬に)て拾ってきたんじゃねえか。

 あーあ、鳩(はっと)気が付いたら、オレは鴎(カモメ)暮らしみたいなもんだ。あーあ、と鳳凰(ホウオウ)に暮れるよ。オレの翡翠(カワセミ 悲しみ)は、黄鶲(キビタキ)には分かるまい。このまま九官鳥(キュウカンチョウ 急患)になっちゃおうか。ああ、オレは、烏(カラス)い! 阿比・九官鳥(アビ・キュウカンチョウ 阿鼻叫喚)の苦しみだ。

 あれ? 小雀(コガラ 小腹)が空いてきた。内へ雀(進め)! お梟(フクロウ)!

 

[冒頭の画像は、拙稿「蝋燭の焔に会いに行く」より。鳥名は、下記サイトなどを参照しました。勿論、愛らしい鳥達の画像も見ることが出来ます。サイト主さま、愛鳥家の皆様、どうも、失礼しました:
「写真集(野鳥)」(http://www.ne.jp/asahi/mk/photos/yatyo/yatyo.html ← もう削除されていた!)]