クラスターの障害者施設 マスク利用難しい利用者 | 子どもたちもお年よりも笑顔あふれる街へ

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クラスターの障害者施設 マスク難しい利用者

日常対策奏功 広がり抑える

2020年11月27日【社会】

 全国で新型コロナウイルス感染症が急増しています。今夏の感染拡大時には、各地の福祉施設がクラスター(感染者集団)化。埼玉県白岡市にある障害者支援施設では、15人が次々感染しました。マスクをつけられない人が多いなど障害者施設独自の苦労がありました。(岩井亜紀)

 障害者支援施設「太陽の里」(埼玉県白岡市)では、76人の職員が72人の障害の重い仲間の暮らしを支えています。個室で6ユニットに分かれています。

 新型コロナの感染拡大に伴い、「里」の日常が一変しました。週末に自宅に戻る仲間には、普段より長い期間自宅に滞在してもらう対応も。早く「里」に戻りたがったり、自宅での水飲みが激しくなったり。「不安定な仲間の様子を家族から聞きました」。施設長の園部泰由さん(47)は、そう振り返ります。

地域と連携

 7月25日から8月3日にかけて、障害のある仲間10人と職員5人が相次いで感染。保健所と確認し、8月18日に収束を公表しました。

 「仲間の中で30人は強度行動障害があります。マスクができる人は6人、手を口にもっていく人が10人です。普段から職員は熱意を持って仲間たちと同じ目線で支援しているからこそ、感染の広がりが怖かった」と園部さん。

 県は6月、入所施設で感染者が出た場合には埼玉県総合リハビリテーションセンターで10床確保すると表明しました。しかし、「里」で感染が確認された直後には、受け入れ準備ができていませんでした。仲間たちは別の複数の病院に、1日半から2日で入院することができました。

 園部さんは「地域の医療機関や保健所、行政と連携が築けていたからだろう。漠然とした障害のある人のイメージしかなかった保健所や医療機関に対し、感染者が出る前に、どんな人たちなのか必要な具体的な情報を提供し伝えていたのが良かったようだ」と語ります。

 「里」で初めに発熱し感染が確認されたのは、重度重複障害がある人と、視覚障害があって壁などを触りながら移動する人の2人でした。生活ユニットは別々ですが、日中は同じ仕事場で働いています。2人ともマスクをつけるのが困難です。

 7月25日夕には各ユニットを閉鎖。クリーンゾーンと非クリーンゾーンに分け、職員会議で何度も動線を確認。職員はマスクだけでなくガウン、フェイスシールドなどをつけ、感染者の出た2ユニットでは防護服を着用しました。保健所は素早く対応し、26、27両日中にほぼ全員の仲間、職員がPCRなどの検査を受けました。

 感染した職員は全ユニットに支援に入っていましたが、仲間の感染は2ユニットだけに抑えられました。「勉強会を開いたり食事介助ではグローブを1人ごと交換したりするなど感染症対策を毎年万全にしている。感染が全棟に広がらなかったのは、これまでの取り組みの成果だろう」

福祉充実を

 園部さんは「『里』ではいま、障害・権利・医療・職員体制をバランスよく考え、感染ゼロに近づける取り組みを行っている」といいます。「そのためにも根拠をもって民主的に考えながら進めていくことが重要です」

 「里」を運営する社会福祉法人みぬま福祉会の高橋孝雄理事長は「いのちを守る現場は、使命感だけで支えるのは厳しい。日ごろから安定的な運営ができるよう国は社会保障の充実を図るべきだ」と強調します。