■『シグナル』ヒットの前哨戦となった『ナイン』がまるで『冬ソナ』だった件! | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

「お前を取り戻すために9回の時間をやり直す」

 

 

●2013年にもこのテーマを貫いたことこそがタイムスリップ

 

今日はひさびさに韓国ドラマの紹介ですが、ちょっと古い作品として2013年のtvNドラマ『ナイン~9回の時間旅行~(나인: 아홉 번의 시간여행)』(→ホームページ)ですね!ヾ(≧∇≦)〃♪

 

韓国ドラマのヒット作を次々に生み出して来た「tvN」ですが、SFとしてはやっぱり代表作が、日本でリメイクもされた2016年の『シグナル(시그널)』でしょう。でも実はそれ以前にもその前哨戦といえるようなタイムスリップ・スリラーのヒット作があった、というのがこの『ナイン~9回の時間旅行~』となります。

 

主演は、個人的に尾崎豊さんに似ているなあと思っているイ・ジヌクさんで、ヒロインは笑顔がかわいらしいチョ・ユニさんですね。2人とも顔がわりと古風な美男美女だと思うのですが、実際、内容として描かれる感情のラインや会話の調子もメチャクチャ古臭くって驚きます。

 

前回、OCNの同じくタイムスリップもの『愛の迷宮-トンネル-(原題:トンネル、터널)』をご紹介した時に、日本での宣伝のされ方が、「愛の迷宮」という邦題もそうだし、ポスターも『冬ソナ』を思わせるようなかつての韓流ロマンス風で、それが実際には『殺人の追憶』と同じ連続殺人事件を扱ったSF推理ものの内容にいかにミスマッチだったか、と書きました。

 

ところが、今回の『ナイン~9回の時間旅行~』のほうは、まさにジャンルはSFタイムスリップ・スリラーものでありながら、やっていることのほうは、完全に冬ソナ風ラブロマンスなわけです。逆に、2013年にもこの題材を、ギャグではなくてここまで振り切れたのかとビックリしてしまいました。(^ヮ^;)

 

いわゆる、韓国人が大好きな出生の秘密ものであり、仇と思った相手が実は自分の父親だったとか、愛した相手が実は愛してはいけない関係(例、兄妹)であったとか、そういう話なんですよね。それが、本来なら記憶喪失などによって分からなくなって、実は…となるものなわけですが、今回はタイムスリップものなので、過去に行って歴史に干渉したことが原因で、現代のほうでは、恋人だった相手と、結婚できない親戚となってしまった、という形になります。

 

このように書くと笑える展開のようでもありますが、実際に主人公に感情移入をどっぷりさせられている視聴者の立場としては、あまりにもつらくて、切な過ぎて、胸が痛くてたまりません。不治の病に犯されながらも、すべてを捧げて愛した相手と、突然、永遠に結婚できない家族になってしまった、というつらさ。まさにこれは、韓流ドラマにしかあり得ないような、かつて『冬のソナタ』でみんな味わったような、懐かしい、あの逃げ場のないつらさなわけですよね。(((°`∇´°;)))

 

 

●視聴者絶対のメタ表現としての何でもありの時間概念!

 

さらに驚いたことは、この作品は、他ではとうてい見たことがない、タイムスリップものの「禁じ手」、「タブー」をいくつかやってしまっている、ということです。それが何か。過去に戻って歴史を変えて現在が完全に変わった、という後にも、それで現在が決定したのではなくて、その後、また過去の人物が自由意志で行動を選択することによって、さらに現在が、過去と同時進行で変わっていってしまう、という現象です。(^ヮ^;)

 

これは完全に意味が分からない話ですが、自分が改めて過去に行って干渉しなくても、すでに決まっている現在が、いわば20年前の世界との並行現実となっていて、20年前の今日この時間、この瞬間に過去の人物が選んだ選択によって、今がリアルタイムで変化するというわけです。ドラマの中では「過去の人物が主体的に自由意志を持ち始めた」などと説明していたのですが、いやいや、過去の蓄積の結果が現在であるという事実がある以上、理屈としてあり得ないことなのですが、あくまで「過去の世界との並行宇宙が現在である」という観点でそれが可能になってしまっています。

 

あと、もう一つの「禁じ手」は、歴史が変わったのに、現在の人々の中に「変わる前の歴史」の記憶も同時に残っているという設定です。いちおう、過去が変えられたという事実を認識した人だけが、変わるの前の現実の記憶をも思い出すことができるという形にはなっていますが、それにしてもこれも、時空概念を設定し直さないと無理な理屈です。時空ではなく人間の意志(魂)のほうがすべてを超えているということですよね。

 

私も最初はこれに頭の中で科学的な説明を試みようとしてみたのですが、あることに気づいて途中でやめました。すなわち、結局はこれ自体が、まさに韓流ドラマの世界のメタファーだということですよね。すなわち、登場人物の頭に「変わる前の歴史」の記憶もあるということこそが、私たち「視聴者の記憶」のメタ的な表現なわけです。

 

そもそも韓国ドラマの制作過程には、作家の意思以上の「視聴者の意思」というものがあって、見ている人の感情の論理が、実際に作家を動かして台本やストーリーを変えることがあります。つまり、登場人物の感情があまりにも胸に迫って、視聴者がそれをもう「絶対的」といえるほどに願うことになるならば、本来の筋などの理屈を超えて、現在と未来を変えることができ、このドラマの場合は、さらにもっと願うならば、すでに済んだはずの過去までも変える力があるのだ、ということになりますよね。

 

韓ドラ恐るべし!ラストシーンもまたメチャクチャ意味深なシーンなのですが、いや、私はぜんぜん可能だと思うし、やっぱりそうじゃないと視聴者は納得できないだろうと思いましたね。ということで、ついて行けるかどうかは人によるとは思いますが、少なくとも私には懐かしい韓流ドラマ体験として、とっても素晴らしかったです!♪ヽ(´▽`)/

 

 

【あらすじ】 脳腫瘍で余命宣告を受けた38歳のテレビ局の記者パク・ソヌ(イ・ジヌク)は、以前から自分に片思いをしていたミニョン(チョ・ユニ)の出張先のヒマラヤに訪れ、「実は俺もお前のことが好きだった」と告白する。しかしソヌがヒマラヤを訪れたのにはもう一つの理由があり、行方不明だった兄がヒマラヤ山脈で事故死した知らせを聞いて遺体確認に来たのだった。兄が死に際に握りしめていた1本のお香――。実はそのお香は、焚いている30分の間だけ今日からちょうど20年前の過去に戻ることができる、不思議なタイムマシンだった。過去に戻ったソヌは、父親の死の真相解明や、兄が叶えられなかった恋愛の手助けを試みるが、過去が変わったことで運命の歯車が大きくズレ始め、‘現在’にとんでもない変化が起こり始める…。

 

 

 

 

 

 

 

 


tvNドラマ『ナイン~9回の時間旅行~(나인: 아홉 번의 시간여행)』予告編。

 

 

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